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【ひざ痛を運動で改善】ひざの痛みの重大原因は「体のゆがみ」!? 簡単運動「骨盤操体」を医師が直伝
鹿島田忠史
「変形性膝関節症」でひざに痛みが起こるのは、軟骨のすり減りが原因とされています。軟骨のすり減り自体は、O脚やX脚、足の筋肉の衰え、遺伝的なひざの構造など、さまざまな原因によって起こります。
では、軟骨のすり減り度合いが大きいほど、ひざ痛が悪化するかというとそうではないようです。
実際、軟骨が少ししかすり減っていないのに痛む人もいれば、逆に、高齢で軟骨がなくなるくらいすり減っていても、痛みがほとんどない人もいるとされます。
痛みの根本原因はどこにあるのか…それが「体のゆがみ」だと誠快醫院院長の鹿島田忠史(かしまだ・ただし)先生は話します。
体のゆがみとひざ痛の関係、さらには体のゆがみを正す方法について話をお聞きしました。
ひざ痛に悩んでいる方は、医師の治療を受けることを忘れないでください。
ひざ痛を改善に導く操体「骨盤操体」のやり方
操体法は、医師の(故)橋本敬三先生が考案し、80年以上続くセルフケア法です。くわしくは後述しますが、操体法の重要な理念は、
【自分の体にとって「快」か「不快」かを判断して、体を動かせばいい。「気持ちいいことは体にいい」】
です。つまり、操体法では事前に痛みのない方向に体を動かすかをチェックすることが大切になります。これから紹介する「骨盤操体」でも同様になります。
骨盤操体は、骨盤にある仙腸関節のゆがみを正す目的で行います。
骨盤操体は、❶前後方向のゆがみ正し、❷左右回し方向のゆがみ正し、❸左右倒し方向のゆがみ正し、この3つのステップからなります。
骨盤操体|❶前後方向のゆがみ正し
最初に、「前方向」と「後ろ方向」の体(体軸)のゆがみをチェックします。
●前方向
あおむけで寝て、膝を立てた状態から足を浮かす
●後ろ方向
あおむけで寝て、膝を立てた状態から爪先とお尻を上げる
前方向と後ろ方向の2つの動きを試して、「気持ちよかった」方の動きのみを行う。両者に違いがないと感じられた場合は、前後方向の体のゆがみはないと判断されるので、前後方向の骨盤操体を行う必要はありません。
それでは、前方向が気持ちよかった人の骨盤操体のやり方から紹介します。
❶あおむけになって全身の力を抜き、顔をまっすぐ上に向ける。両腕は体から少し離して床に置く。両ひざを立てて軽く曲げ、両足先は腰幅くらいに開く。
❷両足先をやや開いたまま、両足を少し浮かせる。膝の角度をなるべく固定しながら、その体勢を5秒間保つ。
❸両足を少し浮かせた❷の状態から一気に全身の力を抜き、腰の筋肉の緊張をゆるませて、足裏をペタンと床に落とす。そのあと、ため息をつくように大きく2回、深呼吸をする。
※❶〜❸を2回くり返す。
続いて、後ろ方向が気持ちよかった人の骨盤操体のやり方を紹介します。
❶あおむけになって全身の力を抜き、顔をまっすぐ上に向ける。両腕は体から少し離して床に置く。両ひざを立てて軽く曲げ、両足先は腰幅くらいに開く。
❷爪先を反らし、お尻と床の間にすきまを作るように、お尻を浮かせる。その体勢を5秒間保つ。
❸お尻を浮かせた❷の状態から一気に全身の力を抜き、脱力と同時にお尻と両足の足裏を床にペタンと着ける。そのあと、ため息をつくように大きく2回、深呼吸をする。
※❶〜❸を2回くり返す。
骨盤操体|❷左右回し方向のゆがみ正し
最初に、「左回し方向」と「右回し方向」のゆがみをチェックします。
●左回し方向
あおむけで寝て、膝を立てた状態から両膝を左に倒す
