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睡眠時無呼吸症候群が高齢になると「急増」する理由。原因は舌の筋力低下

解説 RESM新横浜睡眠・呼吸メディカルケアクリニック院長
白濱龍太郎

夜寝ているときに「グオオオー」と大いびきをかいていたかと思うと、突然静かになり、数十秒後に爆発的なイビキが再開する。そんな人は、睡眠時無呼吸症候群に陥っていると考えて間違いありません。

そんな睡眠時無呼吸症候群の原因についてRESM新横浜睡眠・呼吸メディカルケアクリニック院長の白濱龍太郎先生に話をお聞きしました。

睡眠時無呼吸症候群の可能性がある方は、睡眠外来や耳鼻咽喉科、呼吸器科を受診することを忘れないでください。

血中酸素濃度が落ち込み、心臓や脳に負担をかける

医学的には、気道(呼吸をするときの空気の通り道)がふさがって呼吸が10秒以上止まる状態が一晩に30回以上、または1時間に5回以上ある場合を「睡眠時無呼吸症候群」といいます。

この睡眠時無呼吸症候群を「イビキがうるさいだけだろう」と簡単に片づけないでください。実は、高血圧や心筋梗塞・脳卒中、さらには突然死さえも招く危険な病気なのです。

s_睡眠時無呼吸はなぜ起こる2.jpg睡眠中は首まわりや、のどの筋肉がゆるんで気道が狭くなりやすい。このとき、肥満や舌の筋力低下があると、舌が気道をふさいでしまい無呼吸が起こります。

睡眠時無呼吸症候群は、低酸素血症
(血液中の酸素が不足した状態)を引き起こします。特に、睡眠時の無呼吸状態が1時間に30回以上ある場合、重症と定義され、血中酸素濃度が60%程度まで落ち込むこともあります。これは、エベレスト山に酸素マスクなしで登ったのと同じような非常事態です。

睡眠時の低酸素血症は、心臓や脳・血管などに大きな負担をかけます。この状態が毎晩、何年にもわたってくり返されれば、計り知れないほどの負担が心臓や脳・血管に蓄積し、さまざまな病気の発症原因となります。睡眠時無呼吸症候群の人は、健康な人に比べて高血圧の危険が2倍、脳卒中の危険が4倍、心筋梗塞や狭心症の危険が2~3倍も高くなることがわかっています。

また、睡眠時無呼吸症候群になると、心臓病による夜間の突然死が2.6倍に跳ね上がるという報告もあります。

潜在的な患者数は2000万人⁉︎

睡眠時無呼吸症候群は、3060代で肥満の男性に多い病気といわれています。日本でも近年、肥満の増加とともに、発症する人が急増。潜在的な患者数は2000万人、治療が必要な人は300万人と推定されます。

睡眠時無呼吸症候群が肥満の人に多い理由として、気道の狭さがあげられます。気道は通常、首まわりやのどの筋肉で支えられているので、狭くなることはありません。しかし、睡眠中は筋肉がゆるんで気道が狭くなるため、空気抵抗が大きくなります。そこを空気が通るときに、粘膜や口蓋垂(のどちんこ)を激しく振動させることでイビキが起こるのです。その後、舌が気道をふさいでしまうと無呼吸が起こります。

肥満によって、首まわりや舌の周囲に脂肪が多くつくと気道が狭められ、ふさがりやすくなります。肥満の人は、そうでない人に比べて、睡眠時無呼吸症候群を発症する危険が3倍以上とされています。

では、やせていれば安心かというと、そうではありません。中高年になると、やせていても睡眠時無呼吸になる人が多いのです。日本人の場合、睡眠時無呼吸症候群の患者さん4000例のうち、3~4割はBМ(肥満指数)25未満(非肥満)という報告もあります。

年を取ると首まわりやのどだけでなく、舌を支える筋肉も衰えてきます。それにより、舌のつけ根が下がってくると、あおむけに寝たときに気道が狭くなってしまいます。つまり、やせていても加齢によって舌の筋力が低下すれば、睡眠時無呼吸症候群を発症しやすくなるわけです。

健康な若い人でも、あおむけに寝ると重力によって舌や軟口蓋(のどの入り口で口蓋垂がついている部分)が下がり、気道が狭くなります。常に口をあけて呼吸する人も、あおむけに寝ると下あごが下がり、気道が狭くなることがあります。骨格的には、あごの小さい人は気道の圧迫が起こりやすいといえます。

自分でできる予防・改善法としては、肥満の人は減量する、口呼吸をやめる、寝酒や喫煙を控える、高すぎる枕を使わない、舌の筋肉を鍛える、などがあります。ぜひ実行してみてください。

この記事は、医療や健康についての知識を得るためのもので、特定の見解を無理に推奨したり、物品や成分の効果効能を保証したりするものではありません。

写真/© Fotolia ©カラダネ

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