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認知症の原因には、うつがあるって本当?【認知症Q&A②】
認知症とうつには、少なからず関係があるようです。
認知症専門医である伊東大介先生に話を聞きました。
認知症の疑いがある人、あるいはうつの可能性がある人は、必ず専門医に診てもらってください。
60歳未満でうつ病を発症した人は、認知症になるリスクが高まる
高齢者のうつ病は認知症とよく似ており、気分の落ち込みや意欲の低下に加え、判断力・注意力・集中力の衰えや記憶障害といった認知症に似た症状の現れることがあります。
このような認知症に似た症状を伴ううつ病を「うつ病性仮性認知症」と呼び、本格的な認知症とは区別しています。
とはいえ、うつ病の人の中には、本格的な認知症に進むケースが少なくありません。実際、認知症の人の1〜2割がうつ病を合併しているというデータがあります。また、オランダの研究では、60歳未満でうつ病を発症した人は、その後に認知症になるリスクが3.8倍も高くなることが報告されています。
こうしたことから、うつ病と認知症には密接な関連があると考えられており、患者さんの状態が認知症なのか、うつ病なのか、両者を合併しているのかを見分けるのは専門医でも難しいのです。
認知症とうつ病の違い
とはいえ、うつ病と認知症の症状には違いがあります。
まず、うつ病には、症状に波があります。そのため、気分の落ち込みが激しい日もあれば、調子のいい日もあります。認知機能の障害も、日によって変動が見られます。それに対し、認知症はそうした波は少なく、認知機能の障害が一貫して認められます。
また、うつ病の人は自分を責めたり、引きこもったりしがちであるのに対し、認知症の人では他人を疑ったり、責めたりするような傾向が強くなります。
さらに、認知機能を調べる知能テストを行うと、うつ病の人は「できません」「わかりません」といって解答を放棄しようとする態度が見られます。
認知症の人は、答えをはぐらかしたり周囲のせいにしたりと、自分は正常であるというような「取り繕い」が見られます。このとき、付き添いの家族に確認を求めるような「振り向き徴候」があるのも認知症の特徴です。
症状がよくなったり悪くなったりと変動すれば、うつ病を疑う
うつ病と認知症との区別は、一度の診察だけで確定できるものではありません。
半年ほど定期的に診察して、一貫して認知機能障害があり、それが徐々に進行していくようであれば認知症という診断になります。診察の過程で、症状がよくなったり悪くなったりと変動があるなら、うつ病を考えます。
うつ病であれば、抗うつ薬で治療を行います。すると、うつ症状の改善に伴い、認知症に似た症状も改善するケースが多く見られるのです。
この記事は、医療や健康についての知識を得るためのもので、特定の見解を無理に推奨したり、物品や成分の効果効能を保証したりするものではありません。
写真/© Fotolia ©カラダネ
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