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食物繊維も無効の【慢性便秘】の原因は「ガス腹」。ガス抜き運動で改善
「食物繊維をたくさんとっているのに…」「ヨーグルトを毎食、食べているのにどうして…」、深刻な便秘で長年悩んでいる方からは、こうした話がよく聞かれます。
一般的には、食物繊維の摂取やヨーグルトを食べることは腸の働きをよくして、便秘の改善が期待できます。
ところが、食物繊維やヨーグルトをとれば「便秘が改善される場合もある」という話に過ぎません。つまり、全員に効くわけではないのです。
便秘の原因は人それぞれで、自身の便秘の症状をしっかりと把握し、そのうえで対策を講じることが大切だといいます。
今回は、東邦大学医療センター大森病院の瓜田純久教授が、長年の慢性便秘の治療経験から突き止めた便秘の新しい原因について解説していただきました。
もちろん、便秘の人は「たかが便秘」と軽視せず、専門医に診てもらうことも忘れずに。
あなたの便秘の原因は?便秘のタイプを解説
医学的には排便回数が週に2回以下か、便が3日以上出ない状態を便秘と呼んでいます。しかし、たとえ便通が毎日あっても、便が硬くて出にくかったり、便の量が少なかったりして、自分自身が不快に感じるならば、自分は便秘だと考えてください。
最も多い【直腸性便秘】とは?【けいれん性便秘】とは?
便秘には、いくつかのタイプがあります。中でも、割合が多いのは「けいれん性便秘」と「直腸性便秘」です。
けいれん性便秘は、腸の蠕動運動(内容物を先送りする働き)が強すぎて腸管の一部が緊張して狭くなり、便が先に進みづらくなるタイプ。これは、ストレスを抱えている人に多い傾向があります。
一方、直腸性便秘は肛門の手前の直腸に便が届いているのに、何らかの原因で便意が脳にうまく伝わらないタイプ。これは、便意があっても排便を我慢しがちな女性に多く見られます。私の経験からいうと、中高年の便秘の約6割は、けいれん性便秘と直腸性便秘で占められています。
3番めに多い【弛緩性便秘】とは?
そして、3番めに多いのが「弛緩性便秘」です。このタイプは、腸やその周囲の筋肉が衰え、蠕動運動が弱くなると起こります。年とともに体力が低下すれば、誰にでも弛緩性便秘が起こりえますが、特に食事量が少ない人に多い傾向があるようです。
ほかにも、薬の副作用で起こる「薬剤性便秘」、ガンが関係している「器質性便秘」などのタイプがあります。
食物繊維で便秘が改善しない人は、便が腸を通りづらくなっている!?
便秘になりやすい人に共通しているのは、すでに腸の働きが衰えて便を出す力が弱くなっていること。その原因は、乱れた食生活や運動不足など、私たちの生活習慣に潜んでいます。
多くの患者さんは、腸の働きを取り戻すために生活習慣の改善に励んでいます。しかし、その努力が空回りしていることが少なくありません。
例えば、便秘を改善しようとして毎日、食物繊維が豊富な根菜類をたくさんとっている患者さんが目立ちますが、それは大きな間違いです。食物繊維の摂取は便秘予防には役立つものの、すでに便秘の人がたくさんとると逆に便が腸を通りづらくなって症状が悪化してしまいます。
便秘の改善には、運動療法が役立ちます。とはいえ、中高年の人は、腰痛などを抱えていることが多く、激しい運動はできません。また、無理してやっても続かないのが、運動療法の難点でしょう。
慢性便秘の人は腸にガスがたまっている
私が考えた便秘改善の新たな秘策が、腸のガス抜きです。
というのも、慢性的な便秘の人の腸内にはガスがたくさんたまっていることが多く、それが腸の働きを衰えさせる重大原因になっているのです。
腸のガスの主成分は、呼吸や食事のさいに飲み込まれた空気の主成分の窒素です。さらに、腸内細菌が便を分解する過程で発生したメタン・水素・二酸化炭素などが加わるため、便秘の人ほどガスがたまりやすくなります。そのように腸内にガスがたまると、蠕動運動が妨げられて便秘が悪化し、やがて慢性化してしまうのです。
特に、メタンは腸の動きを遅くすることがわかっています。さらに、メタンと同時に発生する短鎖脂肪酸(酢酸・酪酸など)は、胃腸の動きを遅くするインクレチンというホルモンの分泌を促します。これも、便秘を悪化させる一因といえるでしょう。
また、医学書によると、腸内に存在するガスの量は200ミリリットルとされていますが、実際にはそんなに少なくないと私は考えています。白米のご飯200グラムのうち12.5グラムが消化されずに大腸に到達すると、腸内に4.2リットルの水素ガスが発生するのです。
最後に、腸内にガスがたまることで起こる特徴には、おなかが張る膨満感、頻繁に出る臭いおなら、腹痛などがあります。便秘に加えて、これらの特徴がある人は、便秘が慢性化する悪循環を断ち切るためにも、まず腸のガス抜きに努めること、具体的にはガス抜き運動をすることが慢性便秘を改善する近道です。
編集部注)
瓜田先生は、ガス抜き運動として、体をゴロゴロと動かす運動を提唱されています。やり方を後日、カラダネにて公開します。
記事にあるセルフケア情報は安全性に配慮していますが、万が一体調が悪化する場合はすぐに中止して医師にご相談ください。また、効果効能を保証するものではありません。
写真/© Fotolia ©カラダネ
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