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【糖尿病腎症の食事対策】高糖質食・高温調理を避けて「AGE」を減らすのが重要
牧田善二
AGEは、Advanced Gly-cation Endproductという英語の頭文字を取ったもので、日本語では「終末糖化産物」と翻訳されます。血液中に過剰になった糖が変質をくり返していった結果、産出される物質の総称で、単に「糖化物質」と呼ばれることもあります。
糖尿病腎症とAGEにはどんな関係があるのでしょうか。AGE牧田クリニック院長の牧田善二先生に話をお聞きしました。
糖尿病腎症の方は、専門医の治療を受けてください。おそらく、専門医から食事の指導があるかと思いますが、その指導を守りつつ記事も参考にしてみてください。
AGEが生成されるしくみ
糖尿病腎症になりやすいのは、高血糖の人や、血糖値が食後に急上昇する「血糖スパイク」を起こす人だけではありません。現在は血糖値が落ち着いているものの、過去に長期間、高血糖が続いていたという人も注意が必要です。そこには、血糖値とは別の原因が関係しています。その原因が、「AGE」です。
AGEがどのように糖尿病腎症を引き起こすのか、その成り立ちとともに説明します。
①血液中で過剰になり、行き場を失った「糖」は、血管壁(血管の周囲を構成する組織)の主成分であるコラーゲン線維に付着します。
↓
②そのうち、「アマドリ化合物」という物質に変質します。
↓
③このアマドリ化合物と他のコラーゲン線維に付着した糖とが結合し、「AGE」が生まれます。
AGEができたコラーゲン線維からは、本来備えている柔軟性や弾力が失われてしまいます。そのため、AGEが増えた血管は劣化してもろく、動脈硬化やつまりが起こりやすくなってしまうのです。
AGEは体内に10年以上留まり、腎症を引き起こす
AGEが発生した部位に炎症が引き起こされることもわかってきました。AGEは人体にとって異物です。そのため、血管壁にAGEができると白血球の一種のマクロファージ(貪食細胞)が捕食して排除しようとするのですが、そのさいに炎症が起こります。血管壁でAGEが大量に作られて、炎症が慢性的に続くと、劣化してもろくなった血管がさらに傷んでしまうのです。
そして、この炎症が腎臓で起こると、毛細血管の集合体で血液から老廃物をこし取る糸球体が障害されます。糸球体のフィルター(基底膜)がザルの目のように粗くなり、本来漏れ出ないはずのたんぱく質がもれ出ていきます。これが、糖尿病腎症が起こるしくみです。AGEがやっかいなのは、現在の血糖値が高い人だけではなく、過去に長期間、高血糖が続いていた人も要注意な点です。
AGEは高血糖状態が続いている間に体内に蓄積されていき、一度たまると、10年以上体内に留まります。そのため、現在は血糖値が安定していても、過去の高血糖が影響して糖尿病腎症に陥ってしまう人がいるのです。
私は、このAGEを減らすことが糖尿病腎症を防ぐ条件だと考えています。そのため、当院では、患者さんの体内にどれだけAGEが蓄積されているかを調べる検査を行っています。
初診時に、空腹時血糖値、尿にもれ出たたんぱく質の量を表す尿アルブミン値(単位はミリグラム/gCr。基準値は30以下)と併せて、血中AGE量、皮膚AGE量を検査して、糖尿病腎症の危険度などを総合的に判断し、治療するのです。当院では、特に次の条件に当てはまる人は、AGE減らしが必要だと考えています。
❶空腹時血糖値が110mg/dL以上でブドウ糖負荷試験で糖尿病と診断された人
❷尿アルブミン値が18以上の人
もちろん、合併症の予防という点で、AGE減らしは糖尿病を患うすべての人に行ってほしいと考えていますが、以上の条件を満たす人は、特に欠かせないでしょう。
AGEは毎日の食事からも取り込まれている
AGEの増加を防ぐ基本は血糖値を下げることですが、それだけでは不十分です。AGEは体内で発生するだけでなく、ふだん食べている食品からも、体内に取り込まれていくからです。
なお、食品から摂取したAGEで、体内に吸収されるのは約10%です。そして、そのうち、尿などから排出されなかった6〜7%が体内に留まりつづけます。これは、一見微量に思えるかもしれません。
しかし、AGEには10年以上体内に留まる性質があるので、知らずしらずのうちに体内に蓄積されて腎臓の毛細血管を蝕み、糖尿病腎症を招く危険を高めるのです。実際、私が行ったマウス実験でも、口からとったAGEが糖尿病腎症を引き起こすことを確認しています
食事でAGEをとると血液中のAGEが増えることは、海外のいくつかの研究でわかっています。そのうちの一つを紹介しましょう。研究では、24人を2グループに分け、一方にはAGEを大量に含む食事、もう一方にはAGEを少量しか含まない食事をそれぞれ6週間とってもらいました。
その後、両グループの血液中のAGE量を測ると、高AGE食をとったグループの血中AGE濃度は、低AGE食をとったグループの約2倍に増えていたのです。
AGEを増やさない食生活の極意
AGEの量は、食品によって大きく差があります。高AGE食品の見分け方は簡単で、高温加熱で調理された食品であることが特徴です。焼く・炒める・揚げるなどの方法で調理すると、食品中のたんぱく質と糖分がメイラード反応(褐色物質を生み出す反応)を起こし、AGE量が爆発的に増加するとわかっています。
AGEは高温加熱で増加する
鶏ムネ肉を例にあげると、生の場合(90グラム中)は692KU(KUはAGE量の単位)であるのに対し、15分間焼いた場合は5245KU、8分間揚げた場合は6651KUです。一方、蒸す、ゆでる、煮るなど比較的低い温度で調理すると、AGEはそれほど増加しません。前述の鶏ムネ肉を1時間煮た場合は1011KU程度です。
また、当然ながら食品を非加熱で食べれば、AGEの摂取量を最小限に抑えられます。野菜ならば、サラダやマリネのほか、温野菜やピクルス漬けなどにするといいでしょう。
魚や肉も刺身やカルパッチョ、冷しゃぶなど、非加熱や低温加熱で食べられるメニューを食生活の主軸にすることをおすすめします。
記事にあるセルフケア情報は安全性に配慮していますが、万が一体調が悪化する場合はすぐに中止して医師にご相談ください。また、効果効能を保証するものではありません。
写真/© Fotolia ©カラダネ
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