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老眼・近視の原因は「目の酸欠状態」!? 1日数回「全肺深呼吸」の練習で視力を回復

解説 回生眼科院長
山口康三

タブレットやスマートフォン、PC仕事のしすぎなど、現代人にとって目は常に酷使状態と言われています。常に目の不調を感じている人、多いのではないでしょうか。
そうした目の不調を根本から改善させるには、ときには全身から変えていくことが必要といいます。

特に、目の働きを正常に保つには、目に大量の酸素を送ることが必要。そのためには呼吸法が重要と回生眼科院長の山口康三先生は話します。
いったいどんな呼吸法をすればいいのでしょうか……山口先生にお聞きしました。



目は大量の血液を必要としている

目は、人体の中でも唯一、血管がじかに見える場所です。内科に行ったとき、医師から目の奥をジッと見られた経験がある人はいませんか?これは、目の血管を見て、貧血などの恐れがないかを判断するため行われます。

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また、目は人体の中でも特に多くの血液が必要とされる場所でもあります。血液が集まる場所というと、みなさんはまずは脳を思い浮かべる人が多いのかもしれません。

もちろん、いつも高度な働きをしている脳には、血液が大量に必要です。しかし、それは目も同じ。脳と目を同じ重さあたりで換算すると、実に脳の23倍もの血液量が目には必要だとわかっているのです。
血液がそれだけ大量に必要ということは、目がいかに高度な働きをしているかおわかりいただけるのではないでしょうか。

網膜では血管が縦横に無数に走っている

下の図は眼球の構造です。眼球は成人の場合で直径が約24ミリ、重さは7〜8グラムの球体をしています。
手のひらにもらくに乗せることができるくらい小さな組織です。
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この眼球の役割は、簡単にいってしまえば物を見ること。
少し専門的な話になりますが、具体的にいうと外から入ってくる光を角膜と水晶体で屈折させながら調整します。そして、カメラでいうフィルムの役割の網膜へと届けます。
網膜に届いた光の情報は、網膜の細胞(視細胞)によって吸収されて電気信号に変わります。

そして、その電気信号が網膜の上を走る神経線維に伝えられ、ヒモ状になった視神経を通って脳へと送られ映像化されるわけです。

高性能な人間の目には大量の酸素が必要

私たち人間の眼球がすごいのは、物の形や色、明るさなどを認識する働きがあること。眼球は当然のことながらイヌやネコ、ウマなどほかの動物にもありますが、色や明るさを認識する機能は人間ほどは発達してはいません。

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こうした目の働きは、私たちが起きて活動している間に休まず行われています。
そのため、目は細胞を働かせるために大量の酸素が必要で、特に細胞が多い網膜では血管が縦横に無数に走っていて、その細胞に酸素や栄養が常に送り込まれています。

この記事の冒頭で述べましたが、私たちが外から直接見ることができる目の血管は、この網膜の血管なのです。
ちなみに、角膜や水晶体、硝子体などの組織も当然、酸素や栄養が大量に必要です。しかし、これらの組織にもしも血管があると私たちが物を見るとき、視野が赤くなってしまいます。
これらの組織には、実は涙や眼球を満たす「房水(ぼうすい)」という液体から酸素や栄養が供給されているのです。

目のショボショボは酸欠のサイン

ところで、目の血流はほんの少しのことで滞ってしまいます。
例えば、日光の紫外線に当たるだけで目には活性酸素(攻撃力の強い酸素)が生じますが、これによって目の血流が滞りやすくなってしまいます。

こうした血流の滞りが、一時的に起こっているのなら特別な問題はありません。網膜上にある多くの血管が補完しながら、目の血流を維持しているからです。

ところが、目の血流の滞りが頻繁に起こるのは問題です。目に供給される酸素の量も減ってしまい、働きが悪くなって視力が低下してしまうのです。

目の酸欠で視力が低下するといっても、みなさんはイメージしにくいかもしれません。しかし、実際問題として、みなさんも今まで一度くらいは経験しているのではないでしょうか。

例えば、読書中に目がショボショボして文字が見えにくくなることがあるでしょう。
これは読書に集中するあまり、まばたきの回数が減って角膜に酸素を送る涙が不足した状態で、まさに目の酸欠が起こっている真っ最中といえます。

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酸欠が近視・老眼、さらに白内障や緑内障を招く可能性も

目の酸欠が進むと視力が急に悪くなります。
具体的には、近視や老眼による視力の低下にも目の酸欠がかかわります。
近視や老眼は、焦点を合わせる毛様体という筋肉の衰えが関係します。毛様体には近くの物を見たり遠くの物を見たりしたとき、カメラでいうレンズの役割を果たす水晶体の厚みを変えて、焦点を合わせる働きがあります。

この毛様体の働きを左右している主役が酸素で、目の血流不足が生じて目の酸欠が起これば、毛様体の働きが悪くなり、ひいては水晶体の厚みなども変わりにくくなって近視や老眼を招くわけです。

