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【歯周病を歯磨きで治したい①】歯間をマッサージする歯磨き法がおすすめ。歯肉が再生する?

解説 岡山大学名誉教授
渡邊達夫

歯周病は、正しい歯磨きで対策できます。とはいえ、歯磨きのやり方が重要です。
この記事では、全く新しい歯磨き法を考案された岡山大学名誉教授の渡邊達夫先生に話をお聞きしました。

もちろん、歯周病の人は定期的に歯科医院に通って治療を受けることが重要である点を忘れないでください。



歯周病は歯を失う原因の第1位

歯周病(歯槽膿漏)は、日本人の成人が歯を失う原因の第1位です。歯周病がやっかいなのは、初期症状が自覚しにくく放置してしまい、重症化しやすいことです。

歯周病の初期である歯肉炎の段階では、歯肉(歯ぐき)がはれて出血が少しあるだけなので、自分が歯周病だと自覚する人はあまりいません。しかし、歯肉炎を放置すると、歯ぐきからの出血のみならず、ウミが出て異臭を放ったり、歯がグラついたりして、いずれは歯が抜け落ちてしまいます。
歯周病を防ぐためには、歯肉炎の原因となる歯垢(しこう)や歯石が、歯と歯の間の歯ぐき(専門的には歯間乳頭部〈しかんにゅうとうぶ〉という)につかないようにすることが肝心です。

歯周病コラム 歯垢と歯石の違い
歯垢とは、字のとおり歯の垢(アカ)です。歯に白いネバネバしたものがついている場合があるかと思いますが、それが歯垢で、別名ではプラークといいます。歯垢は、いわば細菌の塊です。歯石は、歯垢を放置して硬くなったものをいいます。

従来の歯磨き法では歯周病の原因の歯垢を十分に取り除けない

歯周病対策には歯茎のマッサージが重要

歯石がいったんついてしまったら、歯科医院で除去してもらわなければ取れません。しかし、その前段階である歯垢なら毎日の歯磨きでも十分に取り除けます。また、上手に歯磨きをすると歯間乳頭部へのマッサージ効果も得られて、歯肉の細胞の再生も期待でき、歯周病の予防・改善にさらに役立つはずです。
実は、歯磨きは歯垢を取り除くとともに、歯茎のマッサージが重要なのです。

とはいえ、みなさんがふだん行っている歯磨き法(ブラッシング)では、歯間の歯垢を十分に除去できず、歯肉をマッサージして歯ぐきを引き締める効果もさほど期待できません。

一般に行われている歯磨き法は、歯ブラシの毛先を歯に直角に当てて左右に動かす「スクラッピング法」、毛先の側面を歯に当てて手首を半回転させる「ローリング法」、毛先を歯周ポケットに対して斜め45度に当てて細かく振動させる「バス法」です。

しかし、こうした歯磨き法では、歯間に歯ブラシの毛先がうまく届きません。そのため、歯ぐきの細胞の再生にも結びつかないのです。

歯垢除去と歯茎のマッサージができる歯磨き法

では、デンタルフロス(糸ようじ)を使用した場合はどうでしょうか。確かにデンタルフロスは、歯と歯のすきまに残った食べカスなどの除去に有効ですが、歯間乳頭部には刺激が加わらず、マッサージ効果はほとんど得られません。

そこで私は、歯間の歯垢除去に役立つばかりか歯肉へのマッサージ効果を同時に得られる新たな歯磨き法「歯間マッサージ歯磨き」(正式には「つまようじ法」という)を考案しました。
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この歯磨き法のやり方は、歯ブラシの毛先を歯間に出し入れします。具体的にいうと、歯ブラシの毛先を歯間に軽く押し込むだけ(上の写真参照)。

とても単純ですが、歯周病の改善が期待できます。なぜなら、歯間にたまった歯垢を効率よく除去できるうえ、歯間乳頭部にピンポイントで刺激を与えられて歯ぐきの血流や細胞の再生を促せるからです。

患者さんの歯磨き法からヒントを得た

私が、この歯間マッサージ歯磨きのヒントを得たのは1980年代、患者さんに歯磨き指導を行っていたときのことでした。歯磨き指導では磨き残しを見つけるために、染色剤を患者さんの歯に塗り、汚れ(赤く染まった部分)を落とす磨き方を教えます。このやり方は、みなさんもご存じの人が多いのではないでしょうか。

指導中は、本人にも試行錯誤して磨いてもらうのですが、患者さんの中に歯ブラシの毛先を歯間に入れて磨く人がいました。歯間が最も赤く染まっており、そこをしっかり磨こうと歯ブラシの毛先をつまようじのように挿入していたわけです。
そのようすをつぶさに観察していた私は、「歯ブラシの毛先を歯間に入れれば、歯垢が取れると同時に歯間乳頭部をマッサージできるのではないか」と直感しました。

そして、ほかの患者さんに歯ブラシの毛先を歯間に入れるブラッシング法を実施したところ、「歯肉が引き締まった」「歯のグラつきが治った」という喜びの感想が続々と寄せられたのです。
この経験をきっかけに歯磨き法の研究を進めた私は、この歯磨き法こそが、歯周病の予防・改善に役立つやり方であるという結論に達しました。

岡山大学歯学部の卒業生を中心に広まりつつある

その後、岡山大学歯学部の予防歯科学教室でその有効性を説き、卒業生を中心に多くの歯科医院が歯間マッサージ歯磨きを患者さんに指導し、術者磨き(歯科医や歯科衛生士が患者さんに行う歯磨き)に取り入れています。

歯間マッサージ歯磨きは誰でも行える歯磨き法です。ぜひ、今日から試していただきたいと思います。

記事にあるセルフケア情報は安全性に配慮していますが、万が一体調が悪化する場合はすぐに中止して医師にご相談ください。また、効果効能を保証するものではありません。

写真/© カラダネ © Fotolia

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