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ひざ痛がよくなる100年体操【自彊術のやり方】なぜいいのか?整形外科医が検証
吉松俊一
「何をしてもひざ痛が治らない」「痛む場所がハッキリしない」「ひざ痛の原因が全くわからない」こうした難治の膝痛に悩む方も少なくないはずです。
そんなときは、自彊術を頼ってみてはいかがでしょうか。自彊術は、天才治療家として名を馳せた中井房五郎(なかい・ふさごろう)氏によって1916(大正5)年に考案された日本初の健康体操です。
これまでの100年間で延べ300万人以上が自彊術を実践し、現在も約5万7000人が日本各地にある自彊術の教室で体操に励んでいます。そうした人の中には、ひざ痛をはじめとする慢性痛や難病を克服した人も少なくありません。
ここまで改善例の多い自力療法はほかにはあまりありません。本来は、31動作を続けて行う自彊術の中から、今回は特別にひざ痛で悩む人におすすめの動作をご紹介します。もし、実践してみて自彊術の素晴らしさを少しでも垣間見えた人は、31動作にも挑戦してみてください。
もちろん、ひざ痛に悩んでいる方はセルフケアだけでなく、整形外科医の治療を受けることも重要です。
ひざ痛の克服に役立つ自彊術・第13動のやり方
31動作ある自彊術の中で、ひざ痛の改善に適しているのは「第13動」です。まずは、そのやり方紹介します。
●準備姿勢
両足を伸ばして床に腰を下ろす。足裏と床は垂直にしておく。
❶両手は膝の上に置き、ひじを伸ばして上半身をややそらす。
❷「イチ」のかけ声とともに、手をできるだけ前に突き出して、上半身を前に倒し、すぐに❶の姿勢に戻る。❶❷をくり返し6〜10回行う。
13動を行うと、ひざ関節を支える太ももの大腿四頭筋やハムストリングが柔軟になり、ひざの可動域(動く範囲)も広がりやすくなります。
また、第13動のポイントは、(1)両足のひざ裏を床につけること、(2)足裏を床に対して垂直にピンと立てること、(3)可能なかぎり前屈することです。前屈ができない場合は、両足をまっすぐに伸ばし、爪先を立てるだけでもかまいません。
ひざ痛の主原因は、関節組織の変性
ひざ痛の中でも、特に増加傾向を示しているのが「変形性膝関節症」です。
変形性膝関節症などの関節痛の大半は骨や靭帯(骨と骨をつなぐ線維組織)などの関節組織が変質することで発症します。運動不足や加齢などによって筋肉が衰えてくると、ひざ関節を支える力が弱くなり、骨と骨がぶつかり合うようになります。
すると、骨と骨の間でクッション役を担う関節軟骨がすり減ったり、というトゲができたり、靱帯が厚くなったりして膝関節が変形してくるのです。
その結果、変形したひざ関節は周囲の神経や血管を圧迫して痛みを引き起こすだけでなく、しびれやマヒなどの神経障害を伴う場合も少なくありません。こうした事態を防ぐためにもふだんから適度に体を動かし、ひざ関節の柔軟性や筋力の維持に努めるようにしてください。
運動によってひざ関節を曲げ伸ばしすると、軟骨に酸素や栄養を供給する関節液のが促され、軟骨のクッション機能も改善しやすくなります。それによって関節にかかる負担が軽減すれば、痛みやしびれなどの症状も改善に向かうでしょう。
さらに、関節液には関節の摩擦を少なくする潤滑油としての役割もあり、関節液の分泌が増えれば、軟骨のすり減りを最小限に抑えられるほか、骨棘の発生や靱帯の肥厚も防げます。
自彊術がなぜいいのか
日ごろから関節に適度な刺激を与える必要はあるものの、年齢や体力に見合わない激しい運動をして、関節に過度な負担をかけるのは、かえって症状を悪化させます。患者さんの中にも自己流で筋トレやマッサージを行ったり、1万歩以上のウォーキングを日課にしたりしている人もいましたが、それが症状の悪化につながっているケースも見受けられます。
ひざ痛の人が運動に取り組む場合は、私は以下の点に注意すべきと考えています。
- ひざ関節を無理に曲げ伸ばししないこと
- 痛みを伴わないこと
- 長時間にわたって膝関節に負荷をかけつづけないこと
そこで、ひざ痛の人でも行えるセルフケアとしておすすめなのが「自彊術」です。
自彊術は、31種類の多様な動作によって全身の関節を動かします。その中には、首・肩・ひじ・腰・ひざなどの関節も含まれ、部分的に過剰な負荷がかかることはありません。それでいて全31動作を連続して行った場合、全身の関節が1万数千回も動かせるのです。
このように、強すぎず弱すぎない適度な刺激が全身の各所にバランスよく加わることで関節の可動域(動く範囲)が徐々に広がり、膝痛などの症状も改善に向かいます。
自彊術は、合計で31動作もありますが、一つひとつはシンプルな動きで構成され、やり方を覚えるのはそれほど難しくありません。つまり、取り組みやすく長続きもしやすい合理的な運動療法だといえるので、ひざ痛のセルフケアを探している人には、有望な選択肢として自彊術をおすすめします。
記事にあるセルフケア情報は安全性に配慮していますが、万が一体調が悪化する場合はすぐに中止して医師にご相談ください。また、効果効能を保証するものではありません。
写真/© Fotolia ©カラダネ
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