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自律神経の乱れと原因。整え方の基本&応用まで専門医が解説
末武信宏
「自律神経」を整えることは、現代人が健やかに暮らすうえで、とても大切です。漠然としたイメージは持っていても、「自律神経とはなに?」「整えるとはどういうこと?」と聞かれて答えられない人は、この記事を読んでみてはいかがでしょう。
自律神経の専門家、末武信宏先生に話をお聞きしました。
食事や簡単なセルフ整体、また、「音」を活用して、自律神経の乱れを整えてみましょう。
自律神経の乱れで不調を招いている可能性がある人は、心療内科や神経科、内科、精神科などの病院で必ず専門医に診てもらうことが重要です。そのうえで記事にあるセルフケアを試してみてください。
自律神経とは
脳・脊髄から枝分かれし全身に広がる神経
自律神経を理解するには、まずは神経全般についてをざっくり知っていただくのが近道です。
神経には、大別すると中枢神経と末梢神経があります。中枢神経は脳や脊髄に通っており、全神経のコントロールセンターとして機能しています。
末梢神経は、脳と脊髄から枝分かれして全身に広がっています。末梢神経には体性神経と今回の主役の「自律神経」があります。
自律神経は自分の意思と関係なく働く
自分の意志でコントロールできるのが体性神経。運動神経などは、体性神経の一種になります。
自律神経は、私たちの意志とは無関係にはたらく神経です。心身を緊張、興奮させる「交感神経」とリラックスさせる「副交感神経」にわかれます(後述)。
自律神経の役割は消化や体温調節など生命維持のコントロール
自律神経は血管や内臓の働きを支配しています。食事をすると自然に胃腸が動いて食べ物が消化・吸収されるのも、心臓が自然と拍動するのも、呼吸で酸素が肺に自然と取り込まれるのも、すべては自律神経の働きがかかわっています。
自律神経は、呼吸・脈拍・体温・消化・免疫・ホルモンをはじめ生命維持にかかわるあらゆる働きを支配しており、私たちの体を構成する約60兆個の細胞すべてを無意識のうちに調整しているとても大事な神経なのです。
自律神経が乱れるとはどういうこと?
心身の緊張を促す交感神経、逆にリラックスさせる副交感神経
前述の通り、自律神経には交感神経と副交感神経の2種類があります。これらは互いに相反する働きで、血管や内臓の働きを支配しています。
交感神経は、心拍数を増やしたり血管を収縮させて血圧を上げたり消化器の働きを抑えたりするなど、心身を緊張させる方向へと働きます。
一方の副交感神経は交感神経とは逆で、心拍数を減らしたり血管を広げて血圧を下げたり、消化活動を活性化させたりするなど、心身をリラックスさせる方向へと働きます。
自律神経の乱れとは交感神経と副交感神経のバランスが崩れること
ポイントは、一方の神経が優位になっているときは、もう一方の神経の働きは抑えられるという独特のバランスで働いていること。
つまり、交感神経と副交感神経がバランスよく働くことで病気体質が退き、健康寿命が延びていくわけです。
最近では、「自律神経の乱れ」についてテレビの健康番組で取り上げられたりしていますが、これは2つの神経のバランスが悪くなった状態のことをさしています。
自律神経が乱れる原因とは
最大の原因はストレス
自律神経が乱れる重大原因は「ストレス」です。しかし、ストレスそのものが、必ずしも悪いわけではありません。適度なストレスはやる気や張り合い、心身の増強に役立ちます。
問題は強すぎる場合です。ストレスが強すぎると交感神経と副交感神経のバランスが悪化し、自律神経の働きが大きく乱れます。
現代に生きる私たちは、健康への不安、将来への心配事、不況による失業や転職、人づきあいのトラブルなど強すぎるストレスを生み出す原因は事欠きません。
第二の原因は生活習慣の乱れ
ストレスに加え、不規則な生活も問題です。例えば夜更かしをする、昼まで寝ている、不規則な時間に食事するといった生活は自律神経の乱れに直結します。
というのも、基本的には交感神経は昼間に優位になり、副交感神経は体が休息状態に向かう夜間や食事のさいに優位になるというリズムがあります。生活が不規則になると自律神経が乱れてしまうのです。
つまり、主に昼間に優位になる交感神経と夜間に優位になる副交感神経の切り替わりがスムーズでなくなり、その働きが乱れてしまうというわけです。
自律神経が乱れるとどうなる?
