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【音声あり】自律神経を「音」で整える。前医大教授が実証した528ヘルツの心癒やす音
和合治久
音楽を聴くと心地よく、心も体もリラックスしたことありますよね。
音楽(音)には不思議な力があります。
それは、気分的な問題ではなく科学的にも実証されているそうです。
実は、ある特殊な音を聴くと、自律神経の乱れが整う可能性があるとわかってきています。
その[特殊な音]の研究をする前・埼玉医科大学教授の和合治久先生に話を聞きました。
自律神経が乱れている可能性がある方は、心療内科や神経科、内科、精神科などの病院で専門医に診てもらうことが重要です。
そのうえで音による対策も取り入れてみてください。
モーツァルトの音楽が副交感神経を刺激する
私は音楽によって心身を癒す「音楽療法」を長年研究し、音のリラックス作用を検証してきました。
そして、みなさんもよくご存じの音楽家、モーツァルトの楽曲に含まれる特定の周波数(一定の時間内に振動などがくり返される回数のこと。単位がヘルツの場合は1秒)にすごい可能性を見つけました。
自律神経(意志とは無関係に血液循環系や内臓の働きを支配する神経)の一つである副交感神経(体を休ませる神経)を活性化し、心身にリラックス作用をもたらすとわかってきたのです。
副交感神経の働きは、唾液の分泌量やそこに含まれるコルチゾール(ストレスホルモン)の減少や体温を測れば検証できます。
私は、モーツァルトの楽曲を聞くことによりこれらの数値が改善することを実証しました。
私たち現代人は、過剰なストレスが原因で自律神経のうちの交感神経が優位になりがちです。
交感神経が高ぶった状態が続くと、それが体調不良の原因になると考えられます。
そこで私は、副交感神経を優位にする音を聞けば自律神経の乱れを整えるのに役立つと考えて、モーツァルトの楽曲を毎日聞く健康法を提唱したのです。
モーツァルトの楽曲の多くは約4000ヘルツの周波数の音をたくさん含んでおり、それを耳にすると延髄など生命の根幹を担う脳をはじめとする頭部が適度に刺激されます。
ここは副交感神経の働きを調整している要所なので、適度な刺激が加えられると心身が安定します。
実は、音はその周波数によって作用する体への部位が違うと考えられるのです。
フランスの耳鼻科医であるアルフレッド・A・トマティス博士の理論によると、4000~6000ヘルツは頭、2000~3000ヘルツは首、750~2000ヘルツは胸、500~750ヘルツは腰、250ヘルツはお尻の高さによく響くといわれています。
この理論は、フランスの学会でも認められているものです。
528ヘルツの音が腸を刺激して心が落ち着く?
実は最近、4000ヘルツよりはるかに低い周波数でも副交感神経を活性化できると考えられている音があります。
それが、「528ヘルツの音」です。
528ヘルツに最も近い音は、ト音記号の五線譜で示されるドレミファソラシドの上の「ド」の音になります(上のドの音の正確な周波数は、523ヘルツ)。
モーツァルトの音楽とは対照的に低い周波数の528ヘルツの音が、なぜ人々の心を落ち着かせるのでしょうか。
トマティス理論によれば、528ヘルツの音は腰の高さによく響くとされています。
私が推測するに、腰の高さというとちょうど腸がある場所。
腸には副交感神経が多く分布しています。つまり、528ヘルツの音を聞くと副交感神経が適度に刺激され、心が落ち着くのではないか、と考えられるのです。
また、腸は「第二の脳」といわれるほど、さまざまなホルモンを産生しています。
例えば、心身の安定にかかわる「幸せホルモン」のセロトニンは、脳だけでなく腸からも産生されることが、近年わかってきました。
推測ですが、528ヘルツの音で腸が刺激されればセロトニンの分泌に役立ち、自律神経の乱れも整うと考えられるのではないでしょうか。
もっとも、こうした話はまだあくまでも仮説の域を出ません。528ヘルツの音が自律神経を癒すしくみについて、まだ十分なエビデンス(科学的根拠)はそろっていないのが現状です。
前・医大教授の私自身が試したら集中力が上がり、よく眠れた
そうした中で、私は528ヘルツの音の秘密を探るべく手はじめに植物の成長に与える影響を調べました。
栽培中の野菜にモーツァルトの楽曲を聞かせると、発根率(種子から根が出る確率)が2倍になると以前から知られています。
では、528ヘルツの音の場合はどうでしょうか。
この試験では、コマツナの種を2グループに分けてそれぞれ別の鉢に植え、片方のグループのみに528ヘルツの音を含む音楽を1日2回、30分ずつ毎日流しました。
