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健康海藻「アカモク」の減量作用|内臓脂肪減らしや余分な脂肪の吸収を抑えるのに役立つ
ヒジキが属するホンダワラ科の1年草の海藻で、全長7〜10メートルにも成長し、北海道から鹿児島までほぼ全国で生育する「アカモク」。
ここでは、アカモクに秘められている「減量作用」について、北海道大学大学院水産科学研究院教授の宮下和夫先生に話をお聞きしました。
脂肪細胞には2つの種類がある
アカモクという海藻には、体脂肪を減らすフコキサンチンという成分が豊富に含まれており、内臓脂肪がたまって突き出た「メタボ腹」をへこまし、減量に役立ちます。
フコキサンチンは、アカモクの油分に溶け込む形で含まれており、多いものでは総脂質の5%を超えます。この割合は、同じくフコキサンチンを含むワカメやコンブ、モズクなどに比べて群を抜いているのです。
では、フコキサンチンが体脂肪を減らすしくみについてくわしく説明しましょう。
私たちの体内で、余分な脂肪は、皮下(皮膚と筋肉の間)や内臓の周囲にある脂肪組織に取り込まれ、体脂肪として蓄積されます。その体脂肪を形成している組織には、白色脂肪細胞と褐色脂肪細胞の2種類の脂肪細胞が存在し、それぞれ異なった働きを持っています。
白色脂肪細胞と褐色脂肪細胞
白色脂肪細胞は、過剰に摂取したエネルギーを体脂肪としてため込みます。つまり、脂肪を取り込み、体脂肪を増加させてしまうのです。内臓脂肪は、この白色脂肪細胞が大半を占めています。
もう一方の褐色脂肪細胞は、脂肪を分解して熱を作りだし、体温を保持する働きをします。つまり、運動をしなくても、体脂肪を燃やしてくれる細胞なのです。褐色脂肪細胞の脂肪を熱へと変える働きは、ミトコンドリア(後述)の内膜にあるというたんぱく質によるものです。
ミトコンドリアとは、ほとんどの生物の細胞内部に複数存在する小器官で、その細胞自身の活動に必要なエネルギーを生産しています。UCP1は、褐色脂肪細胞のミトコンドリアのみに存在しています。
UCP1は、体内の脂肪代謝にかかわる極めて特殊なたんぱく質で、肥満の改善に大きくかかわっています。このことはマウスを使った動物実験からも明らかで、褐色脂肪細胞やUCP1を人為的に増やして肥満を改善した例がたくさん報告されています。
人の場合、褐色脂肪細胞の数は、生まれたときが一番多く、働きもです。ところが、年を重ねるにつれて数が減り、働きも衰えてきます。特に、40歳を過ぎると数が一気に低下してしまうのです
そのため、私は、数の少ない褐色脂肪細胞の中にUCP1を増やして肥満を退けるというのは、作用が薄いのではないかと考えました。それより、多く存在している白色脂肪細胞の中にUCP1を作りだしたら、体脂肪を最も効率的に減らせるはずです。
体脂肪の減少が試験でも証明された
私はアカモクに含まれるフコキサンチンを研究している過程で、フコキサンチンをとれば白色脂肪細胞中にUCP1が発生する可能性を見出しました。
そして、フコキサンチンをマウスに与える動物実験を行った結果、内臓脂肪の顕著な減少と、白色脂肪細胞中にUCP1が発生することを確認しました。つまり、フコキサンチンを与えることによって、白色脂肪細胞も、褐色脂肪細胞と同じような働きが持てることを発見したのです。
人間の場合も、フコキサンチンによって白色脂肪細胞内にUCP1が発生し、ため込んだ脂肪を分解して熱に変えてくれれば、効率よく体脂肪が減らせると考えられます。特に、内臓脂肪はほぼ白色脂肪細胞なので、フコキサンチンはメタボ腹の改善に役立てることができるのではないでしょうか。
フコキサンチンの試験結果
実際にアメリカでは、白人女性60人(平均体重90㌔)を対象として、次のような試験が行われました。この試験では対象者を30人ずつ2グループに分け、一方にはフコキサンチンを1日当たり2.4ミリグラム、もう一方にはプラセボ(人体に影響を及ぼさない偽薬)を、16週間(約3カ月半)、毎日とってもらったのです。
