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【便秘専門家が注意喚起】便秘の意外な原因は「温水洗浄便座の間違った使い方」。洗いすぎが危険!
便秘で悩む人の中には、温水洗浄便座の水流で肛門に刺激を与え排便を促しているという人がいるようです。
でも、それが習慣化するとさらに排便が困難になってしまう危険をご存じでしょうか。もしかしたら、あなたの温水洗浄便座の使い方は間違っているかもしれません。
温水洗浄便座の正しい使い方について、肛門内科の倉田正医師に話を聞きました。
便秘の改善には、毎日の食生活や適度な運動が大切です。もちろん、便秘を軽視することなく、医師の治療を受けることも重要であることを忘れないでください。
温水洗浄の多用で、肛門の防御機能が消失するおそれが…
現在、持ち家・借家を問わず、洋式トイレの普及率は9割を超えています。
さらに、洋式トイレの温水洗浄便座については、約7割の家庭や公共の施設に普及しているといいます。確かに、温水洗浄便座は簡単に気持ちよくお尻が洗える優れものです。
ところが、多くの人が温水洗浄便座の正しい使い方を知らないために、さまざまな危険な症状を招いているのです。
肛門内科の医師である私のもとには、排便に伴う痛み・かゆみ・出血といった症状や、便秘をはじめとする排便障害を訴える患者さんがおおぜい訪れます。実は、温水洗浄便座の誤った使い方がその原因となっているケースが増えているのです。
では、温水洗浄便座の誤った使い方とは、具体的にどんなことなのでしょうか。
多くの温水洗浄便座には、必要以上に強い水圧で洗う機能が付いています。さらに、最近の温水洗浄便座はエコという名目のもと、細い水流になっているものもあります。
本来、ほとんどの汚れは3~5秒で十分に対応できるのに、「よく洗えば、それだけきれいになるだろう」と、数十秒から数分間も洗っている人もいます。排便直後に便の塊が肛門周辺に付いているなら、そこだけつまみ取って洗えば負担をかけずにすむはずです。
肛門の穴の入り口手前は皮膚で覆われ、その奥は直腸に続いています。直腸の壁は粘膜で、肛門と直腸の境目(歯状線)は、皮膚と粘膜のつなぎ目です。このように肛門は、皮膚と粘膜が接する極めてデリケートな部分なのです。そこに、強い水圧で、細く鋭い温水を長時間にわたって当てるのが習慣になるとどうなるでしょうか。
肛門の皮膚を守っている皮脂が溶け、流され、防御機能が失われるため、皮膚が傷つき、痛みやかゆみ、ただれが生じます。肛門の皮膚が裂けたり切れたりすると血管が露出し、少しの刺激でも、かゆく、出血しやすくなり、潰瘍や切れ痔などの原因になります。
また、強い水圧の温水が肛門の奥まで届くと、巻き込まれて雑菌が侵入したり、直腸の粘液までも洗い流されたりして炎症を起こし、痔ろう(肛門周囲潰瘍)や直腸炎などを誘発させることもあります。
便秘改善に重要な注意点は肛門を狭くしないこと
最近、慢性便秘に悩む患者さんから「温水を肛門に当てると、いきまないでも便が出せる」という言葉を耳にします。確かに、温水が直腸まで大量に届くと、その刺激で直腸が収縮し、飛び散る花火のように便が出ることがあります(便器のすみずみまで汚れます)。
温水洗浄を使って強制的な排便をくり返しているうちに肛門が傷ついて狭くなり、逆に慢性的な便秘を引き起こしてしまうのです。便秘の予防や改善のために、最も大切なのは「肛門を狭くしない」ことです。
温水洗浄で必要以上に洗いすぎていると痛みや出血が起こり、肛門の筋肉は伸展性を失います。また、いきんで肛門を広げる習慣も少なくなるため、しだいに肛門が狭くなっていきます。
そうすると、排便時に肛門はぐっと締まったままで広がりません。出口にふたをされたように便が出なくなり、直腸に便が残ります。そして、無理に便を出そうとすると、傷はさらに深くなるという悪循環に陥り、いわゆる「フン詰まり」、腸閉塞になります。摘便の指が入りません。
また、直腸には便の水分を吸収して、便の硬さを調節する働きがあります。しかし、直腸に温水を当てすぎると、その働きがうまく機能しなくなり、排便を一段と困難にしてしまうのです。
便秘にならない!温水洗浄便座の正しい使い方
では、温水洗浄便座はどのように使えばいいのでしょうか。ポイントは水圧・水量・使用時間・便器の清潔さです。
水圧は最も弱くしてください。水量はできるだけ増やしましょう。肛門の洗浄時間は、5秒程度が適切です。また、ノズル(温水の噴き出し口)が汚れていると、ウイルスや細菌が温水に混じり、体内に侵入するおそれがあります。ノズルはブラシでこまめに洗いましょう(ノズルは取り外せないタイプが増えているようです)。
温水洗浄便座は正しい使い方を知っていれば、ここまで述べてきたような症状は起こりません。正しい使用法を守り、気持ちよく温水洗浄便座を利用しましょう。
なお、肛門に痛みや出血がある場合は、温水洗浄を控えるようにしてください。
この記事は、医療や健康についての知識を得るためのもので、特定の見解を無理に推奨したり、物品や成分の効果効能を保証したりするものではありません。
写真/©カラダネ © Fotolia
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