【甲状腺の病気】甲状腺機能亢進症や低下症、甲状腺腫などについて専門の伊藤病院院長が解説|カラダネ

カラダネ(わかさ出版)
医師や専門家とあなたをつなぐ、
健康・食・くらしのセルフケアが見つかる情報サイト

【甲状腺の病気】甲状腺機能亢進症や低下症、甲状腺腫などについて専門の伊藤病院院長が解説

解説 伊藤病院院長
伊藤公一

甲状腺から分泌される「甲状腺ホルモン」は、体を動かすうえで大切なホルモンであり、内臓の機能に影響を与える重要な働きを担っています。それだけに、甲状腺に異常が起きると、その影響は全身に及びます。

甲状腺の病気は、甲状腺の「働き」に異常が出るもの、もう一つは甲状腺の「形」に異常が出るものに大別できるそうです。それぞれについて甲状腺の病気の専門病院である伊藤病院院長、伊藤公一先生に話をお聞きしました。

甲状腺の異常が疑われる人は、必ず専門医の適切な治療を受けるようにしてください。

甲状腺ホルモンが過剰になるバセドウ病とは

甲状腺の働きの異常で起こる病気には、甲状腺ホルモンの分泌が過剰になるタイプと、不足するタイプがあります。

甲状腺ホルモンの分泌が過剰になる病気を「甲状腺機能亢進症」といい、その代表が「バセドウ病」。日本人の場合、甲状腺機能亢進症の90%以上がバセドウ病です。

バセドウ病は、甲状腺に対する自己抗体(TSH受容体抗体。TSHは甲状腺刺激ホルモン、抗体とは異物と戦う物質のこと)が甲状腺を刺激して、甲状腺ホルモンをどんどん作らせてしまうために起こります。
バセドウ病は2030代の女性に多いのですが、男性患者も珍しくなく、女性4に対して男性1の割合です。

バセドウ病になると、大小の差はあるものの、ほとんどの人に「首の腫れ」が現れます。これは、自己抗体が甲状腺を刺激しつづけ、その影響で甲状腺細胞がどんどん増え、さらに、甲状腺内の血管細胞も増えて血流が多くなるため、甲状腺全体が腫れてくることで起こります。

甲状腺ホルモンが不足する橋本病とは

甲状腺機能亢進症とは逆に、甲状腺の働きが低下して甲状腺ホルモンが不足する病気を「甲状腺機能低下症」といい、その代表が「橋本病」です。橋本病は圧倒的に女性に多く、男性1に対して女性20〜30といわれます。
どの年齢にも見られますが、20〜40代の女性に多いようです。

橋本病は、甲状腺の細胞がリンパ球に攻撃され、慢性の炎症が起こることで発症します。ただし、すぐに甲状腺の機能低下が起こるわけではありません。橋本病になっても、甲状腺機能低下症に至るのは4〜5人に1人です。

橋本病も、バセドウ病と同様に「首の腫れ」が現れます。ただし、そのメカニズムは全く異なります。バセドウ病の場合は、甲状腺の細胞が刺激されて働き過ぎるために起こりますが、橋本病では、甲状腺の細胞が破壊されて線維化し、慢性的に炎症が起こることで首が腫れてきます。

甲状腺腫れ例-1.jpg橋本病が進行すると、甲状腺ホルモンが不足して代謝が低下して全身の活力がなくなり、さまざまな症状が現れます。

びまん性甲状腺腫と結節性甲状腺腫とは

次に、甲状腺の「形」が変化する病気について説明しましょう。

甲状腺の病気の大きな特徴である「首の腫れ」(甲状腺の腫れ)には、甲状腺全体が腫れる「びまん性甲状腺腫」と、甲状腺の一部にしこり(結節)ができて形が変化する「結節性甲状腺腫」の2タイプがあります。ちなみに、バセドウ病や橋本病の首の腫れは、びまん性甲状腺腫になります。

結節性甲状腺腫は、甲状腺にできる腫瘍(しこり)で形が変化します。腫瘍は、良性の「良性腺腫」「腺腫様甲状腺腫(腺腫様結節)」「嚢胞」と、悪性の「甲状腺ガン」に分けられます。

結節性甲状腺腫のほとんどは良性で、特に治療はせず経過観察が基本です。大きくなり過ぎた場合は薬物療法で小さくしたり注射器で液体を吸い出したりしますが、それでも効果のない場合は手術を行います。

甲状腺がんは治りやすい。とはいえ、油断は禁物

悪性の場合、その80~90%を占めるのが乳頭がんです。進行がゆっくりで治療もしやすいので、極めて性質のいいがんといえます。甲状腺のほとんどのがんは治りやすく、私の病院の調べでは、1000人以上が対象で25年生存率は95%以上です。
とはいえ転移することもあるし、1%程度とはいえ、極めて危険な「未分化がん」もあります。

ちなみに、人間ドック受診者2万人を対象に行った調査では、22.8%の人にしこりを確認したそうです。高齢になるほど多くなり、70歳以上では女性の約4割、男性の約3割にしこりがあることもわかりました。

結節性甲状腺腫のうち、悪性のものは5%程度と少ないとはいえ、がんであれば早期発見・早期治療が何より重要です。特に症状がない場合でも、定期的に検診を受けてほしいものです。

Fotolia_72367295_Subscription_Monthly_M-1.jpg

記事にあるセルフケア情報は安全性に配慮していますが、万が一体調が悪化する場合はすぐに中止して医師にご相談ください。また、効果効能を保証するものではありません。

写真/© Fotolia ©カラダネ

関連記事

この記事が気に入ったらいいね!しよう