その結果、フコキサンチンをとったグループは、体重と体脂肪が顕著に減り、肝臓と血液に含まれる脂肪も大幅に減少しました。中には、4週間で体重が約1割減り、体脂肪も同程度減ったという結果も出ています。つまり、減った体重の多くは体脂肪の減少によるものといえるのです。
日本栄養食糧学会でも、人による試験結果が報告されています、。40歳以上の男性協力者十数人を2グループに分け、食事制限をすることなく、それぞれのグループに1日当たり1ミリグラムのフコキサンチン、またはプラセボをとってもらうという試験です。その結果、フコキサンチンをとったグループは、内臓脂肪が減っておなかまわりが細くなりました。
私の研究でも、標準体重(その人の身長に対する適正体重)を大幅に超えている人や、血糖値(血液中のブドウ糖の濃度)が高い人ほど、フコキサンチンによる脂肪減らし作用が現れやすいとわかっています。
フコイダンの量が海藻類の中でもトップクラス
アカモクには、体脂肪を燃やすフコキサンチン以外にも、減量に役立つ成分が含まれています。それは、フコイダンやアルギン酸という水溶性(水に溶けやすい性質)食物繊維です。
コンブやワカメ、メカブなどの海藻は、表面がヌルヌルした、ぬめりがあります。ところが、アカモクはさらにぬめりが強く、まるですりおろしたヤマイモのような粘りけがあります。この海藻特有のぬめりの正体こそ、フコイダンやアルギン酸によるものです。
アカモクには、特にフコイダンが多く、ワカメやコンブ、モズクなど海藻の中でもトップクラスの含有量です。フコイダンは、腸内で脂肪や糖を絡め取って体外に排出する働きがあります。つまり、脂肪が吸収されすぎないように働いてくれるのです。
糖の吸収も抑えられるので、血糖値(血液中のブドウ糖の濃度)の上昇が穏やかになります。食事によって血糖値が急上昇すると、血液中の過剰な糖は中性脂肪に変えられ、体内に蓄積してしまいます。しかし、フコイダンで血糖値の上昇を穏やかにすれば、血液中に糖が過剰になりにくいので、糖を中性脂肪に変える働きを抑制させることができます。
このように、フコイダンによって余分な糖や脂肪が体内に入りづらくなれば、余分な体脂肪がつきにくくなり、メタボ腹をへこませるのに役立つのです。
アカモクは、便秘で悩む人にもおすすめです。便秘の人は、腸に有害物質を多くため込んでいます。腸の中の悪玉菌(人体に有害な働きをする細菌)が、腸内にたまっている便を腐敗させ、有害物質を多く発生させるのです。
腸内に増えた有害物質は、腸壁から吸収されて血液にのり、体のあちこちに運ばれます。すると、体の各組織の働きが悪くなり、太りやすい体質になってしまいます。それだけでなく、肌荒れなどさまざまな不調も招くのです。
こうした便秘の改善に、アカモクは大きな力を発揮します。アカモクの豊富なフコイダンが腸内で水分を吸ってゲル(ゼリー)状となり、腸内の有害物質を便として体外に排出してくれるのです。
その一方でフコイダンは、腸内に住む善玉菌(人体に有益な働きをする細菌)のエサとなって、善玉菌増やしに一役買います。善玉菌が増えて腸内環境が整えば、便秘が改善するばかりか、体もやせやすくなるでしょう。
また、アカモクに含まれる不飽和脂肪酸のEPA(エイコサペンタエン酸)やDHA(ドコサヘキサエン酸)は、脂肪を燃やす褐色脂肪細胞を活性化し、体脂肪を減らすように促してくれます。
この記事は、医療や健康についての知識を得るためのもので、特定の見解を無理に推奨したり、物品や成分の効果効能を保証したりするものではありません。
写真/©Fotolia ©カラダネ
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