暑さが厳しい時期ですが、みなさんは熱中症予防としてどのような対策をしているでしょうか。

熱中症とは、体温を正常に保とうとする機能が低下して、汗をかけずに、体温が高温になった危険な状態のことです。そうなると、めまい、立ちくらみ、頭痛などの症状を伴い、重症化すると意識障害も起こり、生命の危険を伴う場合もあります。夏場の高温環境下では、体温を下げようとして汗をかきますが、そのとき、水分だけでなく、ミネラル分も失われてしまいます。ですから、水分補給をしていても、実はそれだけでは十分な対策がとれているとはいえません。

ミネラル分の中でも、ナトリウムは血圧の調節機能にかかわるので、水分補給以外にも、ナトリウムの補充は重要です。脱水でナトリウム不足になると、血圧が下がり、酸素供給が滞り、臓器の機能障害などにつながるからです。

特に高齢になると、温度を感じるセンサーも鈍くなるといわれ、室内でも熱中症を発症することがあり、注意が必要です。また、小さなお子さんの場合も、体温コントロールの力が弱いので同様に注意が必要でしょう。

実はごはんのお供として身近な食材の｢塩こんぶ｣は、夏の熱中症対策に非常に有効なことがわかっているので紹介しましょう。

塩こんぶは、千切りや角切りにしたこんぶを塩やしょうゆ、砂糖、みりんなどで調味して作られます。その最大の特徴は、その成分とうま味にあります。

塩こんぶというと、塩分のとりすぎになるのでは、と気にされる方も多いでしょう。塩こんぶには、塩味のナトリウムと塩分の排出を促すカリウムの両方が含まれています。カリウムがナトリウムの吸収を抑える働きをするので、高血圧など塩分が気になる方でも安心していただける食材なのです。これは食物繊維のアルギン酸の働きによるものです。また、汗をかかない状況下でも、カリウムを補えれば、塩分を排出してくれるので、ナトリウムの弊害を防ぐという作用も同時に期待できます。つまり、高血圧の抑制にも作用するのです。

うま味についてですが、こんぶはだしをとるために使われるほど、うま味物質のグルタミン酸が多く、ほかにも核酸のイノシン酸が含まれています。

実は舌の味蕾（みらい）細胞には、レセプター（受容体）があり、グルタミン酸単独で感じるより、グルタミン酸とイノシン酸の２つを同時に感じることで、うま味が何倍にも広がるのです。これをうま味の相乗効果といいます。

うま味は、甘味、塩味、酸味、苦味とともに基本五味といわれ、五感を満足させるうえで大切です。うま味を感じると、塩味をあまり必要としなくなり、減塩にもつながります。さらに、うま味物質は円滑な消化・吸収を促進することに深くかかわっている事実も2006年に発見されました。

そのほか塩こんぶには、腸の善玉菌を増やす水溶性食物繊維のフコイダンやアルギン酸の作用で、便通改善など腸活につながるほか、高血糖を防ぐことがわかっています。

脂肪燃焼にいいといわれる褐色色素のフコキサンチン、代謝を向上させるヨード、骨粗鬆症（こつそしょうしょう）や貧血予防につながるカルシウムや鉄分も豊富なので、夏の食卓に積極的に試してみてはいかがでしょうか。

ただし、甲状腺機能の持病があり、医師から海藻類を控えるよう指示されている方は、控えてください。

次の記事では、塩こんぶの応用レシピ、「塩こんぶ酢」と「塩こんぶコウジ」の作り方を紹介します。いずれも料理の材料として使用するとおいしさが引き立ちますよ。料理のレシピも関連記事で紹介しています。

この記事は、医療や健康についての知識を得るためのもので、特定の見解を無理に推奨したり、物品や成分の効果効能を保証したりするものではありません。

写真/©カラダネ