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慢性腎臓病を食事で予防!腎臓病大国・アメリカで進行を抑えるとわかった8大食材

解説 順天堂大学名誉教授
富野康日己

慢性腎臓病(CKD)の食事療法は、重症度や合併している病気の状態、体調、性別、年齢などによって大きく変わります。食事療法は簡単ではありません。

必ず専門医の治療を受けつつ、食事指導も受けて、「積極的に食べるべき食品」「食べてはならない食品」の決まりを厳守して生活しましょう。
この記事では、慢性腎臓病の患者が多い米国(アメリカ)で注目を浴びる8大食材をご紹介。ぜひ、食事療法の参考にしてみてください。とはいえ、これを食べれば慢性腎臓病がよくなるといったものではありませんし、食べ過ぎは禁物です。

順天堂大学名誉教授の富野康日己先生に話をお聞きしました。



抗酸化作用で動脈硬化を防ぎ腎臓の血流を促す5大食材 

慢性腎臓病の患者さんが、2500万人を超えるといわれている米国では、進行予防に役立つ可能性がある食品が大きな注目を集めています。
それらが直接、腎臓に働きかけるわけではありませんが、生活習慣病を防いで腎臓の働きを助ける意味ではとても重要な食品といえるでしょう。

中でも、動脈硬化を防ぐ抗酸化作用(攻撃力の強い活性酸素の害を防ぐ働き)の強い食品や、余分な塩分や糖、脂肪の吸収を抑えて排出を促す食物繊維、抗酸化作用のあるビタミン・ミネラル(無機栄養素)の豊富な食品が関心を持たれています。

その代表的な食品を8つ紹介しましょう。ここにあげる食品は、慢性腎臓病のステージ(進行度)のうち、食事制限の穏やかなステージG1とG2の人が対象です。ただし、必ず医師に相談してから、食生活に取り入れるようにしてください。

まず、強力な抗酸化作用で動脈硬化を防ぎ、腎臓の血流を促す働きが期待できる食品から紹介します。

玉ねぎ

s_Fotolia_110144976_Subscription_Monthly_M.jpg玉ねぎには、硫化アリルやケルセチン、グルタチオンなど抗酸化作用の強い成分が多く含まれています。

皮をむくときに涙が出るもとになるのが硫化アリルで、悪玉(LDL)コレステロールを減らし善玉(HDL)コレステロールを増やす働きや、血管をつまらせる血栓(血液の塊)を作りにくくする働きがあり、動脈硬化を防いでくれます。

また、フラボノイド(植物の色素化合物)のケルセチンには、血液中の糖や中性脂肪を減らすという試験報告もあり、タマネギを常食すれば、血液をサラサラに保ちやすいと考えられます。

さらにアミノ酸で構成されるグルタチオンも、すい臓で活性酸素を除去し、インスリンの分泌を促すと考えられるので、糖の消費を活性化して血流を促す働きが期待できます。

ニンニク

garlic.jpgニンニクの成分アリインがニンニクの中に含まれている酵素(化学反応を助ける物質)によって分解され、S-アリルシステインという成分に変化すると、強力な抗酸化作用を発揮します。

S-アリルシステインには、悪玉コレステロールの酸化を防いで動脈硬化を抑える働きがあります。

アブラナ科の野菜

cruciferous-vegetables.jpgキャベツ、ブロッコリー、カリフラワー、コマツナ、ダイコン、ハクサイ、ケールなどのアブラナ科の野菜は、強い抗酸化作用を持つβ-カロテンが豊富で、ビタミン、ミネラル、食物繊維も多く含まれています。

また、アブラナ科の野菜に特有のイソチオシアネートという辛み成分には、血液をサラサラにして血栓を予防する働きがあります。

さらに、アブラナ科の野菜は、肝臓の解毒酵素であるグルタチオンを活性化します。アミノ酸で構成されるグルタチオンは、体のほとんどの細胞内で作られて高濃度で存在する抗酸化物質で、活性酸素のダメージから細胞を守る働きをしています。

さらに、ほかの抗酸化物質(ビタミンC・Eなど)が正しく体内で活用されるための手助けをする働きもあるのです。こうした成分が複合的に作用して、血管を若々しく保つのに役立つと考えられます。

オリーブ油

olive-oil.jpgオリーブ油には、ミネラルが豊富で、抗酸化作用を持つビタミンEやポリフェノールも多く含まれ、動脈硬化の予防に役立つとされています。

オリーブ油に多く含まれているオレイン酸は酸化しにくく、善玉コレステロールは減らさずに悪玉コレステロールを減らします。適量をとれば、動脈硬化を予防して、腎臓の負担を軽くする助けとなります。

青魚

s_青魚.jpgイワシやサバ、アジ、サンマなどの青魚には、オメガ3系の多価不飽和脂肪酸であるDHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)が非常に多く含まれています。

