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不整脈の種類をセルフ診断|心房細動や期外収縮の脈拍がわかるグラフつき

解説 カラダネ編集部

不整脈に悩んでいる人は、「自分がどのタイプの不整脈に該当するのか」を、認識しておくことが非常に重要です。
そのためには、病院を訪れて専門の医師に直接診ていただくのが重要ですが、本記事にあるチェック法を活用すれば、不整脈のタイプの目安を知ることができます。不整脈のタイプを認識しておけば、もしものときに、迅速な対応ができるわけです。

今回は、杏林大学名誉教授の石川恭三先生と、榊原記念病院総合診療部主任部長の長山雅俊先生に不整脈のセルフ診断についてお聞きしました。
もちろん、セルフ診断はあくまでも目安ですので、必ず循環器内科を受診し専門医の治療を受けてください。


脈拍チェックを習慣に

健康診断などで不整脈と診断され、不安になっている人も多いことでしょう。しかし、不整脈が見つかっても、すべてのケースで治療が必要になるわけではありません。不整脈にはさまざまな種類があり、放置してもいい安全なタイプと、すぐに治療しないと命にもかかわる危険なタイプがあります。

s_Fotolia_162614534_Subscription_Monthly_M.jpg心臓は、心臓の上部にある洞結節(どうけっせつ)という部位で発生する電気信号によって動くしくみになっています。この電気信号が心臓に張り巡らされた刺激伝導系を通って心房(心臓上部の部屋)から心室(心臓下部の部屋)に伝えられ、これが拍動になるのです。

電気信号が流れると、心筋がギュッと収縮して心臓内の血液を全身に送り出します。この血液の圧力が脈(脈拍)で、通常は1分間に60〜80回ほど打ちます。不整脈は、こうしたしくみに異常が起こり、脈の速さや拍動のリズムが不規則になる病気です。

不整脈の症状は、胸がドキドキする動悸、胸痛、息切れ、めまいなど。多くは一時的な発作として現れ、すぐに治まるため放置してしまう人がいます。また、自覚症状のない場合が多く、気づかない人もたくさんいます。ふだんから自分の症状や脈拍の状態をチェックし、どの種類の不整脈の可能性があるかを知ることも重要です。

脈拍の正しい測り方

s_脈の測り方.jpg手首の親指側にある動脈に人さし指、中指、薬指の3本を当て、脈の打ち方や回数を調べましょう。
(解説:石川恭三)

不整脈の原因・危険度を探るセルフ診断チャート

〈読み方解説。チャートの上から〉
心房細動…しんぼうさいどう
上室性頻拍…じょうしつせいひんぱく
心房粗動…しんぼうそどう
心室細動…しんしつさいどう
心室頻拍…しんしつひんぱく
上室性期外収縮…じょうしつせいきがいしゅうしゅく
心室性期外収縮…しんしつせいきがいしゅうしゅく
洞不全症候群…どうふぜんしょうこうぐん
房室ブロック…ぼうしつぶろっく

この診断は、あくまでも目安になります。不整脈は自覚症状のない人も多く、また、症状がある人も感じ方が人それぞれ違うため、正確な診断には医師の診療が必要になります。
(解説:石川恭三)

不整脈には頻脈性と徐脈性がある

上の診断チャートで自分の不整脈がどれに当てはまる可能性があるのか、わかっていただけたかと思います。しかし、「聞いたことがない」「どんな症状が現れるのか知らない」という人も多いはずです。

そもそも、不整脈は安静時の脈拍が毎分100回以上に速くなる「頻脈性不整脈」と、毎分60回未満に遅くなる「徐脈性不整脈」に大きく分類されます。

危険な不整脈

頻脈性不整脈には心房細動、心房粗動、上室性頻拍、心室頻拍、心室細動などがあります。不整脈で最も多い期外収縮も頻脈性不整脈の一種で、異常な電気信号が発生する場所によって上室性期外収縮と心室性期外収縮に分けられます。