現代人に多い自律神経の乱れは、交感神経が優位になりすぎた状態
自律神経の乱れといってもいくつかの「乱れ方」があります。私たち現代人は自律神経の「乱れ方」に大きな特徴があるのです。
その特徴とは、交感神経の働きが優位になりすぎて、副交感神経の働きの衰えた人が多いこと。これは自律神経の乱れる原因が強すぎるストレスにある場合が多いためです。
ストレスは心身を緊張状態へと導き、交感神経を優位にさせる特徴があるのです。
交感神経優位で緊張状態が続くと、あらゆる不調や病気を招きやすくなります。
自律神経の乱れをチェック
自律神経の乱れがあるかどうかは、病医院などで「自律神経機能検査」を受けるのが正確ですが、自分で目安を調べられるやり方もあります。
自律神経の乱れと自分のタイプをチェックして、適した対策を探りましょう。
くわしくは次の記事をご覧ください。
大きくバランスを崩す自律神経失調症
自律神経が乱れると多くの病気を招きますが、特に現代人に多い交感神経優位の状態では、免疫(病原体から体を守るしくみ)の中心的な役割を担う白血球のバランスが乱れて、病気に対する免疫力が弱まります。
その結果、カゼや肺炎などの感染症やがんを発病しやすくなります。
また、交換神経が優位に陥ると、心拍数が増えたり血管が収縮したいるする状態が日常的に続くことになり、高血圧や狭心症、不整脈、脳卒中などの病気も多発します。
さらに体内のエネルギーの燃焼が活発になって、活性酸素(攻撃力の強い酸素)が大量に発生します。活性酸素は動脈硬化の進行を促して、心筋梗塞や脳梗塞、がん、認知症を招く原因になることが知られています。
[基本編]自律神経の乱れを整える対策
ストレッチとウォーキング
自律神経が乱れている人は、病気や不調の有無にかかわらず対策を講じてください。日常生活ですぐできる簡単な対策を紹介します。
自律神経の乱れを整えるうえで最も大切なのが、なんといってもストレス対策です。ストレス対策としてまっ先にあげられるのがストレッチとウォーキング。
この2つは一般的ではありますが、やはりストレス改善作用が大きいです。
仕事中も定期的にストレッチするのがオススメ
ストレッチやウォーキングを行うと、脳には快感ホルモンともいうべきセロトニンやドーパミンが分泌されます。すると心が落ち着いて疲れも取れ、ストレスの改善に役立つのです。
また、体を適度に動かして汗をかけば夜も眠りやすくなるため、ストレスもたまりにくくなります。
ストレスに弱い人は体力の衰えている人に多く、ストレッチなどを行えば体力向上の作用も期待できます。
深呼吸(息を長く吐いて)
深呼吸もおすすめです。
いやな気分のときにため息をつく人、みなさんの中にもいると思います。これは体が無意識のうちにストレスを逃がそうとしているためです。
効率的なやり方としては、特に息を吐くさいに時間をかけること。交感神経優位状態から副交感神経優位の状態に自然と切りかわり入ります。
不規則な生活を改善。入浴、香りや音楽、笑いも有効
ほかにも、
- 38~40度C程度のぬるめの湯に漬かること
- よく笑うこと
- 自分の好きな音楽を聴くこと
- お気に入りの香りをかいだりすること
などもおすすめです。
もちろん、夜更かしや朝食抜きなど、不規則な生活は改めてください。
早寝早起きと朝昼晩の1日3食を必ず守るようにしましょう。
[応用編]自律神経の乱れを整える対策
自律神経のために開発されたセルフ整体【手首ゆらし整体】
「自律神経を整える」という目的に特化して、医学的根拠をもとに考案された「セル・エクササイズ(以下、セルエクサ)」という体操があります。特におすすめは、セルエクサの中でも簡単な「手首ゆらし整体」です。