●右回し方向
あおむけで寝て、膝を立てた状態から両膝を右に倒す
左回し方向と右回し方向の2つの動きを試して、「気持ちよかった」方の動きのみを行う。両者に違いがないと感じられた場合は、前後方向の体のゆがみはないと判断されるので、左右回し方向の骨盤操体を行う必要はありません。
例として左回し方向が気持ちよかった人の骨盤操体のやり方を紹介します。
❶あおむけになって全身の力を抜き、顔をまっすぐ上に向ける。両腕は体から少し離して床に置く。両膝を立てて、膝の内側と足先をくっつける。
❷膝の内側と足先をくっつけ、両肩と右足を床に着けたまま、お尻の右側を上げて両膝を左側に倒す。その体勢を5秒間保つ。
❸両ひざを左側に倒した❷の状態から一気に全身の力を抜き、脱力と同時に両足をダランとさせる。そのあと、ため息をつくように大きく2回、深呼吸する。
※❶〜❸を2回くり返す。
骨盤操体|❸左右倒し方向のゆがみ正し
最初に、「左倒し方向」と「右倒し方向」のゆがみをチェックします。
●左倒し方向
あおむけで寝た状態から、左足の爪先を軽く反らして、かかとを前に突き出すように伸ばす
●右倒し方向
あおむけで寝た状態から、右足の爪先を軽く反らして、かかとを前に突き出すように伸ばす
左倒し方向と右倒し方向の2つの動きを試して、「気持ちよかった」方の動きのみを行う。両者に違いがないと感じられた場合は、左右倒し方向の体のゆがみはないと判断されるので、左右倒し方向の骨盤操体を行う必要はありません。
例として、左倒し方向が気持ちよかった人の骨盤操体のやり方を紹介します。
❶あおむけになって全身の力を抜き、顔をまっすぐ上に向ける。両腕は体から少し離して床に置き、両ひざを曲げずにまっすぐ伸ばす。両足先は腰幅程度に開く。
❷左の爪先を軽く反らし、左の股関節から左足を伸ばすようなイメージで、左のかかとを突き出す。その体勢を5秒間保つ。
❸左足のかかとを突き出した❷の状態から一気に全身の力を抜き、脱力と同時に両足もダランとさせる。そのあと、ため息をつくように大きく2回、深呼吸する。
※❶〜❸を2回くり返す。
ひざ痛の重大原因「体のゆがみ」を招きやすい3部位
体軸がゆがむと、全身の痛みを招く
みなさん、ひざを前後・左右に動かしてしてみてください。誰にも動かしやすい方向があるのではないかと思います。そこで気づくと思いますが、動かしやすいということは、動かしにくい方向もあるということです。このことは、ひざのどこかにゆがみがあることを意味します。
これを私は痛みの根本原因と考え、「体軸のゆがみ」と呼んでいます。
体軸とは、全身を支えている背骨と骨盤のバランスを保つために必要な体の中心軸で、とても大切なものです。体軸でバランスを取ることで、私たちは、膝はもちろん、全身を前後左右に自在に曲げたり、ねじったりすることができるのです。
では、そもそもなぜ体軸がゆがむのでしょうか。私たちは、知らず知らずに偏った体の使い方をしており、それが体軸のゆがみを招いているのです。例えば、スマートフォンやパソコンの画面をのぞき込むネコ背の姿勢を長時間取っていたり、イスに腰かけたときに足を組んだり、重い荷物をいつも同じ側の肩や手で持っていたりという姿勢や動作です。
こうした姿勢や動作は、体軸の要となる仙骨(骨盤の中央の部分)の仙腸関節を前後・左右回し方向、もしくは左右倒し方向に傾かせる原因となります。骨盤が傾いたまま固定されてしまうと、背骨全体に悪影響を及ぼします。
