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【腱鞘炎・手根管症候群】はセルフ治療法「テープ整体」のやり方。数日で軽快した人もいる
手指・手首のやっかいなしびれ・激痛・運動障害を引き起こす原因として特に多いのが「腱鞘炎(けんしょうえん)」と「手根管症候群(しゅこんかんしょうこうぐん)」です。
腱鞘炎や手根管症候群についてくわしく知りたい方は記事の一番下にある関連記事をご覧ください。
この記事では、清水整形外科医院院長の清水泰雄先生がすすめる、手指・手首のしびれ・激痛・運動障害などの症状が軽くなる「テープ整体」についてご紹介します。清水先生は、腱鞘炎や手根管症候群と診断された人の中には、前腕部に「しこり」のある人が多いと指摘しています。テープ整体とは、伸縮性のある薄い粘着テープを手や腕に貼ってしこりを除くことで、腱鞘炎や手根管症候群の症状が不思議と改善される画期的な治療法です。
誰にでも必ず成果が現れるわけではありませんが、手の痛みやしびれに悩んでいる人は、ぜひ病院の治療と併せて試してみてください。
腱鞘炎と診断された人は腕の「しこり」を探そう
腱鞘炎と診断されている人は、前腕部の屈筋群(手のひらを上に向けたとき上になり、手首を曲げるのに必要な前腕部の筋肉群)にトリガーポイント(圧痛を伴うしこり)が発生している場合が多いものです。ぜひ探してみてください。
腱鞘炎の人のテープの貼り方
親指が痛む(あるいは動かしにくい)人は親指側、小指が痛む人は小指側の前腕屈筋群に、指で押すと痛みが走るトリガーポイントが見つかるはずなので、そこに伸縮性のある粘着テープ(「キネシオテープ」として薬局やスポーツ用品店、通信販売で市販されている)を貼ります。また、腱鞘炎が疑われる人は当然、痛む指の腱鞘のケアも必要になってきます。そこで、腱鞘炎のテープ整体では、痛みがある指と前腕部にテープを1本ずつ、計2本貼ります(下の図参照)。
①市販されている幅5センチの伸縮テープ(キネシオテープ)をハサミで切り、前腕用(幅5センチ×長さ20センチ)と手首用(幅5センチ×長さ15センチ)の2本を用意する。テープを貼る部位の肌を清潔にしておく。
②まず前腕に前腕用テープを貼る。手のひらを上に向けて手を外側(矢印の方向)に回転させたら、ひじの内側(小指側)から手首の外側(親指側)に向けてテープを引き伸ばさずに貼り、手を戻す。
③次に手首に手首用テープを貼る。手のひらを上に向けて手首を矢印の方向にグッと反らせたら、手首の上面を覆うように手首用テープを横にして引き伸ばさずに貼り、反らせた手首を戻す。
以上で、腱鞘炎のテープ整体は終了です。テープは1〜3日で交換するとともに、肌がかぶれないよう貼る時間は適宜調節する必要があるでしょう。前腕に生じたトリガーポイントを指圧してほぐすと、働きがさらに高まります。
手根管症候群と診断された人の「しこり」の現れ方
次に、手根管症候群と診断されている人は、同じ前腕部の筋肉でも、回内筋(手のひらを下に向ける前腕の筋肉)という筋肉にトリガーポイントの生じている場合が多いものです。それと同時に、手根管がある手首のケアも必要です。
手根管症候群の人のテープの貼り方
手根管症候群のテープ整体では、回内筋と手首にテープを1本ずつ、計2本貼ります(下の図参照)。
①市販の幅5センチの伸縮テープ(キネシオテープ)をハサミで切り、前腕用(幅5センチ×長さ20センチ)と親指用(幅2.5センチ×長さ15センチ)の2本を用意する。テープを貼る部位の肌を清潔にしておく。
②まず親指に親指用テープを貼る。手のひらを上に向けて、痛みを我慢できる範囲で親指を矢印の方向(外側)にグッと反らせて、その状態をキープする。親指が曲がらないように注意する。
