カラダネ(わかさ出版)
医師や専門家とあなたをつなぐ、
健康・食・くらしのセルフケアが見つかる情報サイト
【逆流性食道炎の薬】胃酸の分泌抑制、消化機能の向上など治療薬を医師解説
逆流性食道炎の人は、生活習慣の改善に加えて、投薬治療を行うことが一般的です。この記事では、逆流性食道炎の治療に使われる薬について、逆流性食道炎にくわしい北山大祐先生にくわしくお話を聞きました。
逆流性食道炎の疑いがある人は、適切な治療を受けるためにも、胃腸科や消化器科で診てもらうことを忘れないでください。
また、逆流性食道炎の人が自分でできる対策もいくつかありますので、一番下の関連記事をご覧ください。
逆流性食道炎は生活習慣の改善と投薬治療が基本
胸やけや呑酸(どんさん。すっぱい胃液がのどまで上がってくる感覚)、のど元の違和感など、逆流性食道炎など胃食道逆流症の症状は、命にかかわることはありませんが、とてもつらいものです。
こうした症状がくり返し起こる人は、内視鏡検査などで診断してもらったうえで、しっかり治療することが大切です。
逆流性食道炎の治療の基本は薬物療法で、胃酸の分泌を抑える薬の内服が中心になります。もちろん、胃液の逆流が起こる原因には生活習慣などのさまざまな要因が考えられます。
その一つとして「食道ヘルニア」という、食道と胃のつなぎ目のゆるみが原因で胃酸が逆流しやすくなっている場合があります。
私は、そうした患者さんに対して生活習慣の改善策をお話ししながら、投薬などの治療を行っています。
胃液の中の胃酸を減らす「酸分泌抑制薬」
逆流性食道炎の治療の中心になるのが、胃酸の分泌を抑える「酸分泌抑制薬」です。
噴門部(食道と胃のつなぎめ)のゆるみは生まれつきであったり、加齢による変化であったりするため、ゆるみそのものを改善できる薬はありません。そこで、酸分泌抑制薬で胃液の中の胃酸を減らし、胃液が食道内に逆流しても食道を傷つけないようにするわけです。
プロトンポンプ阻害薬(PPI)とは何か
酸分泌抑制薬で第一選択として使われるのが「プロトンポンプ阻害薬(PPI)」です。
プロトンポンプ阻害薬(PPI)は、現在のところ、最も強い酸分泌抑制薬で、胃潰瘍や十二指腸潰瘍のときにも使われます。
私たちは、何かを食べたとき、いくつもの指令が胃壁に届いて胃酸を分泌するのですが、その最終段階でプロトンポンプという分子が細胞の細胞膜上に存在して、実際に塩酸を作っています。
それに対してPPIは、このプロトンポンプに付着して本来の働きを阻害します。そのために、プロトンポンプは塩酸を作るという仕事ができなくなるのです。つまり、PPIを内服すると、そのあと1日くらいは胃酸の分泌が強力に抑えられることになります。
ちなみに、「胃酸を抑えたら、食べたものを消化できなくなるのではないか」と心配する人もいますが、PPIが原因で消化不良を起こすことはないので安心してください。
PPIは、最初に開発されたオメプラゾールという薬剤が長く使われていましたが、その後、ランソプラゾール、ラベプラゾール、エソメプラゾールと発売され、2015年にはボノプラザンという新しい薬剤が登場しました。胃酸分泌を抑える力は大きくは変わらないと私は考えていますが、ボノプラザンは特に効果の現れるまでが早いことで知られており、広く使われています。
しかし、症状によっては処方する種類を変えることもあります。ボノプラザンについては、別の記事でくわしく述べるとともに、その点にもふれておきます。
プロトンポンプ阻害薬(PPI)とあわせて使われる薬
逆流性食道炎の薬物治療では、第一選択肢のPPIと併せて、その効果を補完する薬が使われることもあります。以下、そうした薬を紹介しましょう。
H2ブロッカー
H2ブロッカーというヒスタミンH2受容体拮抗薬を使うこともあります。これは、胃酸の分泌を促すヒスタミンという物質を受け取る受容体をブロックすることで、胃酸分泌を促す指令の伝達を止めようというものです。
消化管運動機能改善薬
食後に胃もたれなどがあると、消化不良から胃液が逆流しかねません。胃の働きをよくして蠕動運動(内容物を先送りする運動)を活発にすることにより、胃酸の逆流を少なくすることが可能です。
そのためには、消化管運動機能改善薬であるモサプリド(商品名ガスモチン)も有効です。
漢方薬
自覚症状改善と体質改善などを期待して漢方薬を使うことがあります。こうした場合、のどのつかえ感や不安神経症などに効果のある「半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)」という漢方薬を、非びらん性胃食道逆流症の患者さんを中心に使います。
以上、逆流性食道炎の薬物治療に使う主な薬について説明しました。
しかし、これらの薬を使って逆流性食道炎の症状がよくなったとしても、発症したときと同じような生活習慣を続けていれば、多くの場合は再発してしまいます。
そうならないためにも、薬を使うと同時に症状の原因となる生活習慣を改めることが大切です。
この記事は、医療や健康についての知識を得るためのもので、特定の見解を無理に推奨したり、物品や成分の効果効能を保証したりするものではありません。
写真/© Fotolia ©カラダネ
この記事が気に入ったらいいね!しよう