骨盤・腰椎(背骨の腰の部分)、胸椎(背骨の胸の部分)・頸椎(背骨の首の部分)のまわりの筋肉に負担がかかり、しだいに収縮してこわばり、背骨を支える力が不均衡になります。その結果、体軸がゆがんで、ひざをはじめとする関節の痛みやしびれが慢性化するのです。
体軸のゆがみが生じやすい3大部位
特にゆがみやすいのが、「体軸」に位置している背骨と骨盤です。その中でも、以下の3つがゆがみやすい3大部位になります。
❶腰下の「仙腸関節(せんちょうかんせつ)」
❷腰上の「胸椎(きょうつい)」
❸首上の「頸椎(けいつい)」
ひざ痛をはじめ、全身の激痛やしびれ、不快症状の多くは、この3つの部位のゆがみによって起こります。ですから、何よりもまず、この3つのゆがみを正すのが最善です。今回の「ひざ痛」に限っていえば、❶の「仙腸関節」を第一優先でゆがみを正す必要があります。そして、仙腸関節のゆがみを正す方法が「骨盤操体」になります。
仙腸関節がゆがむと…
骨盤中央の仙骨と左右の腸骨を結ぶ仙腸関節は、背骨を下から支える土台で、常に大きな負荷がかかり、ゆがみが生じやすい部位です。
腰下の動きも担っている仙腸関節にゆがみが生じることで、ひざ痛や腰痛といった足腰の痛みやしびれを招く元凶になります。
ひざ痛の人に骨盤操体がなぜいいのか
骨盤操体は、3つのステップからなる運動療法で、仙腸関節に生じた前後・左右回し・左右倒しの3方向のゆがみを的確に改善できます。3方向ごとにゆがみチェックをしたあとに、痛みを伴わずに動かせる「気持ちよかった」ほうの改善運動だけを、合計で3分程度行えばいいのです。
骨盤操体をしばらく続けると、異常に収縮してこわばっていた腰周辺の筋肉がゆるみます。すると、仙腸関節のゆがみが改善して、神経や血管、リンパ管が圧迫から解放され、さまざまな不快症状が快方に向かうのです。
当院では、操体法の創始者である橋本敬三先生の操体法を進化させた、ゆがみ取り操体(正式にはSPAT【スパット】療法という)を患者さんに施術しています。その作用は高く、腰痛を訴える患者さん37名の治療の経過を調べたところ、実に、86%に当たる32名の人が、足腰の痛みやしびれ、歩行障害の改善作用を実感したのです。
80年以上も続く【操体法】の歴史
「操体法」ですが、80年以上も前から現在に至るまで、医師や治療家の間で脈々と受け継がれています。操体法の創始者・橋本敬三先生のお孫さんである、橋本クリニック院長の医師・橋本雄二先生は、操体法について、次のように述べています。
「操体法は、ただの運動ではありません。快・不快の感覚にしたがって心身のバランスを自然な状態に戻し、快適に暮らせることを目指した健康思想なのです、私たちは、操体法を実践することで自分が健康になるだけでなく、周囲の環境もよくなると考えます。
操体法では、息・食・動・想・環という五つの基本原則が互いに関係し合い、補い合うと考えます。この5つの原則をうまく調整すれば、私たちの体は本来のバランスを取り戻せるのです」
「自分の体にとって快か不快かを判断して、体を動かせばいい」「気持いいことは体にいい」という操体法の重要な理念が受け継がれ、現在でも多くの人たちが全国各地で操体法を実践しています。
その評判は国内だけにとどまりません。「SOTAI」の名前で、日本から遠く離れた海外にまでその名をとどろかせています(下の写真は橋本敬三先生の操体指導のようす)。
記事にあるセルフケア情報は安全性に配慮していますが、万が一体調が悪化する場合はすぐに中止して医師にご相談ください。また、効果効能を保証するものではありません。
写真/© Fotolia ©カラダネ
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