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【麹が高栄養の理由】酵素を100種以上含むためで、縄文時代から活用されるほど
白澤卓二
味噌や醤油、みりんといった調味料や日本酒など和食のベースの調味料は麹で作られます。麹が日本の食を形作っているといっても過言ではありません。
このように、麹が多くの調味料を作り出せるのは、麹が持つ酵素に素材のうま味や香りを引き出す力があるから。
白澤抗加齢医学研究所所長の白澤卓二先生に話を聞きました。前回の記事(一番下の関連記事)と合わせて、ご覧ください。
麹は縄文時代にすでに使われていた
麹菌は日本の「国菌」とも呼ばれるほど
麹は、「麹菌」というカビの一種が米や麦、豆について繁殖したもの。味噌や醤油、みりんをはじめ、日本酒や焼酎、甘酒、漬け物など、日本の伝統食の原材料になっていることから、麹菌は日本の「国菌」とも呼ばれています。
麹が日本に伝来したのは、縄文時代末期とされ、稲作が伝わったさいに麹菌も稲に付着して入ってきたと推測されています。以来2000年以上もの間、下の年表にあるように、日本人は麹を用いてさまざまな食品を生み出し、豊かな食文化を育んできました。
麹が日本人に長い間必要とされてきたのは、麹に酵素という物質が多いのが理由の一つです。
酵素は、あらゆる成分を分解し、うま味や栄養を生み出す
麹の注目酵素は2種。アミラーゼとプロテアーゼ
麹菌は酵素を作る力がズバ抜けて高く、麹菌が繁殖した麹は、まさに「酵素の宝庫」です。麹に含まれる酵素で注目すべきは、でんぷんを分解するアミラーゼと、たんぱく質を分解するプロテアーゼという2つの消化酵素。
これらの酵素は、でんぷんやたんぱく質の分子を小さく切り離すので、体内への消化吸収がしやすくなり、食後は胃腸の負担を軽くします。
さらに、アミラーゼとプロテアーゼは、でんぷんをブドウ糖に分解して甘味を生み出したり、たんぱく質をアミノ酸(たんぱく質の構成成分)やペプチド(アミノ酸が数個つながったもの)に変えたりして、うま味と香りを引き出します。
私たちが毎日の食卓で使っている醤油や味噌、酢やみりん、カツオ節などが持つ独特の甘味やうま味、香りは、麹に含まれる酵素の働きでもたらされているのです。
日本酒や甘酒も米麹の酵素によるもの
米麹のアミラーゼが日本酒の芳醇な味わいを生む
日本酒や甘酒の甘味や芳醇な味わいも、麹の酵素がもたらす産物です。
日本酒や甘酒の甘味は、米麹に含まれるアミラーゼが、ご飯のでんぷんを分解してブドウ糖に変化させることで生まれます。とりわけ甘酒には、ブドウ糖が20%も含まれるほか、ビタミン類やアミノ酸も豊富です。
プロテアーゼの働き
プロテアーゼについて解説します。醤油、味噌に特有のうま味や香ばしい風味は、麹のプロテアーゼという酵素によるもの。これによって大豆や小麦に含まれるたんぱく質から、うま味成分であるグルタミン酸やイノシン酸といったアミノ酸が作られます。
このように、麹はもとの食品に含まれる栄養から新たなうま味成分を作り出す働きがあり、その代表的な食品がカツオ節です。カツオ節の製造過程は、最初にカツオを燻製にして成形し、それを日干しして乾燥させたあと、こうじカビの溶液を用いて何度もカビつけを重ねます。それを乾燥させて、ようやくカツオ節が完成。
こうしてこうじカビを繁殖させることで、こうじカビに含まれるプロテアーゼがカツオのたんぱく質を分解し、イノシン酸などアミノ酸由来の独特のうま味成分を作り出します。
かつお節でとった出汁に、脂が浮かないのはなぜか?
カツオ節でもう一つ特徴的なのは、脂の多いカツオが材料であるにもかかわらず、カツオ節で取っただしには脂が全く浮かないこと。これも、こうじに含まれるリパーゼという脂肪分解酵素が、カツオの脂肪をきれいに分解しているからです。
脂の浮かないだしを料理に使っているのは、世界広しといえども日本だけでしょう。それを可能にしているのが、こうじの酵素というわけです。
漬け込んだ食品のうま味をアップさせる
麹の酵素は、ほかの食品と組み合わせることで、さらに優れた相乗効果を発揮します。
例えば、肉や魚、野菜といった食品を、味噌、醤油、酢、みりんといった麹の発酵食品に漬け込むと、素材の味が格段に引き立つのです。
これは麹に含まれる酵素が、漬け込んだ食品の細胞に働きかけて、うま味や甘味、香りを引き出したり、脂肪を分解して油っこさやクセをなくしたり、たんぱく質を分解して軟らかくしたりするからです。
食品の保存性を高める作用も麹の長所の一つ。傷みやすい生ものも、麹食品の味噌や醤油、酢に漬けたり、醤油やみりんを塗って干物にしたりすることで、保存期間を大幅に長期化できます。
そのうえ、保存期間中も酵素の働きで食品のうま味がどんどん蓄積されていくことから、麹は万能調味料といえますが、その優れた特性はまさに酵素の賜物なのです。
記事にあるセルフケアは安全性に配慮していますが、万が一体調が悪化する場合はすぐに中止して医師にご相談ください。また、効果効能を保証するものではありません。
写真/©カラダネ
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