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【なぜ?】血管の老化が進むと、見た目が老ける理由とは(国立大学教授が解説)

解説 愛媛大学附属病院抗加齢・予防医療センター長
伊賀瀬道也

見た目が、1歳でも2歳でも若く見られたい人は必読です。
実は、「見た目の若さ」は体内の「血管の老化度」が関係しています。つまり、見た目が若い人は、体内の血管も若い(動脈硬化が進んでいない)と考えられます。くわしくは下記の記事をご覧ください。

この記事では、血管が老化する(つまり動脈硬化が進む)と、なぜ見た目が老けてしまうのか……その理由について、愛媛大学特任教授の伊賀瀬道也先生に話を聞きました。

動脈硬化が進むと、シミを作るホルモンが増える

早速、解説します。
血管の老化を招く重大原因の一つに、内臓脂肪があります。内臓脂肪が増えると、血圧を上げるホルモンや血糖値を下げるインスリンの効きを悪くするホルモンなどの分泌が増えます(つまり血圧や血糖値が上がりやすくなります)。
逆に、動脈硬化(血管の老化)を防ぐホルモンの分泌は減ります。つまり、内臓脂肪が増えると動脈硬化が進むのです。

さらに、内臓脂肪はシミを作り出すホルモンの分泌を増やすとわかってきました。それが「エンドセリンⅠ」です。実は皮膚科の領域では、シミの発生にエンドセリンⅠが関与していることは、以前から知られていました。

コラム①エンドセリンⅠがシミをどう増やす?
紫外線が皮膚の表皮に到達すると、メラノサイトという細胞がメラニン色素を作り出します。このメラニン色素は皮膚の新陳代謝(古いものと新しいものの入れ替わり)によってアカとなり、皮膚からはがれ落ちます。ところが、メラノサイトを活性化させるエンドセリンⅠが分泌されると、皮膚の新陳代謝でメラニン色素がはがれ落ちても、新たにメラニン色素が作り出されるため、シミがいつまでも残ってしまうのです。

一方、私が専門とする循環器内科の領域では、血管の内皮細胞(血管の内壁にある細胞)から産生されるエンドセリンⅠが動脈硬化を促し、血管年齢を高めることが知られていました。特に、内臓脂肪が多い人ほどエンドセリンⅠの分泌が多くなることもわかっています。

この2つの事実が結びつくと、動脈硬化が進んでいる人ほど内臓脂肪は多いと推測でき、結果的にエンドセリンⅠも増えて、シミも増大することになります。つまり、血管年齢が高い人ほど見た目年齢が高いのは、内臓脂肪の増加が深くかかわっている可能性があるのです。

AGEが増えると動脈硬化が進み、シミが増える

さらに、血管年齢と見た目年齢を一挙に老けさせる原因として私たちが注目しているものに、「AGE」という物質があります。

AGE(日本語で「終末糖化産物」という)は、ブドウ糖がコラーゲンなどのたんぱく質と結合してできる最終形の物質で、いわば糖質のなれの果てです。最近の研究によれば、動脈硬化が進んで内臓脂肪や血液中の中性脂肪が増えるほど、AGEも増えやすいことが報告されています。

コラム②AGEはなぜ増える?
基本は食事で増えます。ご飯や麺類などの糖質、甘い物などの飲食物をとりすぎて、血液中で行き場を失った糖は、血管の主成分のコラーゲン線維に付着します。そして、その一部は「アマドリ化合物」という物質に変わります。このアマドリ化合物の成れの果てがAGEです。

AGEが体内にたまると、血管を形成するコラーゲンの柔軟性や弾力性を奪って動脈硬化を進め、血管年齢を高めます。動脈硬化は血管の炎症が原因と考えられ、AGEが炎症の一因となり血管にダメージを与えるのではないかと考えられています。
また、AGEがRAGEというAGEの受容体と結合すると酸化反応を促し、活性酸素(酸化力の強い悪玉の酸素)を大量に発生させることも、さらなる動脈硬化の引き金になります。

表皮角化細胞でAGEが増えると、シミのもとになるメラニンの生成を引き起こすエンドセリンⅠが増えて、シミやシワを作ることもわかっています。

内臓脂肪・AGE減らしを患者さんに指導。見た目が若々しくなった!

話をまとめましょう。
シミやシワを改善して見た目年齢を若返らせるには、紫外線対策が重要なのは間違いありません。それに加え、内臓脂肪とAGEを減らして血管年齢を若く保つことも重要という点が、ここまでの解説でおわかりいただけたのではないでしょうか。

私たちは、これまでの研究結果をもとに、血管を若返らせるという観点から見た目を若々しく保つ方法を患者さんに指導してきました。その結果、見た目の若返った人がおおぜいいます。
具体的なやり方については、別の記事で紹介しますので、みなさんもぜひ試してみていただきたいと思います。

記事にあるセルフケア情報は安全性に配慮していますが、万が一体調が悪化する場合はすぐに中止して医師にご相談ください。また、効果効能を保証するものではありません。

写真/© カラダネ © Fotolia

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