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出そうで出ない、出ても少量で残便感もある【直腸性便秘】解消の秘策は「お尻上げ排便」
便秘の人で、
・便意はあるのに便が少量しか出ない
・いきんでも腟の方がふくれるだけ
・出ても残便感がある
といった症状の人は、腸が変形した直腸瘤(ちょくちょうりゅう)ができて、便が引っかかって直腸性便秘になっている可能性があります。
直腸性便秘が起こるしくみについては、一番下にある関連記事をご覧ください。
ここでは、直腸性便秘を改善する「排便姿勢」について、専門家の倉田正医師に話を聞きました。
もちろん、便秘を軽視することなく、医師の治療を受けることも忘れずに。
直腸性便秘は直腸瘤に便を入れないのが秘訣
直腸性便秘では、直腸瘤が重大原因のことがあります。
直腸瘤ができると、腸のくぼみに便の先端が引っかかって便がつまるため、便秘を招いてしまうのです。
長年、便秘の専門家として診療にあたってきた私は、訪れる直腸性便秘の患者さんに、硬い便を軟らかくする緩下剤を処方したり、便の滑りをよくする坐薬の使用やオリーブオイルの摂取をすすめたりしてきました。
さらに、直腸性便秘の患者さんには、トイレで排便するときの姿勢を工夫することを、必ず指導しています。直腸性便秘の人がスムーズに排便するには、排便姿勢が重要になるのです。
最近では、和式のトイレが減って、洋式のトイレが普及しています。そこで、ここでは洋式の便座に座って排便するときの姿勢について説明していきましょう。
洋式便座の場合、多くの人はロダン作の彫刻「考える人」のような姿勢で座っているのではないでしょうか。一般に、こうした前かがみの姿勢で座ると、腹圧(おなかの中の圧力)がかかって便が出やすくなるとされます。
ところが、直腸瘤による「直腸性便秘」で悩む人は、この姿勢ではスムーズな排便はできません。くり返しになりますが、直腸瘤とは、肛門に近い直腸の壁が、ポケット状に膨らんで袋のようになっている状態です(下の図参照)。
直腸性便秘の人は、その部分に硬い便が入り込んで引っかかり、肛門がふさがれて排便しにくくなっているのです。排便時に無意識に股をひろげた姿勢になり、肛門を閉じるのも一因です。
↑上の図のポケット腸とは直腸瘤のこと。腸にポケットができたように見えるため
直腸性便秘の場合、無理に便を出そうとして、前かがみの姿勢を取っていきみ、強い腹圧をかける人が多いのですが、これは逆効果になります。
前かがみでいきむと、便がポケット状の袋の方向に押され、ますます出にくくなるのです。これでは直腸性便秘がひどくなる一方です。
腸のポケットに入った便を肛門へ向かわせる
直腸性便秘は食生活や運動不足の改善では解消しにくい便秘です。何よりも、ポケット状の袋に引っかかった便を、肛門の方へ向かわせることが重要なのです。
そこで私が指導しているのが、「お尻上げ排便」という方法です。
現在は、ほとんどの家庭が洋式トイレなので、この特集では、洋式トイレの便座に座って行うお尻上げ排便について解説します。お尻上げ排便は、便座に座って股を閉じ、お尻の真ん中にある尾てい骨に手を当てて、お尻の皮膚を引っ張り上げるという、とても簡単な排便方法です。
これまでに多くの直腸瘤の患者さんが実践し、やったその場で改善を実感する人もおおぜいいます。
お尻上げ排便なら直腸がまっすぐになり便が出やすい
お尻上げ排便で直腸性便秘が改善するしくみは、次のように考えられます。
下の図を見ていただければわかると思いますが、直腸から肛門へとつながっている部分は、ほぼ直角(90度)に折れ曲がっていて、便がもれにくい形状になっています。しかし、強くいきんだりすると腸壁に負荷(負担)がかかりやすいため、直腸瘤になりやすい部位でもあるのです。
直腸瘤の人は、この部分にできたポケット状の袋に便が引っかかっているので、直腸の角度を90度よりも大きくして直線に近づければ、便が出やすくなります。さらに、直腸が引き伸ばされることで、ポケット状の袋も引っ張られて凹みが浅くなり、便が肛門へ進みやすくなります。
直腸を直線に近づけるには、図のようにお尻の真ん中の皮膚を手で引っ張り上げます。すると、その周囲にある筋肉や靱帯(骨と骨をつなぐ丈夫な線維組織)も引き上げられ、それらにつられて直腸も引っ張られ、まっすぐになるのです。
また、お尻の肉を両手でつかんで思いきり持ち上げるという方法で、便が出やすくなったという人もいます。
このように、お尻上げ排便をすると、直腸が便の出やすい形状になり、直腸のポケット状の袋に引っかかっていた便が肛門に下りてくるので、便がスムーズに出るようになります。
加えて、お尻の真ん中の皮膚を引っ張り上げると、肛門を締める働きのある肛門括約筋が伸ばされて肛門が拡がるので、排便しやすくなります。
なお、お尻上げ排便を行うときは、前かがみの姿勢をとらないようにして、便座の少し前のほうに座るようにしてください。便器の穴にはまり込むような座り方では、肛門の皮膚が強く緊張して、痔を招く場合があります。
記事にあるセルフケア情報は安全性に配慮していますが、万が一体調が悪化する場合はすぐに中止して医師にご相談ください。また、効果効能を保証するものではありません。
写真/©カラダネ © Fotolia
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