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【便がカチカチで硬い便秘】は腸の蠕動運動の低下した弛緩性便秘かも(大学名誉教授解説)

解説 日本獣医生命科学大学名誉教授
寺田厚

便がカチカチに硬くなる便秘で悩んでいる人は、腸の蠕動運動(ぜんどううんどう。内容物を先送りする働き)が低下している可能性があります。
その場合、どのような対策を行えばいいのでしょうか。腸内細菌について長年研究を続け、便秘などにもくわしい日本獣医生命科学大学名誉教授の寺田厚先生にお話を聞きました。

便秘で悩んでいる人は、消化器内科や胃腸科で専門医の治療を受けることが大切です。そのうえで、セルフケアの一環として記事にあることを試してみてください。

腸の蠕動運動が低下する弛緩性便秘

便秘というと「何日も便が出ない」といったイメージが強いですが、毎日きちんと排便がある人でも、少量で硬い便しか出ずに不快に思っていれば、慢性的な便秘の1つと考えていいでしょう。
こうした人は、腸の動きが停滞している可能性があります。腸の蠕動運動が著しく低下し、便が腸内で滞って慢性的な便秘になるのです。専門的には「弛緩性便秘(しかんせいべんぴ)」といいます。

腸の蠕動運動とは、大腸の一部が収縮してくびれ、そのくびれが肛門のほうへ向かって移動する動きのこと(ミミズが前に進むような動きをイメージしてください)。これにより、腸の内容物が肛門へ送り出されます。こうした一連の運動がスムーズに行われなくなり、腸が柔軟な動きを失ってしまうと便秘を招くわけです。

加齢による腸の筋肉の衰えと弾力性の低下が重大原因

このタイプの便秘は、慢性的な便秘の中で最も多いとされ、高齢者の便秘の大半を占めているといわれます。
主な原因は、偏った食生活や運動不足などが考えられますが、大きく影響しているのは、加齢による腸の筋肉の衰えと、弾力性の低下だと考えられます。

手足をはじめとする全身の筋肉は、年齢を重ねるとともに弱まり、柔軟性を失っていきます。腸壁の筋肉層や粘膜も萎縮しやすくなり、それに伴って大腸にもともと備わっている弾力性も低下するといわれます。腸の弾力性は20代がピークといわれ、加齢とともに衰えて、60代を過ぎるとピーク時の3割にまで低下してしまうと考えられます。

こうして蠕動運動が弱まると、便が直腸(大腸と肛門をつなぐ部分)に運ばれる速度が低下したり、ほとんど動かないで同じ場所にとどまったりするといいます。これが慢性化した状態が弛緩性便秘です。

水分を摂取することによる改善が困難

このタイプの便秘になると、便が大腸の中に長くとどまった状態になるため、腸内にガスがたまりやすくなって、おなかの膨満感を覚えるようになるといいます。そのため、排便したあともおなかがスッキリせず、残便感を覚えることが多くなると考えられるのです。

また、排便があっても、カチカチで小さな便しか出てこないといいます。これは、便が大腸で停滞している間に、便に含まれる水分が腸壁からどんどん吸収されるからだと考えられます。健康な状態の便は水分を約80%程度含んでいますが、カチカチの便では60%以下しか含んでいないといわれます。

では、たくさん水を飲めば治るかというと、そういうわけではありません。硬い便の人は、水分を多くとっても、腸に吸収されて尿として排出されてしまう可能性が大きいといいます。蠕動運動が起こらなければ、水分は腸に吸収されるばかりで、便は硬くなる一方だと考えられるのです。

乳酸菌や水溶性食物繊維を摂ることがおすすめ

それでは、この頑固な便秘を治すにはどうしたらいいのでしょうか。

蠕動運動を起こさせるには、私は腸を内側からマッサージするのをおすすめします。具体的には、乳酸菌や水溶性食物繊維(水に溶ける性質の食物繊維)の力を借りるといいでしょう。
蠕動運動が低下していると、食べたものが腸内で異常発酵して、劣悪な腸内環境に陥ってしまうと考えられます。この状態を正すために私がおすすめする方法は、乳酸菌や水溶性食物繊維を多くとることです。そうすれば腸内環境が良好になり、腸の硬直が取れて蠕動運動が活発になる可能性があります。便が停滞することもなくなるので、軟らかい便が定期的に出るようになることが期待できます。

具体的にどのような食品で摂取すればいいのか、関連記事で紹介しています。

この記事は、医療や健康についての知識を得るためのもので、特定の見解を無理に推奨したり、物品や成分の効果効能を保証したりするものではありません。

写真/© Fotolia ©カラダネ

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