カラダネ(わかさ出版)
医師や専門家とあなたをつなぐ、
健康・食・くらしのセルフケアが見つかる情報サイト
[亜麻仁油の働き2]中性脂肪値と悪玉コレステロール値の低下に役立つ可能性も
白澤卓二
昨今、食べすぎや運動不足によって、おなかに内臓脂肪が過剰にたまるメタボリックシンドローム(以下、メタボ)への対策が求められています。
そうした中で、「亜麻仁油に多く含まれているオメガ3脂肪酸(脂肪酸とは油脂の構成成分)のα-リノレン酸が、内臓脂肪をためる原因の中性脂肪やコレステロールを減らす成分として注目を集めています」と、白澤抗加齢医学研究所所長の白澤卓二先生は話します。
中性脂肪、コレステロールとメタボの関係から解説いただきました。
最初に申し上げますが、亜麻仁油はあくまでも食品です。病気や不調がある人は専門医の治療を受けたうえで、毎日の食事の中で亜麻仁油を健康維持を目的にとるようにしましょう。
中性脂肪は体に必要なエネルギーだが、増えすぎるとメタボに
不健康の代名詞とばかり思われがちな脂質ですが、増えすぎなければ問題はありません。そもそも、中性脂肪もコレステロールも、私たちの体になくてはならないものです。
中性脂肪は、飢えに備えて血液中や内臓脂肪、皮下脂肪に蓄えられているエネルギー源で、いざというときに分解されて燃焼します。
ちなみに、分解された中性脂肪は遊離脂肪酸と呼ばれます。血液中の遊離脂肪酸が増えすぎると、脂質異常症と診断されるほか、肥満や糖尿病も招きやすくなります。
LDL(悪玉)コレステロールが動脈硬化の原因に
コレステロールは人体の60兆個もの細胞を覆う細胞膜や、さまざまなホルモン、胆汁酸(消化液の主成分)などの材料になります。
コレステロールは中性脂肪と違い、エネルギーとして消費されません。そのため、私たちの体には、コレステロールを全身に供給するLDL(悪玉)コレステロールと、余分なコレステロールを回収するHDL(善玉)コレステロールの2つのタイプがあるのです。
LDLコレステロールが悪玉といわれるのは、供給したコレステロールが酸化されることで、動脈硬化を進め、脳卒中や心臓病など、さまざまな病気を招くからです。ちなみに、内臓脂肪が増えるとLDLコレステロールは増え、HDLコレステロールは減りやすくなります。
亜麻仁油が中性脂肪とLDL(悪玉)コレステロールの値を下げた!
このように、中性脂肪とコレステロールは内臓脂肪と深く関係しています。ただし、亜麻仁油をとるとα-リノレン酸の働きで、それぞれの血中濃度を下げる作用が期待できるという報告もあります。実際に、1990年にオランダで行われた試験を紹介しましょう。
オリーブ油に含まれるオメガ9脂肪酸のオレイン酸、ヒマワリ油に含まれるオメガ6脂肪酸のリノール酸、亜麻仁油に含まれるオメガ3脂肪酸のα-リノレン酸をとったときに、脂質の代謝(体内で行われる化学反応)がどのように変化するか調べました。
具体的には、オリーブ油をとる群(15人)、ヒマワリ油をとる群(15人)、亜麻仁油をとる群(14人)に、毎日3食でそれぞれの油を20ミリリットルずつ、2週間にわたって摂取してもらい、試験の前後に中性脂肪・総コレステロール・LDLコレステロールの血中濃度の変化を比較したのです。
その結果、中性脂肪とコレステロールが有意に減少したのは、亜麻仁油をとった群とヒマワリ油をとった群で、オリーブ油をとった群では逆に増加が認められました。
くわしくいうと、総コレステロールは、亜麻仁油をとった群で明らかに減少し、ヒマワリ油をとった群ではわずかな減少でした。
LDLコレステロールは、亜麻仁油をとった群、ヒマワリ油をとった群ともに減少。中性脂肪については、亜麻仁油をとった群のみで明らかな減少が認められたのです。
以上のことから、コレステロールについては、ヒマワリ油のリノール酸にも減少させる作用はありますが、中性脂肪とコレステロールをともに有意に減らし、メタボ対策に適しているのは亜麻仁油のα-リノレン酸と考えられます。
米国政府が亜麻仁油を機能性食品として推奨
実際に、亜麻仁油は健康志向の高まりによって、世界的に注目される機会が増えました。例えば、米国厚生省が1991年に発表した「ヘルシーピープル2000」の中で、増えすぎたLDLコレステロールや中性脂肪を減らす機能性食品として亜麻仁を推奨したことにより、北米では亜麻仁油が広く食事に取り入れられるようになっています。
まだ未解明の点も多いとはいえ、亜麻仁油に多いオメガ3脂肪酸を多く摂取すると、虚血性心疾患の罹患が少なくなることを示す欧米の研究も報告されており、亜麻仁油は今後ますます注目されていくものと推測されます。
亜麻仁油についてさらに知りたい方はこちらをご覧ください。
この記事は、医療や健康についての知識を得るためのもので、特定の見解を無理に推奨したり、物品や成分の効果効能を保証したりするものではありません。
写真/© アマニ協会 ©カラダネ
この記事が気に入ったらいいね!しよう