頻脈性不整脈のうち「やや危険なタイプ」は、上室性頻拍、心室性期外収縮です。たいていは心配いりませんが、頻繁に起こる場合や症状が強い場合は要注意です。そして「かなり危険なタイプ」は、心房細動、心房粗動、心室頻拍です。

心房細動と心房粗動は、心房の収縮が異常に速くなるもので、毎分250回以上の場合を心房粗動といい、それ以上に速くなって収縮が不規則になった状態が心房細動です。特に心房細動は、発作が長く続くと心房内に血栓(血液の塊)ができ、それが脳に流れて脳梗塞を起こす危険があります。心室頻拍は、脈拍が毎分120回以上になり、心臓がドキンと響く感じが続くこともあります。動悸や胸痛などの症状が起こり、ときには失神する人もいます。心室頻拍が数分以上続くと「最も危険なタイプ」の心室細動に移行し、突然死につながる危険性が高まります。

次に、徐脈性不整脈には、主に洞不全症候群、房室ブロックがあり、両方とも「かなり危険なタイプ」になります。めまいや失神を伴い、最悪の場合は突然死にもつながりかねません。

安全な不整脈

安全な不整脈は、洞性頻脈と上室性期外収縮です。洞性頻脈は激しい運動や過度の緊張が原因で健康な人にも起こるもので、問題ありません。上室性期外収縮も、症状が重くなければ治療は不要です。
(解説:石川恭三)

【脈拍で気づく】心房細動の症状

不整脈のうち、脈が速くなるタイプを「頻脈性不整脈」といい、その代表が「心房細動」です。これが今、50代以上の人に増えています。

心房細動が起こるしくみ

s_心房細動 起こる仕組み.jpg心房細動とは、心房内のあちこちで電気信号が発生し、それが心房内をグルグル旋回して心房が細かく震えるように動く状態のこと。心拍数(心臓の拍動する回数)も毎分100〜200回以上(通常は安静時で60〜80回)と不規則になります。

心房細動が起こると、急に胸のドキドキ(動悸)やモヤモヤ(不快感)、胸苦しさといった症状が現れます。こうした発作的な症状が数分で治まれば大きな問題になりませんが、この状態が長く続くと心原性脳塞栓症という脳梗塞を招く危険性が高まります。心房内の血液がよどんで血栓ができ、これが脳の血管に運ばれてつまると心原性脳塞栓症を引き起こすのです。事実、脳梗塞の3割は心房細動によるものといわれています。

心房細動は、発作性心房細動(発作が短時間で治まるもの)、持続性心房細動(発作が1週間以上続くもの)、永続性心房細動(発作が1年以上続き治療でも治らないもの)に分けられます。通常、発作をくり返すほど薬などの治療効果が低下し、脳梗塞を起こす危険性が高まります。だからこそ、なるべく早い段階で、心房細動に気づくことが肝心です。心房細動の脈拍の特徴を紹介しましょう。

心房細動の脈拍グラフ

s_心房細動 脈拍グラフ.jpg心房細動になりやすいのは、心筋症(心臓の筋肉の働きが悪くなる病気)や心臓弁膜症(心臓の弁の働きが悪くなる病気)などの心臓病を持っている人、高血圧や糖尿病、脳梗塞の病歴のある人で、高齢者ほど発症の危険性が高まります。健康な人でも、睡眠不足や過労、過度の飲酒、喫煙などが要因になります。以上のことに心当たりのある人は、自覚症状がなくても病院での検査が必要です。

頻脈性不整脈には、そのほかに上室性頻拍、心房粗動、心室頻拍などがあります。上室性頻拍とは、心房や房室結節から生じた電気信号の旋回によって起こり、心拍数は毎分150〜200回にもなります。健康な人でも、寝不足やストレス、喫煙などが要因で発症することがあります。動悸や胸苦しさを伴うことがありますが、通常はすぐに治まります。

心房粗動は、心房内で規則的な電気信号の旋回が生じ、心拍数が毎分150〜300回と速くなり、動悸などを自覚することがあります。心臓病を持つ人に多く、健康な人ではまず見られません。心房粗動は放置すると、心不全の原因になることもあります。
(解説:長山雅俊)

