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胃がんの主原因【ピロリ菌とは?】中高年は誰にも検査と除菌が急務
ピロリ菌とは、いったいどのような菌なのでしょうか。感染を放置すると、どんな影響が現れるのでしょうか。
江田クリニックの江田証先生に話を聞きました。
胃がんの人の99%が現在、ピロリ菌に感染している人、もしくは過去に感染していた人
日本人の死因の第1位が、がん(悪性新生物)であることはみなさんもよくご存じでしょう。厚生労働省「人口動態統計」によると、平成28年の日本人の死亡者のうち、がんによる死亡者数は約37万4000人で、全体の3分の1近くを占めています。
がんの部位別の死因は、1位が肺がん、2位が大腸がんで、3位が胃がんです。胃がんは日本人にとっての宿敵で、1998年までの長い間、がんの部位別死因のトップでした。診断技術の進歩などにより、ほかのがんに比べて早期発見しやすくなったため、胃がんでの死亡者数は年々減少しています。
とはいえ、日本は、胃がんの発症率が欧米の2〜6倍にもなる「胃がん多発国」です。高齢になるほど発症しやすく、年間に約4万5000人もの命を奪う胃がんは、決して油断できない大敵です。そして、その胃がんは、「ピロリ菌」という細菌の感染が主原因です。
胃がんの患者さんの99%が、現在、ピロリ菌に感染している人、もしくは過去に感染していた人であることが報告されています。
ピロリ菌の分泌する毒性物質が、胃をがん化させる
ピロリ菌とは、正式名を「ヘリコバクター・ピロリ」といい、胃に住み着いている細菌です(写真参照)。
かつては専門家の間でも、強酸性の胃の中で細菌は存在できないと信じられていましたが、1984年にオーストラリアのマーシャル医師らは、ピロリ菌が胃に感染し胃炎・胃がんを引き起こすことを解明。2005年にノーベル賞を授与され、大きな話題となりました。
ピロリ菌は、胃酸をアルカリ性のアンモニアで中和してみずからを胃酸から守り、胃の粘液中を泳ぎ、胃の細胞に接着して数週から数ヵ月で炎症を起こし「ピロリ感染胃炎」を引き起こします。ピロリ感染胃炎の発症率は100%で、このうち約88%以上が、胃粘膜がして胃酸が出なくなる「萎縮性胃炎」へと移行します。
そして、萎縮性胃炎が長期化すると、ピロリ菌が分泌する「CagA(キャグエー)」という毒性のあるたんぱく質が、胃の表面の上皮細胞をがん化させて、胃がんを引き起こすのです。WHO(世界保健機関)では、ピロリ菌を「明確な発ガン因子」と認定。さらに、ピロリ菌は、胃ガンだけでなく、胃や十二指腸潰瘍も招くことがわかっています。
ピロリ菌感染者は全員が除菌すべき
ピロリ菌は、年齢が高いほど感染率が高く、ある調査では、50歳未満の感染率は36%なのに対して、60代以降の感染率は84%という報告があります。
そのため、中高年は必ず、ピロリ菌の有無を調べる検査を受けてほしいものです。ピロリ菌に感染しているかどうかは、検査ですぐわかります。
ピロリ菌の感染がわかって体が元気なら、年代を問わず80代でも90代でも、すぐに除菌治療を受けることが大切です。除菌が早いほど、胃がんのリスクは低減します。日本ヘリコバクター学会では、「ピロリ菌感染者は、原則、全員除菌すべき」というガイドラインを発表しています。
2013年からは、これまでの胃・十二指腸潰瘍の患者さんに加え、ピロリ感染胃炎の患者さんにも、ピロリ菌の除菌治療に健康保険が使えるようになりました。
ところで、ピロリ菌の除菌後は「逆流性食道炎」が起こりやすくなるとの指摘もありますが、症状は比較的軽く、軽い胃薬で対処できます。
ピロリ菌の感染者は、感染していない人に比べ150倍も胃がんになりやすいだけでなく、実に数多くの病気を招くこともわかってきました。ためらわず除菌すべきでしょう。
この記事は、医療や健康についての知識を得るためのもので、特定の見解を無理に推奨したり、物品や成分の効果効能を保証したりするものではありません。
写真/© Fotolia ©カラダネ
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