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認知症の種類をセルフ診断|48の質問で種類・危険度がわかる

解説 (株)Re学代表取締役・理学療法士
川畑 智

認知症は、主に4種類に大別されます。
●アルツハイマー型認知症
●レビー小体型認知症
●脳血管性認知症
●前頭側頭型(ピック型)認知症
4種類の認知症についてくわしくは一番下の関連記事をご覧ください。

認知症を心配している人やMCI(軽度認知障害)の人の場合、自分が将来的にどのタイプに該当する可能性があるのかを、早く知りたいのではないでしょうか。
まずは13年間にわたり、理学療法士として認知症ケアの現場で患者さんと接してきた、川畑智先生が作ったセルフ診断テストで、該当する認知症の種類をチェックしてみましょう。

もちろん、認知症の心配がある人や家族に疑いがある人は、必ず専門医に診てもらうことを忘れないでください。

見逃してはならない認知症の初期サイン。自己診断テストを習慣に

記憶があやふやになったり、うっかりミスが増えたりするのは、年を重ねれば誰もが経験すること。しかし、そうした物忘れやそれに伴うミスは、認知症の初期に見られるサインであることも多く、老化によるものか、認知症によるものかを正しく判断できるのかが肝心です。

そこで私は、脳の衰え度や認知症の危険度、どの部位の働きが衰えているかなどを大まかに調べられる脳の機能チェック「48の質問(正式には4大認知症スクリーニングテスト)」を作成しました。

私は理学療法士として13年以上、認知症ケアの現場で患者さんと接しています。
認知症の専門医と情報交換したり、患者さんの生活の悩み、症状、家族からの相談事などを聞いたりしてきました。それらの情報をまとめて作ったのが、この48の質問なのです。

あくまでも、目安としてこの自己診断テストを試してみてください。

配点が4点以上の質問は、各認知症の種類の特徴的な症状

48の質問は、認知症の人に多い生活の悩みや症状について、12問ずつの質問形式でまとめており、頻度や危険度に応じて各項目に0~10点の配点をしています。配点が1〜3点と低い質問は老化でも起こる可能性がある悩みですが、配点が4点以上の質問は各種類の認知症の特徴といえます。

診断の方法は、48の質問の中で当てはまった項目の点数を合計するだけ。点数の高いものが、強く疑われる認知症の種類といえます。48の質問は、本人だけでなく、家族に認知症が疑われる人がいるときの簡単な診断として考えてください。下のファイルを開いて、プリントしていただければ、チェック用紙としても使えます。

セルフ診断【48の質問】

認知症の種類別[進行予防のヒントやアドバイス]

認知症の種類別にまとめられた質問の中でも、得点配分の高い質問を中心に解説しましょう。加えて、症状を軽減するのに役立つ生活のヒントや、家族の方へのアドバイスも紹介します。

アルツハイマー型認知症に関する質問について(問1〜12)

アルツハイマー型認知症は、短期記憶を担う脳の「海馬」という部位の萎縮から始まって、物忘れが増えたり、日にちの混乱などを起こしやすくなったりします。

12の質問の中で、特に重要なのが、問1「物や人の名前が、すぐに出てこないことがある」、問2「同じことを何度もいったり聞いたりする、と指摘される」、問7「置き忘れやしまい忘れが多くなった」の3つ。これらは、全国の認知症を介護する家族のアンケートで、家族が認知症と気づいた初期症状に該当する質問です。

問1に当てはまった人は、散歩しながら、目に映る物の名前を口に出す習慣をつけることが症状の改善におすすめです。
問2に当てはまった人は、メモを取るといいでしょう。家族は、「また?」とか「さっきもいったでしょ」というような言葉を、認知症の人に発するのは禁句。こうした言動から、不安になったり、イライラしたりという不安定な気持ちを引き起こしてしまうのです。
問7に当てはまった人は、決まった場所に片づけるように収納ボックスなどを用意しておくのがおすすめです。

