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過活動膀胱の原因は「カチコチ膀胱」?泌尿器科専門医が自力改善策を解説(切迫性尿失禁)
二宮典子
突然に尿意をもよおし、尿が漏れてしまうことがある病気、それは過活動膀胱(かかつどうぼうこう)です。
最近では、過活動膀胱は年齢を重ねると膀胱の柔軟性が失われ、硬くなることが原因の一つといわれるようになりました。いわば、膀胱がカチコチになるというわけです。
過活動膀胱の症状と原因、対策を専門医の二宮典子先生に聞きました。自力で過活動膀胱の克服を目指してみてはいかがでしょうか。
もちろん、尿漏れを自覚したら泌尿器科の専門医に診てもらうことが重要です。そのうえで、記事で紹介する自力対策も試してみてください。
過活動膀胱ってどんな病気?症状と自己診断チェック
過活動膀胱ってどんな病気?
過活動膀胱とは、いわば「膀胱が活動しすぎる」病気のこと。尿がそれほどたまっていないのに膀胱の筋肉が勝手に収縮して急に尿意を催し、頻尿や尿漏れを招きます。
そのしくみは実はまだくわしくわかっていませんが、膀胱の筋肉が衰えたり尿を出す指令を担う「膀胱のセンサー」に異常が起こったりすることで、排尿のしくみのどこかにトラブルが生じるためではないかと考えられています。
患者数100万人?の国民病。一人で悩む必要はない
過活動膀胱に悩む人は、今や日本人の40歳以上の810万人に及ぶと推計されており、もはや国民病といっても過言ではない状況です。
このデータは日本排尿機能学会の調査(2003年)による「40歳以上の12.4%が過活動膀胱の症状を持っている」という調査結果から推測したものです(下記のグラフ参照)。
この調査から10年以上がたった現在の日本では、ご存じのとおり高齢化はさらに進んでいます。過活動膀胱の人は1000万人以上に達しているのでないでしょうか。
調査はほかにもあります。その調査はある地域の100近い病院施設で、外来の患者さんへのアンケートによって行われたそうです(回答数2494、平均年齢63.2歳)。
この中で過活動膀胱と診断されたのは全体の27%。さらに50代の約2割(19%)、60代70代の約3割(60代31%、70代32%)、80歳以上の約4割(38%)とやはり年齢を重ねた人ほど過活動膀胱と診断される場合が増えるとわかったそうです。
過活動膀胱の症状と自己診断チェック
過活動膀胱の主な症状は次の2つです。
・おしっこの回数が増える
・急におしっこがしたくなる
そこで、下記のチェックリストで自己診断してみてください。
① 朝起きたときから夜寝るまでに何回おしっこに行きましたか?
7回以下……0点
8〜14回……1点
15回以上……2点
② 夜寝てから朝起きるまでに何回おしっこに行きましたか?
0回……0点
1回……1点
2回……2点
3回……3点以上
③ 急におしっこがしたくなり我慢したことはあったか?
なし……0点
週に1回より少ない……1点
週に1回以上……2点
1日1回くらい……3点
1日2〜4回……4点
1日5回以上……5点
④ 急におしっこしたくなり、我慢できず漏らしたことはありますか?
