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【下肢静脈瘤】の種類を画像診断|医師が見分け方や進行度、治療法を全解説
ひとことに「下肢静脈瘤」といっても、自覚症状の無いものから目に見えて大きな変化があるものまで、さまざまなタイプがあるそうです。また、進行の度合いによっては手術が必要になるケースもあります。
ふだん、足に何かしらの不調を感じている人は、下肢静脈瘤になっていないかどうか気になりますよね。
そこで、医師の井上先生に下肢静脈瘤のタイプ別の症状や治療法などを、画像とともに解説していただきました。ご自身の症状の段階を確認してみてください。
現状を理解することが、改善への近道です。
もちろん、下肢静脈瘤の人は医師の治療を受けることは忘れないでください。
下肢静脈瘤のタイプと、どんな症状か画像解説
静脈には深部静脈と表在静脈がありますが、下肢静脈瘤は表在静脈にかかわる病気です。
最も代表的なのが、大伏在静脈(だいふくざいじょうみゃく)や小伏在静脈(しょうふくざいじょうみゃく)の静脈弁が壊れて血液がたまってしまう「伏在型静脈瘤」です。このほかにも「側枝型静脈瘤」や、「網目状静脈瘤」「クモの巣状静脈瘤」などの軽症タイプもあります。
それぞれの主な特徴を述べておきましょう。
伏在型静脈瘤
足の表在静脈で最も太い伏在静脈(直径4ミリ以上)の静脈弁が壊れて起こります。血管が太く膨らみ、ボコボコとした大きいコブができたり、足のむくみやだるさなどの症状に襲われたりします。進行すると湿疹や潰瘍を起こすことがあり、重症では手術が必要になります。
伏在型静脈瘤で最も多いのは大伏在静脈瘤で、足の付け根の静脈弁が壊れて静脈血が逆流して起こります。大伏在静脈に沿って、太ももからふくらはぎの内側に静脈瘤が現れるのが特徴です。
小伏在静脈瘤は大伏在静脈流に次いで多く、ひざの後ろ側の静脈弁が壊れて起こります。ふくらはぎを通る小伏在静脈の走行に沿って静脈瘤が現れるのが特徴です。
伏在型静脈瘤より細い静脈で起こる、比較的軽症タイプには次のものがあります。
側枝型静脈瘤
伏在静脈から枝分かれした静脈(直径2~3ミリ)で起こる静脈瘤です。伏在静脈より細い血管で起こるので、静脈瘤は伏在型ほど大きくならないことが多いのですが、静脈が皮膚の近くにあると目立ちます。痛みなどの自覚症状や皮膚炎を起こすことも少ないタイプです。
網目状静脈瘤
皮膚のすぐ下にある細い静脈(直径1~2ミリ)の静脈瘤です。静脈が青く網目のように見えますが、細い静脈なのでコブ状にはなりません。通常、自覚症状はほとんどなく、重症化しないので、美容的に気にならない限り、治療の必要はありません。
クモの巣状静脈瘤
皮膚表面の毛細血管(直径0.1ミリ程度)が拡張した静脈瘤で、赤い糸のような血管がクモの巣のように広がって見えます。網目状静脈瘤と同時に見られることが多く、やはり自覚症状はなく、重症化もしません。ちなみに、網目状静脈瘤もクモの巣状静脈瘤も、年を重ねるごとに増えていきますが、進行しても伏在型静脈瘤になることはありません。
下肢静脈瘤の進行度は6段階
下肢静脈瘤の病期の進行度は、進行度表にあるようにC1(第一段階)からC6(第六段階)に分けられます。このうち、私が積極的に治療をすすめるのは、C2(第二段階)からです。
C2からは悪化しやすく、C4(第四段階)まで進むと皮膚病変で皮膚が硬くなって(皮膚脂肪硬化症という)傷つきやすくなり、湿疹からは潰瘍にもなりかねません。
下肢静脈瘤の治療法は主に4つ
治療法としては、大きく「保存的治療」「硬化療法」「手術」「血管内治療」の4つがあります。
保存的治療は、足を中心とした運動などの生活習慣の改善や弾性ストッキングの着用などで、症状を改善し進行を防ぐために行います。硬化療法は、静脈瘤のある血管に薬を注射して固める治療です。ある程度より大きくなると、薬剤が流されてしまうので適用ではありません。
手術では、メスで小さく切開して静脈瘤を引っ張り出すストリッピングを行います。この方法はふつう入院が必要になります。血管内治療で最近よく行われているのが、レーザーによるものです。カテーテル(細い管)を静脈に入れて、レーザー光線で焼灼。こちらは日帰りで治療を受けられます。
近年、治療法は格段に進歩しています。下肢静脈瘤で生活に支障をきたすようであれば、積極的に治療を受けてほしいものです。
この記事は、医療や健康についての知識を得るためのもので、特定の見解を無理に推奨したり、物品や成分の効果効能を保証したりするものではありません。
写真/©カラダネ © Fotolia
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