DHAとEPAは、悪玉コレステロールと中性脂肪を減らして善玉コレステロールを増やす働きがあるため、動脈硬化や脂質異常症の予防・改善に役立つとされます
また、青魚を摂取する人ほど血管が柔軟なことがわかっています。さらに、DHAとEPAは血小板を固まりにくくして血液をサラサラにするとされ、血栓の予防にもおすすめです。

塩分の排出を促す3大食材

そのほかにも、塩分の排出を促す成分が豊富な食材も注目を集めています。

リンゴ

apple.jpgリンゴポリフェノール(リンゴに含まれるポリフェノールの総称)や、食物繊維、カリウム、ビタミンCが豊富です。
特にカリウムには、塩分のとりすぎによって体内に増えた余分なナトリウムを排出する働きがあり、高血圧の改善に役立ちます。

また、リンゴポリフェノールの一つである、プロアントシアニジンには非常に強い抗酸化作用があるとともに、コレステロールや脂肪の吸収を抑える作用もあり、脂質異常症の改善にも役立ちます。

クランベリー

cranberry.jpgリンゴと同様に、豊富に含まれているカリウムが余分な塩分の排出を促進するため、血圧降下作用が期待できます。

また、クランベリーに含まれるプロアントシアニジンはポリフェノールの一種で、ビタミンCの20倍、ビタミンEの50倍という強い抗酸化作用があるといわれています。
その作用により悪玉コレステロールの生成を抑え血流を促進するため、腎機能が活発になり、むくみを改善する働きが期待されています。

クランベリーは、クランベリージュースやジャム、ドライクランベリーなどでとることができます。
最後は、ステージG3以上で、カリウムやリンの制限のある人におすすめの食品です。

卵白

albumin.jpg卵の黄身は高カロリーですが、卵白は高たんぱくで低カロリーです。
そのうえビタミンやミネラルが豊富で、脂肪やコレステロール、炭水化物はほぼゼロです。

卵白に含まれるオボムチンという糖たんぱく質は、腸内で善玉菌を数十倍に増やして腸内環境を整えます。さらに、小腸でコレステロールを包み込んで体外に排出してコレステロールの吸収を抑える働きもあります。

専門医推奨の毎日とりたい腎臓強化食

日本人の成人の8人に1人が患う慢性腎臓病は、日本においても新たな国民病といわれます。

腎機能は加齢とともに低下してきますが、食生活の乱れによる内臓脂肪の蓄積も腎臓にとって大敵です。内臓脂肪の増加は、高血圧や高血糖、高脂血を招き腎臓に大きな負担をかけるからです。

そうして腎機能が低下すれば、さらに生活習慣病が進行するという悪循環が止まらなくなります。こうした負の連鎖を断ち切るには、内臓脂肪をため込まない食品を選んで食べる習慣を身につけるべきです。では、腎臓の専門医の立場から腎機能維持におすすめな食品を紹介しましょう。

腎機能の維持に役立つ食品① 酢

vinegar.jpg酢の主成分である酢酸(クエン酸)は、摂取した糖質や脂質、たんぱく質、疲労物質である乳酸などを分解してエネルギーとして効率よく利用する「クエン酸回路」を活性化します。

酢をとりつづければ、エネルギー代謝(体内で行われる化学反応)が活発になり、疲れにくい体に変わって内臓脂肪が減少します。
さらに、皮下脂肪や中性脂肪が減少したり血圧や血糖値が低下したりすることが、近年の研究で確かめられています。

また、酢には脂肪の燃焼を促すリジンやプロリン、アラニン、アルギニンといったアミノ酸も豊富に含まれています。
特に黒酢に多い必須アミノ酸は、脂肪分解酵素のリパーゼを活発に働かせるため、脂肪燃焼作用を高めたり血液をサラサラにしたりする働きが期待できます。 

酢の作用を得るには、1日に大さじ1杯(15ミリリットル)が目安です。さらに、血流改善作用のある食品と合わせた「酢タマネギ」や「酢ショウガ」にしてとれば、働きがアップすると考えられます。

腎機能の維持に役立つ食品② 亜麻仁(アマニ)油

s_亜麻仁油 トップ.jpg次は、青魚のDHAやEPAと同じくコレステロール値を下げる働きのある油の「亜麻仁油(アマニ油)」です。

亜麻仁油は、健康志向の高まりで世界的に注目されており、近年の研究で大きな健康作用が明らかになってきました。
米国厚生省が1991年に発表した「ヘルシーピープル2000」の中でも、増えすぎた悪玉コレステロールや中性脂肪を減らす食品として推奨されました。

亜麻仁油には、オメガ3脂肪酸(脂肪酸とは油脂の構成成分)のα-リノレン酸がほかの油に比べて多く含まれています。

α-リノレン酸は、体内に入るとDHAとEPAに変換されて、中性脂肪や悪玉コレステロールを減らし、善玉コレステロールを増やす働きがあります。
さらに、血小板を固まりにくくして血液をサラサラにし、血栓を予防するなど、青魚と同様の動脈硬化や高血圧の予防作用が期待できます。