なし……0点
週に1回より少ない……1点
週に1回以上……2点
1日1回くらい……3点
1日2〜4回……4点
1日5回以上……5点
[診断]
以下の(A)(B)両方に該当する人は過活動膀胱と診断されます。
(A)③の質問が2点以上
(B)合計点数が3点以上
合計点数が5点以下なら軽症、6〜11点で中等症、12点以上で重症と診断されます(過活動膀胱診療ガイドラインより)。
過活動膀胱の主原因は柔軟性を失った「カチコチ膀胱」
膀胱の柔軟性がなくなると尿をためられなくなる
過活動膀胱の原因は、わかっていないことも多いのが実情です。しかし、最近では年齢を重ねるごとに膀胱の柔軟性が失われ、尿がためられなくなることが直接的な原因ではないかと考えられています。
誰しも若いころは肌も筋肉もみずみずしくて柔軟性がありますが、年齢を重ねるごとに衰えて硬くなってきます。それと同じように、内臓の一種である膀胱も硬くなるものと考えられるのです。
水風船を思い浮かべ、それを膀胱に見立ててください。風船表面のゴムが伸び縮みしないと、水風船には水が十分にためられません。それと同じように年齢を重ねるごとに膀胱が硬くなると、ほんの少量しか尿がためられなくなるのです。
膀胱のセンサーがくるい、わずかな尿で反応する
また、膀胱が硬直すると尿のたまり具合を感知するセンサーにも異常をきたします。すると、わずかな量の尿がたまっただけでも強い尿意を覚えたり、急激な膀胱の収縮を引き起こしたりすると考えられます。
すると過活動膀胱を招いて尿漏れするようになると考えられるのです。
男性の場合は男性特有の前立腺が徐々に肥大することで、前立腺のすぐそばにある膀胱が刺激されて過活動膀胱を招く場合があると考えられます。
過活動膀胱の自力対策①骨盤底筋体操
目的は尿道を締める筋肉の強化と膀胱の血流改善
過活動膀胱を改善に導く自力対策の一つめは、快尿筋(正式には骨盤底筋群という)を鍛える「骨盤底筋体操」です。
なぜ、快尿筋を鍛えるのかといえば、それは快尿筋の位置が関係しています。ちょうど骨盤の底部(下部)にあり、尿道や膣、肛門を取り巻いており、膀胱や子宮など骨盤の上にある内蔵を下から支えています。
快尿筋を鍛えると尿道を締める筋肉も強まって尿漏れ予防に役立つほか、骨盤内の血流もグンとアップします。
すると、膀胱内への血流も良くなって膀胱に酸素と栄養が送られ、代謝も活発になって若々しい柔軟な膀胱になると考えられるのです。
快尿筋を鍛える骨盤底筋体操のやり方
最も一般的な骨盤底筋体操は以下のとおりです。
❶床の上にあおむけに寝てひざを立てます。
その状態で膣や肛門の筋肉に力を入れて、10秒ほど引き締めます。
❷10秒後、引き締めた筋肉をゆるめてリラックスします。①と②の動作をくり返します。
さまざまな骨盤底筋体操(以下、カラダネ編集部より)
骨盤底筋の体操法はひとつではありません。信頼性が高いと判断した専門家による骨盤底筋体操をまとめているので、木になる人はぜひチェックしてみてください。
くわしくは、下記の記事をご覧ください。
過活動膀胱の自力対策②おしっこ我慢
目的はカチコチ膀胱の悪化を防ぐこと
二つめは、「膀胱の訓練(おしっこ我慢)」です。
前にも述べたように、過活動膀胱の人は尿が少量しかたまっていないのに尿意を催して排尿するため、膀胱が広がりにくくなっています。この状況を放置すると、症状がより悪化する可能性もあるのです。
訓練といっても、動作はとても簡単で尿を我慢するだけ。
5分おしっこを我慢してみる
やり方は次のとおりです。
❶尿意を感じたら、おならを我慢するように肛門周囲の筋肉をギュッと閉めて、トイレに行くのをできるだけ我慢します。
❷我慢ができなくなった時点でトイレに行きます。
まずは、5分くらいの我慢から始めてみてはいかがでしょうか。
実に簡単でしょう。
膀胱訓練は、すぐトイレに行けるように、できるだけ外出の少ない日に自宅で行ってください。
慣れてきたら、おしっこ我慢の時間を延ばす
初めは、5分くらいの我慢から始めますが、だんだん慣れてきたら1週間から1カ月ごとに10分15分と少しずつ我慢する時間を長くしていくようにしてください。
過活動膀胱の自力対策③膀胱若返りヨガ
目的はヨガの深い呼吸で膀胱の血流を促すこと
最後に、「膀胱若返りヨガ」を紹介します。泌尿器科専門医の馬車道さくらクリニック院長、車英俊先生はカチコチの膀胱をほぐすヨガを患者さんにすすめているといいます。
「膀胱が硬くなるのは、血流が悪くなって酸素が不足することも大きな原因でしょう。膀胱は、全身に血液を送る心臓から遠い場所にあるため血流が悪くなりやすいといえます。
ところが、ヨガを行うと膀胱を中心に骨盤内の臓器の血流もよくなると考えられるため、膀胱を柔軟にするのに役立つはずです。また、骨盤内の冷えの改善も期待できます」
膀胱若返りヨガ3つのポーズ
ヨガ教室をクリニックに併設し、治療の一環にヨガを積極的に取り入れている、医師の金子透子先生。カチコチ膀胱の改善に役立つ3つのポーズを教えてくれました。
くわしくは、下の関連記事をご覧ください。
膀胱が柔軟になって、水風船のように尿をしっかりとためられるようになれば、過活動膀胱は徐々に改善していくはずです。
すると、急な尿意に襲われて尿漏れすることも防げるのはないでしょうか。ぜひ、試していただきたいと思います。
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