【脈拍で気づく】期外収縮の症状

期外収縮は、不整脈の中で最も多く、年齢を重ねることによってほとんどの人に起こります。大半は心配いりませんが、症状によっては放置してはいけない場合もあります。

期外収縮が起こるしくみ

s_期外収縮 起こる仕組み.jpg正常な心臓では、洞結節から発信される電気信号によって規則的な拍動をくり返します。ところが期外収縮の場合、洞結節から電気信号が出るのを待たずに、洞結節以外の部位が勝手に電気信号を作って心臓を動かしてしまいます。つまり、早めのタイミングで電気信号が伝わるため、拍動のリズムが乱れるのです。

期外収縮が起こると、心臓がドキンとする、脈が飛ぶ・抜けるといった感覚があります。これは、心臓内の心房や心室が通常よりも速く収縮して、正常な心拍よりも早めのタイミングで余分な心拍が生じるためです。期外収縮の脈拍の特徴を紹介しましょう。

期外収縮の脈拍グラフ

s_期外収縮 脈拍グラフ.jpg

期外収縮は、異常な電気信号が作られる場所によって、いくつかに分類されます。異常な電気信号を心房から発するものを「心房性期外収縮」、心臓の中心部にある房室接合部から発するものを「房室接合部性期外収縮」といい、この二つを合わせて「上室性期外収縮」と呼びます。上室性期外収縮は、異常な電気信号によって通常より早いタイミングで心房の収縮が起こりますが、多くの場合、自覚症状はありません。

期外収縮にはもう一つ、心室で異常な電気信号が発生する「心室性期外収縮」があります。これは、血液をためて全身に送り出す心室が早いタイミングで収縮するため、血液を十分に送り出せません。次の拍動は通常よりも多くの血液がたまってから送り出されるので、脈が一瞬飛んだり、ドキンという拍動を強く感じたりするのです。

心室性期外収縮は、放置すると危険な場合があります。まず、狭心症などの心臓病がある人は、心室性期外収縮を放置すると危険な不整脈の心室頻拍や心室細動につながりやすいので要注意です。
また、期外収縮が連発すると、心臓から送り出される血液量が減り、脳が一時的に血流不足になって、めまいや失神が起こります。めまいに加え発作が連発する場合には心室頻拍に進んでいる疑いがあるので、すぐに治療を受けてください。

期外収縮は、加齢をはじめ睡眠不足、過労、喫煙などの悪い生活習慣やストレスによって起こります。したがって、生活習慣の見直しで多くは改善できますが、心室性が疑われるときは治療が必要かどうか、くわしく調べてもらうことが重要です。
(解説:長山雅俊)

【脈拍で気づく】徐脈性不整脈の症状

不整脈のうち、脈拍が遅くなり、心拍数が毎分60回よりも少なくなってしまうタイプを「徐脈性不整脈」といいます。徐脈性不整脈の代表は「洞不全症候群」と「房室ブロック」の二つです。

洞不全症候群が起こるしくみ

s_洞不全症候群が起こるしくみ.jpg洞不全症候群は、電気信号を発する洞結節で一定時間、電気信号が出なくなったり伝わる速さが遅くなったりする症状の総称です。具体的には、洞結節から電気信号が出なくなる「洞停止」、電気信号が著しく遅くなる「洞性徐脈」、電気信号が心房に伝わらなくなる「洞房ブロック」の三つがあります。

洞結節は、自律神経(意志とは無関係に内臓や血管の働きを支配する神経)の影響を受けて心拍数を調節します。これが、なんらかの原因で洞結節に異常が起こると心拍数が減ったり途絶えたりすることがあるのです。心拍数が毎分20〜30回にまで減って脳の血流が途絶えると、めまいや失神を起こすこともあります。

息切れやだるさなどの症状を自覚しない人もいますが、自覚しなくても心臓停止が3秒以上続くこともあります。そうした人や、めまい・失神などが現れる人は、薬物治療やペースメーカー治療が必要です。洞不全症候群の脈拍の特徴を紹介しましょう。