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レビー小体型認知症に関する質問について(問13〜24)

レビー小体型認知症は、脳の大脳皮質にレビー小体と呼ばれる異常なたんぱく質が生じて、神経伝達物質の一種であるドーパミンが不足することで起こります。

レビー小体型認知症は、視覚に関係する後頭葉の衰えによって、問13「人や物を見間違えることがある」、問21「実際にはそこにないもの(子供、動物、虫など)が見えるという」のように、幻視や錯覚などの特徴的な症状が現れます。
幻覚や錯覚が現れた場合、家族の方はそれをすぐに否定せずに、実際に手で触れさせて確認するなどして、安心させることが大切です。

また、ごく初期から運動機能が衰えて、問20「起き上がりや立ち上がりの動作、歩く速度が遅くなってきた」などのように体を動かしにくくなって動作が遅くなります。問14「口数が少なくなったり、ボソボソと話したりするようになった」などのように会話、食事といった日常動作に支障が現れたり、顔の表情が乏しくなったりするのも特徴です。

さらに、レビー小体型認知症では、問19「薬を飲むと、効きすぎたり、副作用が強く出たりすることがある」という点も、見逃してはならない症状です。

脳血管性認知症に関する質問について(問25〜36)

脳血管性認知症は主に脳卒中(脳梗塞・脳出血・くも膜下出血の総称)の発作が引き金となり、脳血管がつまったり破れたりすることで起こります。ただし、脳卒中を起こした人が、必ずしも認知症を発症するわけではないため、問26の「脳卒中のあとに物忘れが出てきたようだ」に当てはまった人は、脳血管性認知症の疑いが濃厚です。

脳血管性認知症で衰えやすいのは、考える・話す・行動する・意欲を出すなどを担う「前頭葉」です。そのため、脳血管性認知症で目立つのが意欲の低下です。
問27「家や部屋に閉じこもることが多くなった」などのように、閉じこもりやウツ状態に陥ることが多くなります。また、問33の「ささいなことで涙もろくなった」のように、感情を抑えられなくなることがあります。

family-reunion.jpg脳血管性認知症が疑われる場合、外出する機会や体を動かす習慣を作ることが大切ですが、家族や周囲の人たちが、声をかけたり、役割を見つけてあげたりすることでいい結果を招くことも多く、人との関わりが何よりの薬になるといえるでしょう。

前頭側頭型認知症に関する質問について(問37〜48)

前頭側頭型認知症は、主に脳の前頭前野や側頭葉が萎縮するもので、65歳未満の若い世代での発症が多く見られます。

前頭側頭型認知症で特徴的なのは、思考力・判断力・感情・理性を司る前頭前野が衰えるため、社会性の低下が見られることです。問37「ささいなことでひどく怒り、暴言をいうようになった」、問44「悪気がなく車の運転違反や、万引き、無銭飲食をしてしまう」のような行動をするようになります。

まずは、認知症になると起こりうる事態を、本人やその周囲の人たちが理解してください。そのうえで、先回りして準備をすると、生活を安定させることができるはずです。



認知症予防のきっかけに

最後に、診断テストはあくまで目安です。認知症の可能性が心配される人は、必ず専門医の診断を受けてください。早期に認知症のタイプが分かれば、対策も取りやすくなります。

大切なことは、「自分が認知症のわけがない、発症するはずがない」という思い込みを捨てること。50歳を過ぎたら、誰でもいつ発症してもおかしくないと考え、自分で行動を起こすべきです。
とはいえ、この記事をお読みのみなさんは、すでにその危機感を持っている方ですから素晴らしいと思います。今日からまた、新しい行動を起こしましょう。

この記事は、医療や健康についての知識を得るためのもので、特定の見解を無理に推奨したり、物品や成分の効果効能を保証したりするものではありません。

写真/© Fotolia ©カラダネ

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