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認知症予防運動【しりとりステップ】で脳の記憶センター「海馬」の萎縮を防ごう
阿部 聡
「認知症の予防に運動が有効」もうこのことは、世界的にも常識になりつつあるようです。
では、いったいどんな運動をすればいいのか……カラダネでは以前にも運動法を紹介しました。この記事をお読みになったあと、一番下の関連記事をお読みください。
今回紹介するのはステップ運動(踏み台昇降)です。踏み台がなくてもできるのでご安心を。
脳専門医の阿部聡先生にお聞きしました。
【しりとりステップ】のやり方
早速実践していただきたいので、やり方から紹介します。
【用意するもの】
踏み台(ステップ台。ない人は自宅の階段か玄関の上がり框を利用しても可)
足が衰えて踏み台昇降が危険な人は用意しなくてOK。
【やり方1】踏み台を活用
踏み台に昇ったり降りたりしながら、1人でしりとりをする。
踏み台には❶右足を乗せる→❷左足を乗せる→❸右足を下ろす→❹左足を下ろすの順番で行ってください。
【やり方2】踏み台がない人
その場で足ふみしながら、1人でしりとりをする。
しりとりはなんでもかまいません。(例)とけい→イルカ→カメラ→ラッコ→こども……
2つのやり方とも、足を上げたり下ろしたりしながら言葉を発してしりとりをするのが基本ですが、難しい場合は2〜3動作ごとに1つの言葉を出すなど、やりやすい方法で行いましょう。
【注意点】
●1日1回、10〜15分を目安に行う。
●最後に「ん」がつく言葉をいっても、運動はやめずに、再び別の言葉からしりとりを続ける。
●途中で言葉が頭に浮かばないときも運動は続けて、言葉が出てきたら再開する。
●やりすぎないこと。無理は禁物。
しりとりステップがなぜいいのか
「買い物にきたのに何を買いにきたのか忘れてしまった」
「テレビに出ている芸能人の名前がすんなり出てこない」
物忘れが多くなると、自分が将来、認知症になってしまうのではないかと不安になる人も多いことでしょう。そうした人は、ぜひ脳を刺激するのに役立つ運動を行い、物忘れや認知症を防いでほしいと思います。
最も簡単に取り組める運動法は、やはりウォーキングなどの有酸素運動ではないでしょうか。
有酸素運動を行うと、記憶をつかさどる脳の海馬の萎縮が食い止められ、認知機能が高まると報告されています。また、脳の神経細胞の成長を促す「BDNF」(脳由来栄養因子)を増やし、脳を活性化させる作用も期待できます。
そこで、脳を刺激して手軽に室内で行える有酸素運動としておすすめなのが「しりとりステップ」というわけです。
デュアルタスクの作用が大きい
しりとりステップは、有酸素運動によって海馬の萎縮を防いだり脳神経の成長を促したりできるだけでなく、しりとりと、踏み台昇降(踏み台がない人は、その場足ふみ)を同時に行うことで脳を刺激するデュアルタスクの作用も期待できます。
デュアルタスクとは、日本語でいうと二重課題のこと。簡単にいうと、何か作業をしながら別の作業を同時に行うことをいいます。例えば、料理などは「段取りを考えながら調理をする」など、デュアルタスクの代表的なものといっても過言ではないでしょう。
このしりとりステップは、しりとりを脳が考えながら体を動かすという2つの課題をこなすことから、脳の血流が大幅にアップして脳の前頭前野を活性化させると考えられるのではないでしょうか。
実践した人は記憶力が向上⁉︎
しりとりステップについて調べた試験もあります。
実際に軽度認知障害(MCI)と診断された高齢者100人を対象に、しりとりステップなどの有酸素運動をやってもらう試験が行われました。その結果、しりとりステップのような運動を行うと、記憶力の向上や脳の萎縮の制御作用が認められることがわかったそうです。
認知症を予防するには、脳をとにかく使うことが大切。しかも、ただ使うのではなく「どう使うか」が大切です。この記事を参考に運動を実践してみてください。とはいえ、この運動さえすれば誰にも同じ変化が現れるわけではありません。
脳にいい食事などと加えて、セルフケアの一環として試してみてください。
もちろん、症状がある人は専門医に早めに診てもらうことが肝心である点は忘れないでください。
記事にあるセルフケアは安全性に配慮していますが、万が一体調が悪化する場合はすぐに中止して医師にご相談ください。また、効果効能を保証するものではありません。
写真/© Fotolia ©カラダネ
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