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【心臓病の予防食】カカオがおすすめ。心不全の人がとったら血管の柔軟性が高まった
チョコレートの原料として知られているカカオですが、実は健康維持に役立つ成分も含まれています。
この記事では、心臓病の予防という観点から、カカオの働きについて戸田中央病院の椎名一紀先生に解説していただきました。
もちろん、カカオだけとっていれば健康になれるわけではありません。心臓病を患っている人は、専門医の治療を受けることを忘れないでください。
カカオはチョコレートなどの原料。健康維持に役立つ作用が期待される
甘いチョコレートやココアというと、高血圧や糖尿病といった生活習慣病を招いて、ひいては心臓病も引き起こすと考えている人が多いようです。
ところが、最近になってチョコレートやココアの原料であるカカオは、血管を柔軟にして心臓の負担を減らす働きがあるのではないかと考えられるようになり、心不全の改善が期待できると話題になっています。
近年、欧米を中心にカカオの健康への作用が多数報告されており、日本でも愛知県で蒲郡(がまごおり)スタディという大規模研究を行っています。
この研究では、蒲郡市に住む45〜69歳の347人にカカオが多く含まれているチョコレート(含有率72%)を1日25グラム、4週間毎日食べてもらい、試験前後に血圧などを測定し、カカオの作用を評価しました。
最大血圧が2㎜Hg下がると虚血性心疾患が約5%減!?
その結果、最大血圧(正常値は135㎜Hg未満)が、平均125.3㎜Hgから平均122.7㎜Hgに低下したのです。つまり、高カカオチョコレートを4週間食べただけで、最大血圧が平均2.6㎜Hg下がったことになります(グラフ参照)。
この数字だけ見ると、たいしたことがないように思われるかもしれません。しかし、最大血圧が2㎜Hg下がるだけで、虚血性心疾患を約5%減らせることがわかっています。よって、カカオによる心臓病の予防作用が期待できる可能性があるといえるでしょう。
ちなみに、同試験の高血圧の人を抽出して調べたら、最大血圧は平均5.86㎜Hgも下がっていました。カカオの降圧作用は高血圧の人ほど高いのです。
こういった健康作用は、カカオに含まれるポリフェノールのエピカテキンによるものです。エピカテキンはお茶にも含まれていますが、カカオには圧倒的に多く含まれています。エピカテキンによって心臓の負担が軽くなる一番の理由は、血管内で一酸化窒素(NO)が増えるからでしょう。
血管の柔軟性は、血管の内側を覆っている血管内皮細胞の働き(血管内皮機能という)に左右されます。エピカテキンが体内に入って血管の中でNOが増えると、血管内皮機能が働いて血管が拡張し、しなやかになるのです。
心不全の人が食べたら血管内皮機能がアップ
実際にカカオをとると、血管内皮機能が改善したという研究報告が多々あります。その中で、心不全の患者さんを対象にした研究もあります。
その研究では、心不全の患者さん20人を対象に試験を実施。高カカオチョコレートを食べるグループと、カカオの含まれないチョコレートを食べるグループに分けて、血管内皮機能を調べました。
すると、高カカオチョコレートを食べたグループの血管内皮機能は食べて2時間後に平均1%アップ。また、毎日食べた場合には、2週間後に平均1.88%アップしました。一方、カカオの含まれていれないチョコレートを食べたグループは、逆に血管内皮機能が低下したのです。
また、カカオのエピカテキンには、肝臓の代謝を高めて悪玉のLDLコレステロールを減らし、善玉のHDLコレステロールを増やす作用があります。さらに、強い抗酸化力(攻撃力の強い活性酸素を消去する力)を発揮することも特筆すべきでしょう。
LDLは、酸化することで血管の内壁にたまり、心臓病の重大原因である動脈硬化を進行させます。エピカテキンは、LDLを減らすだけでなく、酸化を防いで血管の健康を守ってくれるのです。
先に述べた蒲郡スタディでは、高血圧だけでなく、糖代謝を高めて糖尿病を予防する働きも確認されました。ご存じのように、糖尿病も心臓病を招く原因の一つです。
以上のことから、日常的にカカオをとれば、心臓を守ることに役立つのではないでしょうか。もちろん、カカオは薬ではありませんので、心臓の病気を患っている人は病院で診てもらうことが最重要である点を忘れないでください。
記事にあるセルフケア情報は安全性に配慮していますが、万が一体調が悪化する場合はすぐに中止して医師にご相談ください。また、効果効能を保証するものではありません。
写真/©カラダネ © Fotolia
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