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ドライアイや疲れ目のセルフ対策に【カツオだし】を。研究では涙の量が増えた
日本人にとって身近な存在のカツオだし。実は、ドライアイや疲れ目に悩まされがちな現代人にぴったりの食材であることを知っていましたか?
梶田眼科院長の梶田雅義先生にくわしいお話を聞きました。
極度の目の疲れやドライアイに悩んでいる人は、眼科で診てもらうことが大切です。そのうえで、カツオだしを利用したセルフケアも参考にしてください。
カツオだしはドライアイや疲れ目を改善する
カツオだしがドライアイを改善することがわかった
パソコンやスマートフォンの利用などによるドライアイの急増が社会問題化している昨今、その改善法について盛んに研究が進められています。
私たちのグループもドライアイについて熱心に研究してきましたが、その結果、日本人にとって大変身近な食品に、ドライアイを改善に導く優れた働きが見つかりました。
それは、カツオだしです。
古くから、みそ汁やお吸い物、麺類のだし汁、煮物や和え物、だし巻き卵など、日本の伝統的な調理法として愛されてきたカツオだし。
そんなカツオだしがドライアイを改善する可能性があると聞いて意外に感じる人も多いでしょう。
江戸時代から滋養強壮の食品として知られてきた
実は、カツオだしの元であるカツオブシは、江戸時代から明治時代にかけて滋養強壮の食品として重宝され、日清・日露戦争のさいにも、保存食として大量に戦地へ送られたといいます。
ちなみに、沖縄には、大量のカツオブシをどんぶりに盛り、そこにお湯をかけて作る「カチューユー」という料理があり、カゼを引いたり疲れがたまったりするとよく飲むのだそうです。
ドライアイや疲れ目を改善する実験結果も
実際に、カツオだしがドライアイや疲れ目の改善に役立つことが、2005年に私たちが食品メーカーと共同で行った試験で確認されています。
【試験方法】
①疲れ目を訴える24名の被験者を2グループに分け、一方には1日に濃縮カツオだし125ミリリットル(みそ汁で約8杯分)を、もう一方には味や量を同じにした液体(偽薬)をそれぞれ28日間とってもらう
②28日後に涙の分泌(ぶんぴつ)量の変化や疲れ目の改善度合いを調べる
涙の分泌量はシルマーテストという手法で調べました。シルマーテストとは、小さな短冊状のろ紙の一端を目尻に挟み、5分間に涙が染み込んだ部分の長さを測るというもので、ドライアイを診断する代表的な検査法です。長さが5ミリ以下であれば、ドライアイと診断されます。
疲れ目の度合いは、ピント調節を担う目の毛様体筋の疲労度を示すHFCという値で測定しました。HFCは、疲れ目がひどくなると高くなります。
これらの方法で目の状態を調べた結果、以下のような結果が出ました。
涙の分泌量も、疲れ目の度合いも、カツオだしをとったグループのほうが改善していることがわかります。
ちなみに、疲れ目の度合いについては自覚症状の変化も調べましたが、カツオだしをとったグループのほうでは、「目の疲れが改善した」と答えた人が多く見られました。
実際に、試験終了後にパソコン作業を行ってもらい、2つのグループの作業能率について調べたところ、カツオだしをとったグループでは目が疲れにくくなり、作業を正確に行えたこともわかりました。
なんでカツオだしがドライアイを改善するの?
カツオだしに豊富に含まれるアミノ酸(たんぱく質の構成成分)やミネラル(無機栄養素)、ビタミン類が総合的に働いて、血液を浄化するとともに、目を含む全身の血流を促すと考えられます。
目の血流がよくなれば、目に酸素や栄養が豊富に送られ、目にたまった老廃物がスムーズに取り除かれるようになるので、ドライアイや疲れ目も改善していくと考えられるのです。
カツオだしのおすすめの摂取方法
カツオだしはスーパーで販売している顆粒タイプでもOK
それでは、カツオだしは具体的にどのようにしてとれば、ドライアイや疲れ目におすすめなのでしょうか。
まず、カツオだしは、必ずしも削りぶしを使って作る必要はありません。だしパックや、スーパーなどで広く市販されている顆粒(かりゅう)タイプのカツオだしを利用しても、ドライアイや疲れ目の改善作用が得られます。
なぜなら、顆粒タイプのだしは、削りぶしから取っただしを特殊な方法で乾燥させたものをベースに作られているからです。むしろ、頼粒タイプのほうがカツオぶしの成分が濃縮されているともいえます。
もちろん、ふつうに削りぶしからだしを取って、それを料理に使ってとってもかまいません。そのさいは、削りぶしを惜しみなくたくさん使い、濃厚なだしを取るようにします(カツオだしの作り方、顆粒だしの利用法については下の図を参照)。
1日にみそ汁3杯分をとれば十分
ドライアイや疲れ目の改善には、カツオだしを一日にどれくらいとればいいのでしょうか。
先ほど紹介した試験では、1日にみそ汁約8杯分のカツオだしをとってもらっていましたが、長期間にわたってとるならこれほどの量は必要なく、1日にみそ汁3杯分もとれば十分です。
この分量なら、朝・昼・晩の食事で1杯ずつ、みそ汁やお吸い物としてとれば無理なく補えるでしょう。
他にもこんな使い道も
顆粒タイプのだしの中に含まれる塩分が気になる人は、みその量を減らしたり、体内の不要な塩分を排出するカリウムが多い豆みそに替えたり、同様にカリウムが豊富なヨモギやホウレンソウ、芽キャベツ、サトイモなどを具に使ったりするのがおすすめです。
また、カツオだしは、みそ汁やお吸い物だけではなく、そばやうどんのだし汁、だし巻き卵、煮物、和え物を作るのにも役立ちます。意外なところでは洋風スープやパスタソースなどの隠し味としても使えます。
顆粒タイプのだしを利用する場合は、応用の範囲がさらに広がります。コツは料理に使う塩を少なめにして、その代わりに顆粒タイプのだしを利用することです。
さまざまな料理にカツオだしを利用して、日々の食生活で積極的に補うよう心がけましょう。早ければ1~2週間ほどで作用が実感できる人もいます。もちろん、全員に必ず変化があるわけではありませんが、試してみる価値は大きいと私は考えていますので、ぜひ実践してみてください。
記事にあるセルフケア情報は安全性に配慮していますが、万が一体調が悪化する場合はすぐに中止して医師にご相談ください。また、効果効能を保証するものではありません。
写真/© カラダネ © Fotolia
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