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脳梗塞の薬【t-PA】について。後遺症が残りにくくなる?発作後4時間が勝負

解説 山口クリニック院長 脳神経外科医
山口三千夫

脳梗塞の発作から4時間以内に使用することによって、後遺症が残りにくくなる新薬があることをご存じでしょうか。どのような薬なのか、山口クリニック院長で脳神経外科医の山口三千夫先生にお聞きしました。あわせて、発作から4時間以上過ぎてしまった場合には、どのような治療を受けることになるかについてもご説明いただきました。

もちろん、脳梗塞や脳出血の心配がある人は、すぐに脳神経外科や神経内科で診てもらうことが大切です。

カラダネでは、脳梗塞や脳出血の発症と再発の防ぎ方、もしものときの対処法や治療法など、知りたいことがすぐに見つかる記事を多数用意しています。関連記事からご覧ください。

後遺症を防ぐ薬「t-PA」とは何か?

「t-PA」の目的は短時間で血栓を溶かし、脳細胞の死滅を最小限に抑えること

近年、脳梗塞の治療は格段に進歩し、発作後約4時間以内に治療すればマヒなどの後遺症が残りにくくなりました。中には、後遺症が全く現れないケースもあります。

この治療を可能にしたのが「t-PA(ティーピーエー)」と呼ばれる新しい血栓溶解薬。1時間ほどかけてこれを点滴し、体内の酵素を活発にして血栓(血液の塊)を溶かします。

従来の血栓溶解薬は血栓を溶かす力が弱く、大量に使うと出血を起こし、非常にやっかいでした。ところがt-PAは、短時間で強力に血栓を溶かして血流を再開させ、脳細胞の死滅を最小限に抑えるのです。

t-PAを発作後4時間半以内に投与しなくてはいけない理由

ただし、t-PAは症状を劇的に改善させる効果がある反面、遅くとも発作後4時間半以内に投与を開始する必要があります。

血栓によって血流が止まると、それより先にある血液の流れていない血管はもろくなっています。そこにt-PAによって血流が再開すると血管が破れて出血を起こし(出血性脳梗塞)、非常に危険な状態に陥ってしまいかねないのです。

このようなことから、t-PAは、治療開始が遅れた場合だけでなく、発作がいつ起こったのか明らかでない場合にも使われません。また、過去3カ月以内に脳梗塞を発症した人にも使われないなど、t-PAにはいくつかの制約があります。

t-PAが使えない場合の治療法

脳梗塞の発作から4時間以上が過ぎた場合の治療法

治療が遅れると、t-PAの治療は受けられません。その場合、従来の血栓溶解薬「ウロキナーゼ」の投与に加え、血液中の凝固因子(血液を固める成分)の働きを抑えて血栓を防ぐ「抗凝固療法」、血小板の凝集を抑えて血栓を防ぐ「抗血小板療法」、さらに「抗脳浮腫療法」「脳保護法」という治療が行われることがあります。

むくみによる脳細胞の損傷を防ぐ「抗脳浮腫療法」

抗脳浮腫療法は、発症後1〜2日たつと病巣部の周辺の組織に現れるむくみを抑える治療法です。血栓が大きいアテローム血栓性脳梗塞や心原性脳塞栓症(心臓の血栓が流れて脳の血管をふさぐ脳梗塞)の場合、むくみが起こりやすく、これによる脳細胞の損傷を防ぐために行われます。

有害物質が病巣部の周辺に発生するのを抑えて脳細胞の死滅を防ぐ「脳保護法」

脳保護法は、病巣部の周辺に活性酸素(老化を進める有害物質)などが発生し脳細胞を損傷することがあるため、こうした有害物質を抑える治療法です。これによって正常な脳細胞の死滅を防ぎ、損傷を最小限に抑えます。

こうした治療によって、マヒなどの後遺症をかなり抑えることができます(これらの治療はt-PA治療と同時に行われることもあります)。ただし、t-PA治療ほどの回復は見込めないので、一刻も早い治療が望まれます。

この記事は、医療や健康についての知識を得るためのもので、特定の見解を無理に推奨したり、物品や成分の効果効能を保証したりするものではありません。

写真/© Fotolia ©カラダネ

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