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足がむくむ、血管が浮き出る【下肢静脈瘤】はなぜ起こる?できやすい人や対策を医師が解説
足がむくむ人、足の血管がボコボコと浮き出ている人は下肢静脈瘤かもしれません。
下肢静脈瘤というと、なんだか難しい病名で特殊な病気のように感じる人が多いかもしれませんが、それは違います。実は30歳以上の62%もの人にあるといわれる、とても身近な病気だといいます。
医師の井上啓太先生にくわしく話を聞きました。
もちろん、下肢静脈瘤が疑われる人は専門の医師に診てもらい、適切な治療を受けることが重要です。
下肢静脈瘤は足の静脈が正常に働かなくなるのが原因
下肢静脈瘤は、その名のとおり、下肢(足)の静脈という血管で起こる病気です。
足がむくむ、だるい、重いなどの症状のほか、足の血管(静脈)が浮き上がったり、コブのように膨れ上がったりするのが特徴で、年齢とともに増加することがわかっています。
血管には動脈や静脈、毛細血管があり、これらの連携によって体じゅうに血液が送り届けられています。動脈は、心臓から送り出された血液を体のすみずみまで運びます。
動脈の先には、網目のような毛細血管があり、毛細血管を通して各細胞へ酸素や栄養が運ばれます。静脈は、細胞で不要になった二酸化炭素や老廃物を受け取り、肺や腎臓に運んで酸素と交換したり濾過させたりする役目があります。この静脈が正常に働かなくなるのが、下肢静脈瘤なのです。
足の静脈には2つある
では、足の静脈は、どんな働きをしているのでしょうか。ちょっと細かい話になりますが、大事なところなのでよく理解しておいてください。
まず、足の静脈には深部静脈と表在静脈があります。
深部静脈は、足の骨に近い中心部分にあり、外から見ることはできませんが、大量の血液をまとめて心臓へ戻す働きがあります。
一方、表在静脈は皮膚のすぐ下を流れる体表付近の静脈で、その一部は外から見ることができます。つまり、外から見える静脈はすべて表在静脈です。
表在静脈の中でも特に太いのが、太ももからふくらはぎの内側に伸びている「大伏在静脈」と、ふくらはぎの後ろ側にある「小伏在静脈」。どちらも下肢静脈瘤になりやすい血管です。そして、こうした表在静脈と深部静脈をつないでいる静脈のことを「穿通枝」(交通枝ともいう)と呼んでいます。
静脈には、血液を心臓に戻す働きがあります。とはいえ、静脈には心臓のように血液を送り出すポンプはありません。では、ポンプがないのに、どのようにして重力に逆らって血液を下から上へと送っているのでしょうか。
その秘密は、「第2の心臓」といわれるふくらはぎなどの筋肉による筋ポンプ作用にあります。筋ポンプ作用とは、歩いたり、足首を動かしたりしたときに筋肉が収縮と弛緩をくり返すことで、静脈を圧迫してポンプのように血液を押し上げる働きです。
そして、一度押し上げた血液が下に戻ってこないように、静脈には「静脈弁」という逆流防止用の弁がついています。静脈弁は血液が心臓に向かって流れるときにだけ開き、下方へ逆流しそうになると閉じるしくみになっています。
静脈弁が壊れて下肢静脈瘤が起こる
静脈弁は、静脈の最も内側にある内膜が弁状に変化したもので、非常に薄く壊れやすい構造になっています。もし、静脈弁がなんらかの原因で壊れてしまうと、血液が逆流して弁の周囲にある静脈に血液がたまってしまいます。
そして、壊れた状態が長く続くと、表在静脈の壁に強い圧力がかかり続け、引き伸ばされて太くなります。さらに放置すれば、静脈はクネクネと曲がりくねったり、コブのように膨らんだりします。下肢静脈瘤の浮き出た血管は、このように形成されるのです。
下肢静脈瘤になりやすいのは出産経験者、対策は足運動
下肢静脈瘤は、40代以上の女性に多く見られます。
特に出産経験のある女性の2人に1人には下肢静脈瘤があるといわれています。これは、妊娠した女性は、妊娠・出産のときに下半身の静脈に負荷がかかるためと考えられます。
このように、下肢静脈瘤は足の血管に負担がかかったり、足に血液がたまりやすい生活をしていたりする人に起こりやすいといわれています。例えば、調理師や理美容師、スーパーのレジ係など、長時間、立ちっぱなしで足を動かさないでいる人は、重力によって足の静脈への圧力が高まるため静脈弁が壊れやすく、下肢静脈瘤になりやすいと考えられます。また、年を重ねて筋肉量が減り、筋ポンプ作用が弱くなった人も、下肢静脈瘤になりやすいといえるでしょう。
下肢静脈瘤の対策(足を動かす。弾性ストッキングもおすすめ)
下肢静脈瘤を退ける対策としては、足の静脈に負担(圧力など)がかからないようにすることが肝心です。運動不足の人は、できるだけ足の筋肉を動かすようにして筋ポンプ作用を促しましょう。立ちっぱなしの生活を避けられないなら、弾性ストッキングをはくのもおすすめの予防法です。
記事にあるセルフケア情報は安全性に配慮していますが、万が一体調が悪化する場合はすぐに中止して医師にご相談ください。また、効果効能を保証するものではありません。
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