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公的機関で確認【夜間頻尿】の重大原因「過活動膀胱」は自律神経を正す【骨盤底さすり】で改善
堀田晴美
夜間頻尿とは、いわずもがなですが、就寝中に尿意を催し何度かトイレに行く症状のこと。その原因には、過活動膀胱(かかつどう ぼうこう)があるといいます。
そんな過活動膀胱を自力で改善させるセルフケア法として、「骨盤底さすり」が話題です。骨盤底とは会陰(えいん)の部分。会陰とは肛門と生殖器の間を指します。
なぜ、会陰部をさすると過活動膀胱が改善するのでしょうか。この記事では、試験を実際に行った堀田晴美先生に話を聞きました。
もちろん、夜間頻尿など過活動膀胱が疑われる人は、泌尿器科の専門医に診てもらうことは忘れないでください。
夜間頻尿は薬でよくならないことがある
過活動膀胱は年齢を重ねるごとに増えていきます。すると当然、夜間頻尿の悩みが悪化するため、大きな問題になります。
夜間頻尿とは、就寝中に何度も尿意を催して目覚めてしまう症状で、下のグラフにあるように、60代以上になると約8割の人が夜間にトイレに起きるようになります。
一晩にトイレへ4〜5回行くケースも珍しくありません。
このように、夜中に何度も目が覚めると睡眠の質が低下するだけでなく、転倒骨折を起こして寝たきりになる危険も大きくなります。
通常、夜間頻尿の治療では水分をとりすぎないように指導したり、膀胱を収縮させる副交感神経の働きを抑える抗コリン剤を処方したりします。
ところが、抗コリン剤を服用しても夜中の排尿回数が減らないこともあります。特に高齢者の場合は、高血圧や糖尿病といった別の病気の薬を何種類も服薬している場合が多く、内臓の働きも衰えているので、薬の種類が増えると逆に副作用が心配になります。
排尿は自律神経にコントロールされる
そうした中、私たちの研究チームは激増する夜間頻尿の改善に作用を発揮するセルフケア法として「骨盤底さすり」を開発しました。
骨盤底さすりとは、膀胱に近い会陰部(肛門と生殖器の間の部分)の皮膚をやさしくさするセルフケア法です。
夜間頻尿の改善に役立つ骨盤底さすりは、ラット(ネズミ)や人間を対象に行った試験で、その作用を実証しています。
では、なぜ会陰部をさすると夜間頻尿の改善に役立つのでしょう。それは、会陰部への皮膚刺激が排尿にかかわる神経に作用し、尿を出そうとする生理的な働きを抑えて尿意が治まるからです。
まずは、排尿に関係する神経の働きを説明しましょう。排尿は、
❶排尿筋(膀胱の筋肉)が弛緩し、尿道括約筋(尿道の筋肉)が収縮して膀胱に尿がたまる
❷排尿筋が収縮し、尿道括約筋が弛緩して膀胱から尿が出る
という2つの働きをくり返すことで行われます。
排尿筋は、自分の意志では動かせません。というのも、この筋肉は自律神経(意志とは無関係に内臓や血管の働きを支配する神経)によって無意識のうちにコントロールされているからです。
自律神経は自分の意志ではコントロールできない
尿が膀胱にたまるときは、交感神経によって排尿筋は弛緩し、尿道括約筋は収縮します。一方、尿を膀胱から出すときは副交感神経の働きで排尿筋が収縮、尿道括約筋は弛緩するのです。
もっとも、尿道括約筋の一部は自分の意志で動かすことができ、水道の蛇口のような役割を担っています。ここを締めれば、多少の尿意を感じてもしばらくは我慢できるのです。
ところが尿の貯蔵タンクである膀胱では、自律神経の働きで問答無用に排尿が促されるため、尿意を我慢するにも限界があります。
特に、夜眠っているときは自分の意志で尿意を我慢するなどコントロールできないので、自律神経の働きの乱れは夜間頻尿に大きく影響するのです。
骨盤底さすりは、排尿にかかわる自律神経をコントロール
前に薬物治療では抗コリン剤が用いられると述べました。
この薬には、副交感神経から放出される神経伝達物質の「アセチルコリン」が排尿筋に伝わるのを遮断する作用があります。その結果、膀胱の過剰な収縮が抑えられて夜中の排尿回数を減らす、つまり夜間頻尿を改善させることをめざしています。
私たちの研究チームが開発した骨盤底さすりも、抗コリン剤と同様に排尿を引き起こす神経伝達のしくみに作用して尿意を抑えよう、夜間頻尿を改善させようというコンセプトです。
排尿を引き起こす神経伝達には、膀胱に尿がたくさんたまったことを脳に知らせる伝達、脳から膀胱に排尿の命令を下す伝達があります。上の図のように、骨盤底さすりをやると、この2つの神経伝達を遮断するのに役立ちます。
薬だけに頼らずに神経伝達の働きをコントロールできて、夜間頻尿の改善につながる骨盤底さすりは、画期的な自力療法になりうると私たちは考えています。
実際、骨盤底さすりを行った試験では、夜間頻尿の改善が確認されています。
夜間頻尿の改善に役立つ「骨盤底さすり」の具体的なやり方については、下記の関連記事にあります。
記事にあるセルフケア情報は安全性に配慮していますが、万が一体調が悪化する場合はすぐに中止して医師にご相談ください。また、効果効能を保証するものではありません。
写真/© Fotolia ©カラダネ
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