- 手の甲側の手首の上にあるツボを押す「外関のツボ押し」
- 手首をブラブラさせるだけの「手首ゆらし」
- 椅子に座ってできる「手首ロック首回し」
- 立って行う「手首ロック上体回し」
の4種類があります。くわしくは次の記事をご覧ください。
ギャバ(γーアミノ酪酸)が豊富なトマトがおすすめ(以下、カラダネ編集部より)
トマトに含まれる成分で最近特に注目されているのがアミノ酸(たんぱく質の構成成分)の一種であるギャバ(GABA、正式名はγーアミノ酪酸)です。実践女子大学名誉教授の田島眞先生は、自律神経を整える食材としてトマトを薦めています。
ギャバは、私たちの脳や脊髄にも含まれており、脳のさまざまな機能を調整する神経伝達物質として働きます。
ところが、脳内に含まれているギャバの量は40代から急激に減りはじめ、10代のころに比べると含有量は半分以下になると考えられています。
ギャバが不足すると、自律神経(意志とは無関係に血管や内臓の働きを支配する神経)のうち、心身を緊張状態に導く交感神経が優位になります。
中玉のトマト1個には40~60ミリグラムのギャバが含まれています。1個とれば、十分1日分が補えると考えられます。
詳しくは、こちらの記事をご覧ください。
トマトを使った自律神経改善レシピも紹介しています。
夜に眠りやすくなる528ヘルツの音
交感神経が優位な自律神経を整えるには、相対する副交感神経を活性化することが有効です。音楽療法を長年研究してきた、前・埼玉医科大学教授の和合治久先生は、副交感神経を活発にする音の周波数があるといいます。
それが528ヘルツの音です。
音叉でつくった528ヘルツの音を美しい映像とともに体感できます。ぜひ、次の動画を音声をオンにして、視聴してみてください。
くわしくは、次の記事をご覧ください。
病院へ行くなら何科? 治療法は?
まずは症状に応じた診療科、改善しなければ心療内科へ(以下、末武信宏先生が解説)
最後に、病医院で行われる一般的な検査や治療について簡単に説明します。
まず、自律神経の乱れが原因と疑われる症状についても、今最もつらい症状に合わせて受診する科を決めてください。
胃もたれなら内科、肩こりなら整形外科、めまいなら耳鼻科といった具合です。重症でなければ、症状に応じた各診療科での治療でよくなるはずです。
心療内科で行われる4つの治療法
自律神経失調症と診断された場合は病状に応じて治療が行われます。治療では一般的に次の4つの治療法が用いられます。
●薬物療法
自律神経調整薬・抗不安薬・催眠鎮静薬で、頭痛・イライラ・不安・不眠などの精神面の不快症状を取り除く。
●心理療法
カウンセリングや音楽療法などで、心理的な問題や強すぎるストレスを取り除く。
●理学療法
ストレッチやヨガ、温熱療法などで肩こりや腰痛を改善させたり心身をリラックスさせたりする。
●生活指導
不規則な生活を改める、食生活を改善する、運動行うなどのアドバイスを行う。
各診療科での治療で改善が見られなかったり症状がぶり返したりするのであれば、心療内科の受診が必要でしょう。
自律神経失調症の治療には健康保険が適用されます。不安に思わず、必ず専門医に診てもらってください。
記事にあるセルフケア情報は安全性に配慮していますが、万が一体調が悪化する場合はすぐに中止して医師にご相談ください。また、効果効能を保証するものではありません。
写真/© Fotolia ©カラダネ
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