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認知症の予防には「高血圧や糖尿病の改善が重要」と聞いたが本当か【認知症Q&A③】

解説 慶應義塾大学病院講師・日本認知症学会専門医
伊東大介

認知症の予防には、実は高血圧や糖尿病といった生活習慣病を改善させることが有効かもしれません。いったい、認知症と「高血圧や糖尿病」にどのような関係があるのでしょうか。

認知症専門医の伊東大介先生に解説していただきました。

認知症の疑いがある人も高血圧や糖尿病といった生活習慣病の悩みを抱えている人も、まずは病院で専門医に診てもらうことが最重要です。



高血圧や糖尿病の人は認知症になりやすい?

近年、国内外の研究によって、認知症の発症を促す病気や老化現象のあることがわかってきました。そうした病気の代表格が、高血圧や糖尿病、脂質異常症といった生活習慣病です。

このうち高血圧は、脳血管性認知症に直結する病気です。福岡県久山町で実施された研究では、中年期(40歳〜64歳)に高血圧にかかると脳血管性認知症の発症率の高くなることが報告されています。また、中年期の糖尿病では、アルツハイマー病と脳血管性認知症の両方の発症率が約1.7倍、脂質異常症ではアルツハイマー病のリスクが2〜3倍にも上昇することがわかっています。

そのため、目立った物忘れがなくても、早期のうちにこれらの生活習慣病をしっかりと治療することが認知症の予防につながると考えられます。

65歳以上は低血圧や低血糖も認知症のリスクを高める?

さらに、65歳以上の高齢になると、脳の血流が不足し意識レベルの低下を招くため、低血圧や低血糖も認知症のリスクになります。心臓病などほかの病気があれば別ですが、高齢者は血圧のコントロールのさいに低血圧を招かないよう配慮したり、糖尿病の治療で血糖値を下げすぎないように気をつけたりすることが重要です。

高齢になるとコレステロール値が高いほうがいいといわれるので、脂質異常症についても適切な治療が必要になります。
このように、血圧や血糖値、コレステロール値は、年代によってコントロールすることが望まれるのです。

このほか、心房細動(不整脈)がある人も、心臓の中の血栓(血の塊)が脳の血管をつまらせて脳を起こしやすく、脳血管性認知症になる危険度も高くなります。これについてもできるだけ早く治療をすることが望ましいといえるでしょう。

難聴の人も認知症に注意

歯や耳の老化も軽視できません。厚生労働省の調査では、歯を失ってかめない人は、最大1.9倍も認知症になりやすくなることが報告されています。また、歯周病も認知機能を悪化させる重大な要因になることもわかっています。

難聴も問題で、米国国立加齢研究所の調査では、軽い難聴なら2倍、重症になると5倍も認知症になりやすくなることが報告されています。これは、耳が聞こえにくくなると、人との会話がスムーズにできなくなり、認知機能が低下することが原因といえるでしょう。
こうしたことから、定期的に歯科医を受診したり、耳が遠くなってきたら補聴器を利用したりして、歯や耳の老化の対策を講じることも大切です。

認知症は一般に、発症する15〜20年前から脳にゴミ(アミロイドをはじめとしたたんぱく)が蓄積しはじめ、65歳を過ぎると徐々に発症していくと考えられています。目立った物忘れがないうちから生活習慣病や老化現象の対策に取り組むことが認知症の予防につながるのです。

この記事は、医療や健康についての知識を得るためのもので、特定の見解を無理に推奨したり、物品や成分の効果効能を保証したりするものではありません。

写真/© Fotolia ©カラダネ

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