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日本人は股関節の形が悪く、特に女性は変形性股関節症が多発(整形外科医解説)

解説 ヒロ整形クリニック院長
勝野 浩

・長時間座って立ちあがったときに足のつけ根に違和感がある
・歩いていると股関節がだるい、痛い
・股関節がポキポキなる

そんな症状はありませんか?近年、こういった股関節の不調を訴える人が増えています。
そこで、そもそも股関節とはどんな関節なのか、どうして痛み出すのか整形外科の先生に話を聞きました。

股関節痛は女性に多発。男女合わせると推定400~500万人

朝、起き上がろうとしたら足のつけ根が痛む、長時間歩いたり階段や坂道を上り下りしたりするのがつらいなど、日常生活の質を一気に低下させてしまうのが股関節痛です。

全国で推計400〜500万人が股関節痛に悩んでいるといわれています。特に女性に多く、30〜40代で痛みを訴えはじめる人も少なくありません。

股関節痛を起こす原因には、大腿骨壊死症や関節リウマチなどさまざまな病気がありますが、圧倒的に多いのは変形性股関節症でしょう。

変形性股関節症とは、その名の通り股関節の構造が変形していく病気です。放置すれば悪化の一途をたどり、痛みがだんだん強くなるとともに、歩く、座る、靴下をはく、トイレでしゃがむなどの日常的な動作まで苦痛になります。では、いったいなぜ、このような変形が起こるのでしょう。

股関節には、歩くと体重の3~4.5倍の負担がかかる

そもそも股関節とは、骨盤と大腿骨(太ももの骨)をつなぐ人体で最も大きな関節で、寛骨臼(骨盤のくぼんだ部分)に大腿骨頭(太ももの骨の先端部にある丸い部分)がすっぽりとはまり込んだ構造をしています。
骨盤.jpgこの構造のおかげで、私たちは太ももを前後左右に動かすことができ、立つ、歩く、座るなどのさまざまな動作を行えるのです。

そして、寛骨臼と大腿骨頭が接する部分は、骨どうしが直接ぶつからないでスムーズに動くように、滑らかで弾力性に富んだ関節軟骨で覆われています。
股関節は胴体と足つなぐ重要な関節であり、常に大きな負担がかかっています。例えば、歩くときには体重の3〜4.5倍、走るときには4〜5倍の負担がかかり、階段の昇り降りでは6.2〜8.7倍にも及ぶといいます。

歩く.jpg

股関節を守る軟骨が減ってくる

股関節にこれほど強い負担がかかっても壊れないのは、衝撃から骨を守る関節軟骨があるからです。
関節軟骨は、大きな力や衝撃を受けて傷んでも、軟骨細胞から軟骨を形成する成分が供給され、くり返し修復されるようになっています。

しかし、こうした修復能力は20代から少しずつ衰えはじめ、関節軟骨のクッションとしての役割はしだいに失われていきます。
そこに、股関節を支える筋肉の衰えや肥満などの要因が加わると、関節軟骨は大きな負担に耐えきれず、すり減ってしまいます。そして、軟骨のすり減りが進むと炎症が起こり、足のつけ根やその周辺が痛むようになるのです。

股関節痛に日本人女性がなりやすいのはなぜか

外国人と比べると、日本人は特に変形性股関節症による股関節痛が多いといわれています。これは、先天性股関節脱臼や臼蓋形成不全の人が日本人(特に女性)に多いためと考えられます。

先天性股関節脱臼とは、大腿骨頭とそれを覆う屋根の部分に当たる臼蓋が、生まれつき外れたり、外れかかったりしている状態をいいます。また、臼蓋の部分が小さすぎるなど不完全な場合を、臼蓋形成不全と呼びます。

実は、股関節にこうした問題を抱えている人の多くは女性で、臼蓋形成不全では、男性の約7倍に達するといわれています。さらに変形性股関節症では、女性のほうが男性より約10倍も多いようです。そのため、女性のほうが股関節痛を起こしやすいのです。

さらにやっかいなことに、こうした股関節痛を放置していると、ひざや腰にも悪影響が及びます。実際、70歳で股関節痛がある人のうち、約8割の人に腰痛が、約6割の人にひざ痛が認められるという報告もあります。
このように、股関節は非常に重要な関節であり、いったん衰えてしまうと全身に影響を及ぼしかねない人体の急所なのです。

記事にあるセルフケアは安全性に配慮していますが、万が一体調が悪化する場合はすぐに中止して医師にご相談ください。また、効果効能を保証するものではありません。

写真/©カラダネ

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