洞不全症候群の脈拍グラフ

s_洞不全症候群 脈拍グラフ.jpg洞不全症候群の要因で最も多いのは、年を重ねることによって洞結節や心房に電気信号が伝わりにくくなる伝導障害です。そのほかにも、高血圧や狭心症などの病気やその薬剤によって起こることがあります。

続いて、房室ブロックは、洞結節から発生した電気信号が心房から心室へ伝わるまでの途中で、伝導が遅れたり途絶えたりする状態。そのため、心拍数が減少します。房室ブロックの症状は、めまい、疲労感などさまざまで、ひどい場合は失神することもあります。多くの場合、房室ブロックは心筋や突発性心筋症などの心臓病によって起こります。

ところで、徐脈性不整脈は運動不足や睡眠不足などの悪い生活習慣でも起こるため、生活習慣の改善が重要です。千葉大学医学部の調査(運動負荷試験)によると、軽い運動を続けた洞不全症候群の患者さんグループの遅い脈拍が全体的に速くなったと報告されています。

そこで、ウォーキングや「かかと上げ」という運動がおすすめです。かかと上げは、立った状態で、かかとを上げ下げして「第二の心臓」といわれるふくらはぎの筋肉に負荷をかけます。こうすることで、全身の血流が促され、弱った心臓の働きもよくなると考えられます。
(解説:石川恭三)

【脈拍で気づく】心室細動の症状

心室は、全身に血液を送り出すポンプのような役割を担っています。

心室頻拍が起こるしくみ

s_心室頻拍 起こるしくみ.jpg心室に突然、異常な電気的な刺激が連発し、心室が著しい速さで収縮するのが「心室頻拍」です。心拍数は毎分150〜250回にもなることがあります。これは主に、心室性期外収縮が引き金になって起こるもので、心室性期外収縮が3回以上続くと心室頻拍と診断されます。

症状としては、息切れに加え、胸痛や、血圧低下などがあります。血圧低下でめまいや失神が起こることもあり、この場合は要注意です。心室頻拍の脈拍の特徴を紹介しましょう。

心室頻拍の脈拍グラフ

s_期外収縮 脈拍グラフ.jpgそして、発作的な症状が自然にすぐ治まるものを「非持続性心室頻拍」といい、この場合、狭心症などの心臓病がなければ、治療の必要はありません。しかし、発作的な症状が30秒以上続くものを「持続性心室頻拍」といい、この場合、最も危険な「心室細動」に移行することがあります。心室細動への移行が疑われたときは、突然死につながりかねないので、緊急の治療が必要です。

この心室細動は、突然死に直結する最も危険な不整脈で、心室頻拍と並んで「致死性不整脈」ともいわれています。正常な心臓では、洞結節から発生する規則的な電気信号によってリズミカルに拍動しています。ところが心室細動が起こると、心室内に非常に速くて不規則な電気的刺激が無数に発生して旋回し、心室が細かく震えてけいれん状態になります。

このとき、心臓から血液が送り出されなくなるため、5〜6秒で意識を失い、数分で死に至ります。事実、心室細動が起こった患者さんの多くは、病院に到着する前に亡くなることが多いのです。心室細動のほとんどは、心室頻拍をはじめとした不整脈や、狭心症・心筋梗塞といった心臓病の発作によって起こります。

心筋を発症した人の約1割に、数日以内に心室細動が起こるといわれています。安全な不整脈といわれる期外収縮でも心室性期外収縮の場合、非常に危険な心室細動の引き金になることがあるのです。また、健康そうに見える人でも突然、激しい運動を行っているときなどに心室細動が起こることがあります。

心室頻拍や心室細動の発作が起こると、意識がもうろうとした直後に失神することが多いので、周囲にいる人はすぐに救急車を呼ぶとともに、AED(自動体外式徐細動器)などによる緊急処置が必要になります。
(解説:長山雅俊)

記事にあるセルフケア情報は安全性に配慮していますが、万が一体調が悪化する場合はすぐに中止して医師にご相談ください。また、効果効能を保証するものではありません。

写真/© Fotolia ©カラダネ

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