その結果、発根率はどちらのグループも変わりませんでしたが、528ヘルツの音を含む音楽を流したグループでは、茎の長さが均一で芽がきれいに伸びたのです。
もう一方は、茎の長さが不均一でバラつきがありました。
これは、やはり音の作用で植物ホルモンが過不足なく合成されて分泌されたからではないか、と考えられます。
いずれにせよ、528ヘルツの音が生物にいい影響を与えることは間違いないと思います。
そこで私は、自分自身に対して528ヘルツの音が出る「音叉(一定の周波数を発するU字型の金属。末端を体に当てて振動を伝えられる)」を使い、ツボを刺激してみたのです。
私は、音叉をたたいて音を出しその末端を頭頂の「百会(ひゃくえ)」というツボに押し当て、音の振動を体に伝えました。
ちなみに、百会は自律神経の働きに深くかかわるツボです。
すると、音叉を当てた百会の周辺が熱を帯びた状態になり、頭がさえてスッキリする感覚を覚えました。
おかげで、いつもよりも集中力が増して、仕事が格段にはかどったのです。
さらに、528ヘルツの音を含む音楽をヘッドフォンで10分間聞いてみました。すると、音楽を聞いている最中に体じゅうがポカポカし、安らかな気分になって全身がリラックスしたのです。
帰宅後も、そのリラックス作用は継続していました。スムーズに入眠でき、翌朝の目覚めも大変快適でした。
528ヘルツの音を聞く最も手軽な方法は、528ヘルツの音がふんだんに含まれている「グレゴリオ聖歌」を聞くことでしょう。
グレゴリオ聖歌のCDは、さまざまな種類が市販されているので、好きなものを選んでください。
朝・昼・夜の1日3回、それぞれ10分程度、目を閉じながら聞くといいでしょう。忙しい人は、1日1回聞くだけでもかまいません。
528ヘルツの音のリラックス作用を最大限に味わうなら、音叉がおすすめです。音叉のU字型の金属の側面をたたいて音を出し、耳に近づけてじっくりと聞きましょう。
音が消え入るまでの1~2分間、耳を澄ませることが大切です。これを1回当たり4回くり返してください。
なお、今回は528ヘルツの音を特別に録音した癒しの音を美しい映像とともに公開します。
ぜひ、お聴きください。
528ヘルツの音を聞いたら副交感神経が優位になった
528ヘルツの音の素晴らしさをみずから体感した私は、その後に埼玉医科大学の学生に協力してもらって実験をしました。
528ヘルツの音が含まれる「グレゴリオ聖歌」を30分間聞いてもらい、聞く前と聞いたあとで、手の甲の温度と、唾液に含まれるコルチゾール(ストレスホルモン)の濃度を測定して、数値の変化を調べたのです。
ちなみに、手の甲の温度が上がり、唾液中のコルチゾール濃度が下がれば副交感神経が優位に働いていると推測できます。
まず、手の甲の温度については、試験に参加した学生3人ともに上昇しました。グレゴリオ聖歌を聞く前は25・4~30・2度Cでしたが、聞いたあとは全員が32度C半ばまで上昇したのです。
この試験を行ったのは3月でまだ肌寒く、3人の手の甲の体温にはバラつきがありました。
それでも、全員が32度C半ばまで上昇したのは、グレゴリオ聖歌を聞いたことで自律神経の乱れが整えられたからではないでしょうか。
次に、唾液に含まれるコルチゾールの濃度については、試験に参加した学生4人全員がグレゴリオ聖歌を聞いたあとに低下しました。
中には、コルチゾールの濃度が半減した学生がいて、ストレスの顕著な軽減が認められました。
精神的なストレスが軽減すれば、心身の健康増進に役立つとともに、気分よく毎日を過ごせるでしょう。
その後、試験に参加した学生たちは「よく眠れるようになった」「集中力が増した」「気持ちが前向きになった」などと、感想を述べていました。
彼らは20〜22歳の若者ですが、授業やレポート提出、研究活動などで忙しく、睡眠不足で食事もおろそかなようすでした。これは、仕事や家事に追われる現代人や、眠りが浅くて食欲が減退している大人と同じ状態です。
自律神経の乱れを整えたいみなさん、ぜひ528ヘルツの音で癒されてはいかがでしょうか。
このウェブサイト「カラダネ」では他にも自律神経の乱れを整える運動や食事などのセルフケア情報を掲載しています。下記の関連記事もご覧ください(カラダネ編集部)。
記事にあるセルフケア情報は安全性に配慮していますが、万が一体調が悪化する場合はすぐに中止して医師にご相談ください。また、効果効能を保証するものではありません。
写真/© Fotolia ©カラダネ
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