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【甲状腺の病気を招く意外な原因】夫婦げんかで11倍、失業で8倍も発症リスクが高まる
私たちののどにある甲状腺は、体の新陳代謝にかかわるホルモンを分泌している内分泌腺です。この甲状腺はとてもデリケートな器官で、ストレスの影響を強く受けます。実際、ストレスにさらされると甲状腺から分泌されるホルモン量が変動するのです。
このことは、ホルモンが過剰に分泌される「バセドウ病」の人や、逆にホルモンの分泌が低下する「橋本病」の人の病状を悪化させる一因となります。
今回の記事では、ストレスとホルモン量の変動についてふきのクリニック院長の吹野治先生に話をお聞きしました。
甲状腺の病気が疑われる人は、必ず専門病院で治療を受けることが重要です。
強いストレスが甲状腺の不調を招く
なぜストレスでホルモン量が変動するのでしょうか。
それは、ストレスによって免疫が乱れることが影響しています。具体的には、病原菌などを攻撃するための抗体(病原体と戦う物質)が、勘違いして甲状腺を攻撃してしまいます。すると、甲状腺がホルモンを正常に分泌できなくなり、バセドウ病や橋本病が悪化するのです。
ストレスで免疫力が低下するのは「コルチゾール」というホルモンが過剰に分泌されることが一因と考えられています。
コルチゾールは「ストレスホルモン」とも呼ばれ、私たちが怒りや不安を感じたりすると副腎 皮質から分泌されます。このホルモンには、血圧や血糖値を高めるほか、免疫の働きを悪くする作用があります。そのため、強いストレスに長くさらされると、免疫が乱れて甲状腺に不調が起こりやすいのです。
このように免疫の乱れが深くかかわっているため、バセドウ病や橋本病は「自己免疫疾患」に分類されます。よって、病気の悪化を防ぐためには、免疫を乱すストレスを解消しなければなりません。
ストレスの多い人は甲状腺の病気の発症率が7.7倍に
私たちが感じるストレスは、たいてい社会生活の中で生じます。公害や騒音といった環境から受けるストレスもありますが、多くの場合は人間関係や仕事の悩み、あるいは失業、借金、子育て、病苦、離婚、死別といった人の営みの中で受ける心理的ストレスです。
ストレスの多い生活が甲状腺の病気と密接に関係していることについては、国内外で研究が行われています。
東京大学の研究チームは、バセドウ病と診断された228名の患者さんとストレスの関係を調べました。その結果、ストレスの多い生活が、バセドウ病の発症率を大幅に高めると判明したのです。
とりわけ、女性の患者さんはその傾向が顕著で、大きなストレスを抱えている人は、そうでない人よりもバセドウ病の発症率が7.7倍も高くなっていました。
こうした研究結果からもわかるように、甲状腺の病気を患っている人は、日常生活の中で受けるストレスを放置してはいけません。
甲状腺の病気を招くストレス
上のグラフは、旧ユーゴスラビアで行われた研究結果。ストレスがバセドウ病の発症リスクを高めることを示すもので、夫婦げんかによるストレスでは発症リスクが11倍、1カ月以上の失業では8倍、長時間労働では7倍も高まるとわかっている。
バセドウ病や橋本病の人は、特にストレスの存在に「気づく」ことが大切
いったん、病気が悪化して機能異常を起こした甲状腺は、なかなか回復しません。ですから、気落ちしやすい人は、ストレスをため込んで甲状腺の病気が悪化しないように、日ごろから心の健康に配慮しなければなりません。そこで最近、甲状腺の病気の治療に「ストレス管理」を取り入れる医師が増えています。
ストレス管理とは、イライラや不安を感じた気持ちに注意を払い、それ以上、ストレスを感じないようにコントロールすることです。
バセドウ病や橋本病の人は、大きなストレスに悩まされていることを自覚していない人が少なくありません。甲状腺の病気の悪化を防ぐためには、自分にストレスはあるのか、その原因は何なのかを考え、ストレスの存在に「気づく」ことが重要です。
ストレスの存在に気づき、心を穏やかに保つようにすれば、コルチゾールの血中濃度が低下して、免疫の働きが改善していくでしょう。
記事にあるセルフケア情報は安全性に配慮していますが、万が一体調が悪化する場合はすぐに中止して医師にご相談ください。また、効果効能を保証するものではありません。
写真/© Fotolia ©カラダネ
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