また、白内障や緑内障といった目の病気も目の酸欠がかかわっています。

目の血流が滞っていると、涙の分泌や房水の巡りが悪くなって、水晶体に酸素や栄養が届きにくくなります。
その結果、水晶体が変性して白く濁る白内障の原因になり、眼圧(眼球内の圧力)も高くなりがちです。

また、網膜の血流が悪化して網膜上にある細胞が酸欠を起こしたとき、酸欠を防ごうとして血管が新たに作られる場合があります。
これを新生血管といいますが、新たに作られた血管が房水の排出口などに生じた場合、房水が排出されずに眼圧が高くなって緑内障を招く危険性も高まるのです。

なお、目の酸欠は、ほかにもさまざまな目のトラブルにかかわっています。

呼吸を深くして全身の酸素供給量を増やす

目の酸欠は日常のいたるところで起こります。紫外線を浴びたり、テレビやパソコンなどを長時間利用したりするだけで、目の酸欠が起こります。
とはいえ、同じことをしていても、目の酸欠が一時的ですむ人もいれば、慢性化しやすい人もいます。その重大な違いと私が考えているのが、ふだんの呼吸です。

ふだんの呼吸が浅い人は、酸素が体内へとたっぷり取り込まれず、全身に供給される酸素も少なくなってしまいます。すると、目はもちろんのこと、全身の不調を招きやすくなってしまうのです。
呼吸が浅い人には特徴があります。具体的にいうと、ふだんから歩く距離が短い人、運動不足の人、ネコ背の人、ストレスが多い人、胃腸の弱い人などです。

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こうした人たちは、筋肉の衰えや自律神経(意思とは無関係に血管や内臓の働きを支配する神経)の乱れが起こって呼吸が浅くなりがちなため、酸素をたっぷり吸い込む訓練を行ってください。

腹式呼吸はすべての肺胞が使われる全肺深呼吸

では、酸素をたっぷり吸い込む訓練はどうすればいいのでしょうか。
みなさんの中には、浅い呼吸は胸式呼吸、深い呼吸は腹式呼吸というように呼ぶと考えている人もいるでしょう。
ところが、この呼び名はあくまでも一般的にわかりやすくしたもの。腹式呼吸といっても、おなかで息をするわけではありません。

そもそも、呼吸は肺で行われます。肺の内部は無数の小さな袋(肺胞)に分かれています。そして、私たちが息を吸うと肺全体がふくらんで肺胞に酸素が取り込まれます。
逆に息を吐くと、肺全体が縮んで肺胞から二酸化炭素が吐き出されます。s_呼吸の仕組み.jpg

肺は、心臓などのように筋肉でできているわけではありません。そのため、肺がみずから動くことはできずに胸部と腹部の境目にある横隔膜という膜状の筋肉が中心となって肺を動かします。
肺はこの横隔膜のすぐ上に接していて、横隔膜が上下に動くのに合わせふくらんだり縮んだりするわけです。

そこで、横隔膜があまり動かない、つまり肺のふくらみが小さい呼吸を「胸式呼吸」、横隔膜がよく動く、つまり肺のふくらみも大きい呼吸を「腹式呼吸」といっているわけです。

一方で、腹式呼吸は全肺深呼吸と呼ばれることもあります。横隔膜の動きが小さい胸式呼吸では、肺胞の7割程度にしか酸素が取り込まれません。残りの3割は何もしていないのです。
その点、横隔膜の動きが大きい腹式呼吸ではすべての肺胞に酸素が取り込まれることから、全肺深呼吸といわれます。

息を完全にはき切ると呼吸が深くなる

目の酸欠を防ぐためには、全肺深呼吸を日常生活にうまく取り入れることが大切になります。

では、全肺深呼吸をふだんから取り入れるには、いったいどうすればいいでしょうか。
率直にいってしまえば、一日数回、意識して深い呼吸を行うようにするだけでOKです。
そうすれば、そのたびにすべての肺胞が活気づき、呼吸によってより多くの酸素を取り入れることができるようになるのです。目に酸素を取り入れることを意識しながら、深く息を吸い込んでください。

もう一つ、深い呼吸のやり方で私が重要視しているのは、「息を吐くことに力点を置く」ということ。深い呼吸というと、息を吸うことに意識がいきがちですが、これだと思うように酸素を取り込むことができません。
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逆に、息を吐くことに力点を置き、完全に息を吐き切るようにするのです。いつもより息を多く吐けば、そのぶん酸素が必要になり、私たちは無意識のうちにより多くの酸素を取り込むよう息が深く吸えるようになります。
近視や老眼は、眼科医の治療を受けることが重要です。そのうえで、セルフケアの一環として試してみてください。

記事にあるセルフケア情報は安全性に配慮していますが、万が一体調が悪化する場合はすぐに中止して医師にご相談ください。また、効果効能を保証するものではありません。

写真/© Fotolia ©カラダネ

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