また、亜麻仁油に含まれているポリフェノールの一種であるリグナンという抗酸化成分にも、悪玉コレステロールの生成を抑えて善玉コレステロールを増やす作用があります。

亜麻仁油は、熱に弱く、酸化しやすいという特徴があるので、食べる直前に、ドレッシング代わりにサラダにかけたり、野菜ジュースにまぜたりするなどして、1日に大さじ1杯を目安にとるといいでしょう。


最後に、腎臓病の人におすすめしたい食物繊維の多い食材をあげましょう。

食物繊維には、水に溶ける水溶性と水に溶けない不溶性があり、不溶性食物繊維は便のカサを増やして腸の蠕動運動(内容物を先送りする働き)を活発にしたり、余分な糖やコレステロール、脂肪、有害物質をからめ取って体外に排出したりする働きがあります。  

水溶性食物繊維も、腸で糖やコレステロールなどを吸着し便として排出しますが、粘りけがあり不溶性よりも水分を吸収して膨らむため、胃や腸をよりゆっくり移動します。そのため、満腹感が持続しダイエット作用に優れているのです。

どちらの食物繊維にも、コレステロールや糖の消化吸収を抑え、高血糖を予防したり、内臓脂肪の蓄積を防いだりする働きが期待できます。

食物繊維の多い食品① きのこ

s_PPW_namashiitake.jpg低カロリーで、食物繊維やビタミン、ミネラル(無機栄養素)が豊富です。  
きのこに多く含まれているのは不溶性食物繊維で、余分なコレステロール、糖を包み込んで排出します。

ビタミンでは特に、糖質と脂質の代謝を促すビタミンB群が野菜よりも豊富で、この働きによっても、コレステロールを排出します。
また、ミネラルでは、特にカリウムが多く含まれ、ナトリウムの排出を促して高血圧の予防・改善に役立ちます。  

さらに、シイタケとマッシュルームに含まれるエリタデニンという成分には、血液中のコレステロールを減らして血流を促し、血圧を下げたり、たんぱく尿を減らしたりする働きがあります。  
エリタデニンは、キノコのカサの部分に多く含まれるため、シイタケやマッシュルームはカサの厚い物を選びましょう。

シイタケは、生でも干しシイタケでも作用は変わりませんが、干しシイタケを戻したときの汁にも作用する成分が溶け出るので、だし汁として使ってください。

食物繊維の多い食品② 海藻

seaweed.jpgコンブ、ワカメ、ヒジキ、ノリ、モズクなどの海藻類には、食物繊維が豊富です。
その中には、ヌメリ成分であるフコイダンやアルギン酸といった水溶性食物繊維が多く含まれており、高血糖や内臓脂肪の蓄積の予防におすすめです。

アルギン酸は、ナトリウムと結合して体外に排出されるため、高血圧の予防にもつながります。作用を得るには、海藻類を食前や食中にとることがすすめられます。
酢と合わせて酢の物にしてもいいですし、加熱しても成分が失われないため、いろいろな料理に使ってこまめに摂取してください。

さらに、海藻類や野菜などのアルカリ性食品を積極的にとると、尿がアルカリ性に傾くため、尿酸の結晶が溶けて体外に排出されやすくなります。
そのため、慢性腎臓病の悪化を招く高尿酸血症(痛風)の改善に役立ちます。なお、カリウムの摂取を制限されている人は必ず医師と相談し、とりすぎにならないよう注意してください。

食物繊維の多い食品③ こんにゃく

konjac.jpgカロリーがゼロに近いこんにゃくは、大部分が水分でできており、脂質やコレステロールがほとんど含まれていません。
糖質も少ないので、血糖値が気になる人でも安心して食べられます。  

こんにゃくには、カルシウムと不溶性食物繊維が豊富で、高血圧・高血糖・内臓脂肪の蓄積などの予防作用が期待できます。  

食物繊維の理想的なバランスは、不溶性食物繊維2に対して水溶性食物繊維1とされています。
ですから、コンニャクは野菜や海藻、果物などの水溶性食物繊維の豊富な食品といっしょにとるとより働きが高まります

料理でいえば、キンピラゴボウや豚汁、筑前煮などがおすすめです。  
また、低カロリーで淡泊なコンニャクをコンニャクステーキなどにすると満足感が増して、食べすぎを防ぐことができます。以上のような食品を意識してとり、腎機能の改善をめざしてください。

記事にあるセルフケア情報は安全性に配慮していますが、万が一体調が悪化する場合はすぐに中止して医師にご相談ください。また、効果効能を保証するものではありません。

写真/© Fotolia ©カラダネ

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