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朝カレーは認知症やがんの予防、ダイエットに役立つ可能性がある!?(大学教授解説) 実は冷や飯がおすすめ

解説 日本薬科大学教授
丁 宗鐵

日本の国民食というと和食はもちろんですが、今や「カレーライス」といっても間違いではないでしょう。

最初に申し上げますが、カレーはただの食事ではなく薬膳食です。健康維持に役立つ可能性がある実に素晴らしい食事なのです。とはいえカレーがどう健康にいいのか、くわしくご存じない方もいらっしゃるでしょう。

薬学の著名な専門家である丁宗鐵(ていむねてつ)先生にお話をお聞きしたところ、カレーには驚くべき健康作用が期待できるかも?とわかってきました。

(追記)
カレーさえ食べれば誰でも確実に病気が防げたり健康になれたりするわけではありません。
あくまでも、健康維持に役立つ可能性があるということです。毎日、適度な運動や規則正しい食生活の中で、カレーライスを食事メニューの一つとして楽しんで食べてみてください。

カレーが薬膳食なのはスパイスがたっぷりのため

カレーほど、日本人が大好きな食事はないと思います。
とはいえ、もともとはインド文化圏の食べ物。現地では「カリー」や「マサラ」と呼ばれ、複数のスパイス(香辛料)を使った汁けのある煮込み料理全般を指しています。
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写真のようなスパイスがカレーにはたっぷり!
スパイスは、本来はインドの伝統医学(アーユルヴェーダ)で使う「自然の薬草」でもあることから、カリーは味を楽しむだけでなく、病気を予防・治療するための薬膳食的な役割を果たしているのです。

日本では、このカリーをもとに独自の進化を遂げて「カレー」と呼ばれるようになり、古くから親しまれています。

カレーが最初に食べられたのは戦場?

カレーが日本全国に広まったのは、明治時代の日露戦争の最中、横須賀の海軍が兵士の食事にカレーライスを採用したのがきっかけといわれています。
カレーライスは一皿で米や野菜、肉が効率よく摂取でき、小麦粉でとろみをつけているため、波で揺れる戦艦の上でもこぼさずに立ったまま食べられることも採用の理由だったといいます。
当時のレシピにも、人参・玉ねぎ・ジャガイモ・牛肉(または鶏肉)が記載されていますが、現在の私たちはトマトや季節の野菜なども加えて、より栄養バランスのいいカレーを食べているといえます。

私は漢方医学を長年研究し、それをもとに診療にも取り組んできましたが、カレーに使われるスパイスと漢方の生薬には共通するものが数多くあります。 生薬とは、動植物などをそのままか、一部を加工して作る薬のこと。

例えば、スパイスのターメリックは生薬でいう鬱金(ウコン)、シナモンは桂皮(けいひ)、クローブは丁子(ちょうし)と同じです。インドの伝統医学も漢方医学も、体調や病気に合わせてこれらの種類と配合を変えて薬膳食として食べるわけです。
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漢方で使う生薬とスパイスは、考え方がとても似ている
漢方薬もいくつかの生薬を配合して作ります。そしてそれらの相乗効果によって、穏やかに体調を改善させます。この考え方はカレーも全く同じなため、薬食同源のいわゆる薬膳食といえるのです。

なお、インド文化圏のカリーでブレンドされるスパイスは5種類ほどですが、日本のカレールウやカレー粉には15〜30種類のスパイスが含まれています。

これだけぜいたくにスパイスを使った日本のカレーは、ある意味、インドのカリー以上に優れた薬膳食であるともいえるのかもしれません。

月1回食べると認知症の発症率が最大5割減?

では、カレーはいったいどのような働きが期待できるのでしょうか。まず、最近注目を浴びているのが脳への働きです。

シンガポール国立大学の研究チームは、60〜93歳の1010人(平均68.9歳)を対象に、アンケート調査と認知症のテストを行っています。
その結果、カレーを月に1回以上食べるグループは、半年に1回未満のグループに比べて認知機能や記憶力が高く、認知症になるリスクも50%ほど低下していました。

なお、カレーを食べるのは月に1回未満で半年に1回以上のグループは、半年に1回未満のグループに比べて認知症のリスクが約40%低下していたとのことです。

カレーを食べたら脳の血流量が大幅に増えた

私が行った試験でも、注目すべき結果が出ています。その試験では25〜39歳の女性6人に、カレー(市販のルウを溶いたもの)とおかゆをそれぞれ別の日にとってもらい、脳の血流量を比べました。
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カレーの実験を行なった丁宗鐵先生
すると、カレーを食べた場合は脳の血流量はおかゆに比べて大幅に増えて、その増加率は約2〜4%に上ったまま2時間以上も持続したのです。
これは、血管拡張薬であるニトログリセリン2錠を服用したときとほぼ同程度の増加率で、カレーには薬並みの血流アップ作用が備わっているとわかりました。

カレーに多いウコンが脳の健康維持に役立つ?

