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【首が痛い】【手がしびれる】は頸椎症かも。頸椎症とは?原因や治し方を徹底解説
●首が痛い
●重症の肩こりがある。または肩が痛い
●腕や手の指がしびれて、字を書いたりボタンをかけたりするのが困難な場合がある
上記の症状で悩んでいる方は、頸椎症(けいついしょう。専門的には変形性頸椎症という)という病気かもしれません。重症化すると歩けなくなる場合もある頸椎症について、整形外科専門医の竹谷内(たけやち)康修先生に聞きました。
首や肩の痛みは放置せずに必ず整形外科専門医の治療を受けることが重要です。特に首は非常に重要な器官ですので動かすさいも無理は禁物です。
「首が痛い」以外に、肩こりも招く
頸椎症とは?
まず、頸椎症は簡単にいうと、頸椎(首の部分にある背骨)の変形によって引き起こされる病気のこと。頸椎症の初期には、首・肩の痛みやこりなどが現れますが、急激なものではなく、漠然とした痛みを感じるのが特徴です。
私の医院を訪れる患者さんでも、「単なる肩こりと思っていたが実は頸椎症だった」というケースが少なくありません。
頸椎症を長く放置して重症化させてしまうと、ひざに力が入らなかったり足がしびれたりして、うまく歩けなくなることもあるので軽視は危険です。
そもそも頸椎とは?〜頸椎症が起こるメカニズム〜
頸椎は首の部分にある背骨。7つの椎骨から成る
なぜ首が痛くなるのか?頸椎症を理解するために、頸椎の構造から説明しましょう。
頸椎とは首の部分にある背骨のこと。正常な状態では7個の椎骨が軽く前にそるように柱状に積み重なってできています。椎骨は、前側の「椎体」と後ろ側の「椎弓」という部分に分けられます。
椎体と椎弓の間には、トンネル状の空洞(脊柱管)があります。その空洞の中心部を、脳から出ている「脊髄」という中枢神経の束が通っています。脊髄からは神経が枝分かれし、隣り合った椎骨のすき間(椎間孔)から脊柱管の外へ出て腕や手に向かって伸びています。この末梢神経の根元を「神経根」といいます(下の図参照)。
椎骨に骨棘(トゲ)ができて神経を刺激する
それぞれの椎骨は、椎間板という軟骨と椎間関節によって連結しています。椎間板は本来、弾力性に富んだ軟骨組織。首を動かしやすくしたり、衝撃を吸収したりする重要な役割を担っています。
ところが、椎間板は20歳を過ぎるころから弾力性が失われてしだいに硬く薄くなっていきます。さらに椎間板は、重力の影響を長年受けつづけることで、すり減ったりつぶれたりします。
一方の椎間関節は、椎弓と椎弓の間にあって、椎間板に加わる衝撃を弱める働きを果たします。私たちが首を曲げたり顔の向きを変えたりするときには、この椎間関節が働きます。
椎間関節が正常に働くためには、首の筋肉を収縮させる力が必要です。首の筋力が衰えてくると、椎間関節がうまく働かず、椎間板に無理な負担がかかるようになります。その結果、椎間板や椎間関節が変形し、椎骨の連結が不安定になります。すると、椎骨は不安定さを補おうとして変形し骨棘というトゲのような突起が生じます。
椎骨に骨棘ができること自体は、さほど問題ではありません。ところが、骨棘が、近くを通っている脊髄や神経根に触れたり圧迫したりすると、首や肩の痛み、腕や手のしびれといった頸椎症の症状が現れるというわけです(上の図を参照)。
頸椎症は治せる〜病院での治療法とセルフケア〜
頸椎症の病院での治療法
頸椎症は、初期の段階では首を動かすと痛みを感じる程度ですが、椎間板や椎間関節の働きが衰えるにつれて症状は悪化していきます。
頸椎症の症状は、初期なら治療で改善する見込みが大きいので、首に痛みや違和感のある人は、病医院で首の検査を受けるようにしましょう。
頸椎症の治療で広く行われているのは、鎮痛剤(痛み止めの薬)を服用する「保存療法」です。体への負担が少ない点が長所ですが、いったん症状が治まっても、再び痛みが現れる場合が多いようです。
専用の医療機器を使って首を上方へ引っ張る「牽引療法」、温熱板や電気を使って首や肩を温める「温熱療法」、首・肩・腕の筋肉や関節を曲げ伸ばしする「運動療法」なども広く行われていますが、残念ながら、すべての患者さんに有効とはいえません。
自分で神経の圧迫を取るのも重要
頸椎症の症状をよくするために、自分でできることはあるのでしょうか。
椎骨にできた骨棘が脊髄や神経根などを圧迫しているかぎり、痛みやしびれは治まりません。ですから、神経を骨棘による圧迫から解放する必要があります。
そして圧迫を解放するには、脊髄や神経根の通り道である脊柱管や椎間孔を広げることが、とても重要なポイントになるのです。
下の写真は神経の圧迫を改善するうなじ伸ばしという方法です。
うなじ伸ばしは、脊柱管や椎間孔を広げる運動法です。近年は多くの病医院で、脊柱管や椎間孔を広げることが頸椎症治療に重要だと認識されはじめました。私の医院でも、通常の治療のほかに脊柱管や椎間孔を広げる治療を行い、患者さんにも自宅で行えるように指導しています。
やり方については、別の記事で解説します。
頸椎症が疑われる人は、必ず病院で治療を受けることが最重要です。そのうえで、セルフケアを無理のない範囲で試してみてください。
記事にあるセルフケア情報は安全性に配慮していますが、万が一体調が悪化する場合はすぐに中止して医師にご相談ください。また、効果効能を保証するものではありません。
写真/© Fotolia ©カラダネ
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