親指の腹に親指用テープの一端を貼ったら、親指のつけ根を通って手首の下まで、テープを圧着させる。このとき、テープを引き伸ばさないよう注意。貼り終えたら、親指を自然な状態に戻す。
③次に、前腕に前腕用テープを貼る。手のひらを上に向けて、痛みを我慢できる範囲で手首を矢印の方向にグッと反らせて、その状態をキープする。
手のひらの下半分(親指寄り)に前腕用テープの一端を貼ったら、手首を通ってひじ裏に向けてテープを圧着させる。このときも、テープを引き伸ばさないように注意。貼り終えたら、手首を戻す。
以上で、手根管症候群のテープ整体は終了です。テープは1〜3日で交換するとともに、肌がかぶれないよう貼る時間は適宜調節する必要があるでしょう。前腕に生じたトリガーポイントを指圧してほぐすと、働きがさらに高まります。
数日で痛みやしびれが和らぎ、指がよくなる人も
テープ整体でテープを貼るときは、極めて重要なポイントがあります。それは、痛みを我慢できる範囲で関節を反らせたり筋肉を伸展させたりしてから、必ずその状態をキープしたままテープを貼るということです。
例えば、親指にテープを貼るときは、親指をしっかり反らせた状態でテープを貼りつけるのです。手首に貼るときも、手首をグッと反らせたままテープを圧着させてください。
実際に試せばすぐ実感できるかと思いますが、テープを貼ってから、反らせた親指や手首をもとの状態に戻すと、その部分の緊張が一瞬にして和らぎ、親指や手首の痛みや動きが軽くなる作用が得られます。
早い人では、数日も続ければしびれや激痛が目に見えて軽快し、バネ指がよくなる例も少なくありません。これがテープ整体の真骨頂といえます。
テープの力で筋肉の硬直が和らぎ血流増加
腱鞘炎や手根管症候群で悩んでいる人は、手指の酷使や偏った使い方などの影響により、手指や手首・前腕部の筋肉が硬くこわばっているものです。また、更年期以降に女性ホルモンが不足すれば、筋肉自体がどうしても硬くなってしまいます。
筋肉が硬直すれば、周囲の組織では、当然のことながら血液やリンパ液の流れが滞り、その影響でトリガーポイントも生じやすくなります。トリガーポイントからは発痛物質が次々と放出されることが知られており、実はこれがしびれや痛みの直接的な原因になるほか、血液やリンパ液の流れをさらに悪くする悪循環をも招くのです。
だからこそ、テープ整体を試してほしいと思います。トリガーポイントが生じた部分に伸縮性のあるキネシオテープを貼っておけば、テープの力でその間ずっと皮膚が引っぱられ、皮下と筋肉の間に一定の余裕ができます。
すると、滞っていた血液やリンパ液の流れが継続的に促されると同時に、発痛物質も洗い流され、トリガーポイントがしだいに除かれます。そうして症状が和らいでいくのです。
しかも、筋肉にテープを貼っておくと、テープの収縮力によって筋肉の硬直がスッと和らいで、関節の可動域(動かせる範囲)も広がります。テープ整体で指や手首がすぐに動かしやすくなるのは、そのためです。
さらに、指や手首に正しくテープを貼れば、やはりその収縮力によって、腱鞘や手首の狭窄が和らぎ、腱や神経の圧迫を物理的に取り除く作用も期待できるでしょう。
テープ整体のいい点は、おおよその位置にテープを貼れば、安静にしていなくても十分に症状を改善できる場合があることです。
なお、一度貼ったテープは、粘着力が続く限り2〜3日貼りつづけてもかまいませんが、衛生面で気になる人は毎日取り替えればいいでしょう。また、肌が弱い人は粘着剤で肌がかぶれるおそれがあるので、貼る時間を適宜調節してください。乱暴にはがすのも禁物です。
記事にあるセルフケア情報は安全性に配慮していますが、万が一体調が悪化する場合はすぐに中止して医師にご相談ください。また、効果効能を保証するものではありません。
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