これらの働きは、おそらくはスパイスのターメリック、すなわちウコンが関係しているのではないでしょうか。
ウコンは、市販のカレー粉のほぼすべてに含まれており、カレーのスパイスの約40%を占めています。大半のカレーが黄色なのは、ウコンの「クルクミン」という黄色い色素成分が入っているためです。

このクルクミンが、アルツハイマー病の原因物質と考えられる「アミロイド」というたんぱく質の発生を抑えるとともに、発生後も分解する働きがあることを、金沢大学大学院の山田正仁教授らが実証しています。

また、オーストラリアのモナシュ大学で行われた試験では、高血糖の60歳以上の男女48人に、朝食といっしょにウコン1グラムをとってもらいました。
その結果、会話や読み書き、計算で使われる脳の一時記憶(ワーキングメモリ)の能力が改善し、その状態が6時間以上にわたって続いたと報告されています。

以上の点からも、カレーが認知症の予防に何かしら役立つことが推測できるでしょう。

インドではがんの発症率が主要国で最低?

カレーはがんの予防にも役立つ可能性があります。
カレーを日常的に食べるインドでは、世界の主要40カ国中、10万人当たりのガン発症率が最も少ないというデータがあります。もちろん、平均寿命や統計のとり方が国によって違うため、実際は順位に多少の変動がありますが、ガンの発症率がかなり低いことは確かなようです。
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インドで食べられている一般的なカレー
これも、やはりカレーの中のウコンが関係しているのではないでしょうか。興味深い試験があります。

クルクミンで腫瘍の発生率も発生数も減った!

千葉科学大学の木島孝夫教授らの研究チームが次のような試験を行いました。
マウス(実験用のネズミ)を2つのグループに分けて、一方のグループの肌だけにウコンの色素成分であるクルクミンを塗っています。さらに、両方のグループの肌に発ガン成分と化学物質を塗り、この作業をくり返してクルクミンを塗った場合と塗らなかった場合とで比べました。

すると10週後、クルクミンを塗らなかったグループは、すべてのマウスに腫瘍が発生していましたが、クルクミンを塗ったグループは腫瘍の発生率が20〜30%に抑えられました。
20週後も腫瘍の発生率は80%にとどまり、クルクミンには発ガンを遅らせる可能性があると確かめられたのです。

腫瘍の発生数についても、クルクミンを塗らなかったグループは腫瘍が9〜10個できていましたが、クルクミンを塗ったグループでは平均4個だったそうです。

クルクミンを口からとった場合は?
木島教授は、マウスにクルクミンを口からとらせた場合の発ガン抑制作用についても調べています。その結果、クルクミンをとっていないグループの発ガン率は20週後に100%、実験開始時にだけとらせたグループは約80%、実験を通してとりつづけたグループでは50%程度に抑えられていました。

糖質を気にするなら冷やご飯がおすすめ

さて、カレーライスを食べるとき糖質のとりすぎを気にする人もいるかもしれません。そんなあなたはは、温かいごはんではなく、ぜひ冷やご飯で食べてみてはいかがでしょうか。
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これは炊いた白米が冷える過程で、でんぷんが変性して難消化性でんぷん(レジスタントスターチ)に変わります。すると、食物繊維のように小腸では吸収されずに食後の血糖値の上昇を抑えられる可能性があります。
食後高血糖は糖尿病はもちろん、がんなどを招く危険も高めるとされており、冷やご飯ならその危険を少しは減らすことができるはずです。

朝カレーで15キロ減!140mmHgあった高血圧が正常化

いかがでしたでしょうか。
カレーにはすごい可能性が秘められています。私自身もカレーが大好きで、実は約20年にわたって朝カレーを週に1〜2度食べています。

夜にカレーを食べると、神経が興奮して寝つけなくなったのが朝カレーを始めた理由なのですが、今では朝カレーを食べると早朝からスッキリした気分になるので気に入っています。
そして、体重は15キロやせました。高血圧で140mmHg(正常は130mmHg未満)ありましたが、今は100mmHg台に落ち着いています。

みなさんにも朝カレーをおすすめします。記事で述べたように認知症やがんの予防にも役立つはずですし、朝にスパイスをとることで体が目覚めて体質がよくなると考えられます。

もちろん、カレーは薬ではないので食べれば何か病気が治るわけではありません。健康維持の一環として、みなさんもぜひ明日の朝から、週一ペースで朝カレーを試してみませんか?

記事にあるセルフケア情報は安全性に配慮していますが、万が一体調が悪化する場合はすぐに中止して医師にご相談ください。また、効果効能を保証するものではありません。

写真/© Fotolia ©カラダネ

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